財政民主主義の確立と納税に値する国家を目指して
―財政構造改革に向けた提言―
補論2.諸外国における財政構造改革への取り組み
財政構造改革の目標及び手法(諸外国との比較)
−まとめ−
- 財政構造改革の目標化
- 諸外国の取り組み
- (米 国)
- 2002年までに連邦政府の財政収支を均衡
- (英 国)
- 中期的に財政収支を均衡。一般政府歳出をGDP比率で40%以下に抑制
- (ドイツ)
- 一般政府規模のGDP比率を東西統一前の水準に抑制、財政赤字対GDP比率を1%以下に引き下げ、租税負担対GDP比率を23.5%まで低下
- (フランス)
- 一般政府の財政赤字の対GDP比を95年度5%、96年度4%、97年度3%以内に抑制。国の財政赤字の対GDP比率を97年度までに3%以内に抑制
- (カナダ)
- 連邦政府の財政赤字の対GDP比率を96年度3%、97年度2%、98年度1%以内に抑制
- 日本
- (第三次行革審)
- 国民負担の水準は高齢化のピーク(2020年頃)において50%以下、21世紀初頭の時点において40%台半ばをめどに上昇を抑制。
- (産構審)
- 財政の収支差のみに着目するのではなく、財政の規模自体にも関心を払っていくべき。また、建設国債、赤字国債の区別にとらわれずに一般政府の債務全体の動向に注目すべき。赤字国債の削減を優先させる場合、対象を中央政府に限定するなどの問題がある点に留意する必要。
- (経済審−財政・社会保障WG)
- 現行の制度では94年度に35.8%だった国民負担率は2025年に51.5%になるが、改革を断行した場合、負担率は48%台に止まる。但し、国民負担率には財政赤字が考慮されていない。
- (今後の経済政策のあり方に関する研究会)
- 対GDP比率での赤字を発散させないために、まずは歳入と利払費を除く歳出との格差を均衡させる。
- 目標達成のための手法
- 予算編成のあり方
- シーリング
- 中期計画
- 諸外国の取り組み
- (米 国)
- 裁量的経費には総額の上限(CAP)を設定するとともに、義務的経費にはpay-as-you-go原則を設定を適用。
1997年度大統領予算教書において2002年の連邦政府の財政収支を均衡することとしている。
- (英 国)
- 公的支出計画が実質的に公的支出の総額の上限となっており、シーリングの役割を果たす。
一般政府支出の限度額(コントロールトータル)を閣議決定した後、公的支出計画を策定。
- (ドイツ)
- 概算要求の基準として予算回章を各省に提示。
5ヶ年財政計画(ローリング方式により毎年改定)を作成。議会の議決を要せず、予算を拘束するものではない。
- (フランス)
- 予算編成方針に関する総理指示を各省に提示。
財政5ヶ年計画法により国の歳出の伸び率を物価上昇率以下に抑制している。
- (カナダ)
- 96年度中に対GDP比率3%以下(連邦政府)に抑制することを目指した3ヶ年の財政計画を策定。
- 日本
-
各省庁は閣議了解の形で設けられた概算要求基準の範囲内で概算要求を行う。
毎年、政府予算が衆議院に提出される際に、大蔵大臣は財政演説を行っているが、このときに併せて「財政の中期展望」を示している。但し、これは現状を延長した場合の見通しに過ぎず、将来の予算編成を拘束するものではない。
- 行政改革、民営化
- 諸外国の取り組み
- (米 国)
- 過去2年間で連邦公務員を20万人(10%)削減している。
- (英 国)
- 民営化を推進。社会保障手当ての給付等を独立機関化し、民営部門と公的部門との間で入札を行わせている。
- (ドイツ)
- 連邦公務員数の定員削減と給与抑制に踏み切った。ルフトハンザ・ドイツ航空、郵政事業の民営化。
- (フランス)
- 連邦政府職員の大幅削減と公務員の賃上げを凍結。一部の業務について民間とのコスト比較を行い、民営化を検討。
- (カナダ)
- 国有鉄道等の民営化。連邦公務員の削減。連邦政府の再定義により、食品検査や公園管理等エージェンシーを設立。
- (ニュージーランド)
- 国有企業の民営化や省庁の統廃合等により中央省庁の公務員数を大幅に削減。新規算入に係る規制等の規制緩和による競争原理の導入。各省次官への責任と権限を委譲。雇用契約法の制定による労働市場の自由化。
- 日本
- 規制緩和推進計画の前倒し実施
- 国家公務員定員抑制
- 地方分権の推進
- 特殊法人の整理合理化、定員抑制
- 歳入の見直し
- 諸外国の取り組み
- (米 国)
- 1990年に所得税の最高税率の引上げ等の増税策(5年間で1,500億ドル)、1993年に高額所得者に対する最高税率引上げ、公的年金給付の一部の所得算入、法人税の引上げ等の増税策(5年間で2,410億ドル)
- (英 国)
- 個別間接税(炭素水素油税、自動車税等)の引上げ、所得税の増税等により、GDPの1.5%〜2%程度の税収増。
- (ドイツ)
- これまでの増税路線の変更を目指し、1996年1月に打ち出したアクションプログラムの中で、国際競争力の低下に歯止めをかけるため、連帯付加税の税率引き下げや営業税などの地方税の減税などを行うことを盛り込んだ。
- (フランス)
- 付加価値税の増税、法人付加税の導入等の増税や国営企業の民営化による増収を図った。97年度はサラリーマン向けに約250億フランの所得税減税やフランステレコムの民営化などを行うこととしている。
- (カナダ)
- 「大幅な歳出カットとわずかな増税」という基本方針のもとで、法人税、ガソリン税等の増税を行った。
- (ニュージーランド)
- 個人所得税と法人税率を減税する一方で、物品・サービス税を導入(当初税率10%、現在12.5%)。財政黒字化に伴い本年より中間所得層を中心とする減税を実施する予定。
- 日本
- 平成6年11月の税制改革のポイント
- 所得税・個人住民税の負担軽減(平成7年から)
- 消費税の改革(平成9年4月から)
- 地方消費税の創設
- ディスクロージャー、決算及びチェック
- 諸外国の取り組み
- (ニュージーランド)
- 財政の透明性を強化するため、民間企業と同様の発生主義会計を採用。
- 財政改革法の制定
- 諸外国の取り組み
- (米 国)
- 包括財政調整法の制定
- (フランス)
- 財政5ヶ年計画法
- (ニュージーランド)
- 財政責任法の制定(政府に発生主義会計義務づけ)。
- 国・地方の関係
- 諸外国の取り組み
- (米 国)
- 連邦が州の財政を調整するレベニュー・シェアリングを既に廃止。
- (英 国)
- 地方の権限を制限する方向の中で歳出抑制。地方の公共サービス(ごみ収集等)について強制的に民間会社との間で入札を行わせ、落札出来なければ、その部署は原則廃止。
- (ドイツ)
- 州・市町村に対して、連邦と同様の緊縮財政を呼びかけ(250億マルク、半額)
- (フランス)
- 地方分権を進める方向の中で歳出抑制。地方政府の赤字の規模は小さい。
- (カナダ)
- 地方への交付金の削減
- 日本
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