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新産業・新事業委員会企画部会報告書

「日本型コーポレート・ベンチャーを目指して」

第1部 新事業開発に関する各社の取り組み事例

NEC


  1. 基本方針
  2. 時代の変化を鋭敏に先取りし、大企業病からの体質改善を目指し、新事業の創出と起業家の育成を重点的に推進している。
    1. テクノロジーを基盤とする企業として、先進市場でのコア・テクノロジーの育成と新事業機会の探索を図る。
    2. 事業運営の基本は事業本部制であり、既存事業領域での事業拡大、新事業育成は、各事業ラインで担当する。事業領域の拡大、全社横断的な事業領域での新事業育成はコーポレートの責任とし、責任の分担化を図る。
    3. 新事業発掘、育成に向けて経営資源の重点配分及びマネジメントの対応を強化する。

  3. 新規事業創出に向けた施策
    1. インキュベート組織・機能の強化
    2. 全社的に、「特別プロジェクトグループ」体制により、当社のコアとなる事業の立ち上げ段階を集中的にインキュベートする仕組みを設け、その機能の強化をを図っている。

    3. マルチメディア事業の推進
    4. マルチメディア領域における戦略的事業展開を促進するために、国内にC&Cマルチメディア事業推進本部、海外に北米マルチメディア推進室等を設置し、外部との戦略的提携、投資も積極的に推進する。

    5. コーポレート・ベンチャー活動
    6. アメリカ西海岸のシリコンバレーでの新しい動きを積極的に取り込んでいる。北米では、現地法人への投資権限の委譲、人材のスカウト、ベンチャーキャピタルファンドへの参画により、現地の最新の情報を入手し、アライアンス機会の探索、ベンチャー起業ノウハウの取得等を推進している。国内では、ベンチャー推進プログラムを導入し、本業の周辺にあり、将来的に事業の拡大が期待されるニッチ市場での新事業開拓を推進している。

  4. ベンチャー推進プログラム
    1. 導入の背景と目的
    2. 大きく2つの流れがある。第1は、86年から展開した、社員による商品アイデア提案活動「新チャンピオン商品運動」である。第2は、全社経営革新運動「NECスーパー21」で目指した、個性あふれる主体的活動を通じた「ホロニックコーポレーション」の実現に向けた流れである。
      その施策の一つとして、新事業を創出する仕掛けづくりに関して、92年に「起業家募集」を導入し、その後内容の拡充を図り、95年度より「ベンチャー推進プログラム」へ移行した。組織風土の活性化、起業家精神の醸成を目的とする中で、新事業分野の開拓、起業家人材の発掘・育成を重点施策として取り組んでいる。

    3. ベンチャー企業の位置づけ
    4. NECは、ベンチャーキャピタル的視点から事業のインキュベート・サポートを行うが、将来は一本立ちをすることを前提とする。設立時には本人の出資を認め、株式上場を実現し、創業者利益のフィードバックを促進する。インセンティブについては、税制の改正等をふまえて最適な方法を検討している。

    5. 新事業推進上の要点
      1. 「ベンチャー推進委員会」による意思決定機関の設置(役員からなるデシジョンボードを設置し、意思決定の集中化、迅速化を図る)
      2. 戦略的資金投入(フィージビリティスタディでの効果的資金活用、および事業成長期・拡大期への集中投入を図る)
      3. 起業家精神を持つ人材の投入
      4. 自主独立経営の促進(ベンチャー企業に適した評価尺度の適用、及びプロフィットシェアに基づくインセンティブ付与)

<事例>

  1. オーセンティック(93年設立)
    事業内容は、高級HiFiオーディオ等の音響機器の開発・販売および音響機器・情報機器等に関するシステム・コンサルティングである。天然花崗岩を採用し、無共振を実現した高級HiFiスピーカAuthentic3001(定価120万円)により創業を図る。その後アンプ、PCM―CSチューナー等のシリーズ化を展開し、オーディオ市場にAuthenticブランドを浸透させる。その後、音を切り口に事業を拡大し、PCに搭載する超小型・高音質スピーカ、外付けスピーカの開発、半導体を活用した音声ガイドシステムの開発等を推進中である。

  2. カイノア・テクノロジーズ(95年設立)
    事業内容は、コンピュータグラフィック技術を応用したシステム開発・販売等のシステムインテグレーション、パッケージソフトウェアの開発・販売である。これまでCG技術の活用されなかった流通、サービス分野において、眼鏡デザインシステム、カーセレクションシステム等を開発する。これらSI事業によって蓄積した技術から、パッケージソフトウェアの自主開発へ事業の拡大を検討中である。

  3. リッチピクチャーズ(96年設立)
    事業内容は、個人に対する自己開発ツールの開発、コンサルティング及びインターネット上での情報発信に至るトータルサービスの提供、企業・団体に対する人材情報検索サービスの提供である。事業立ち上げ段階であり、個人に対するツールの開発、個人・企業会員の獲得を展開中である。「個の自立」支援を事業のコアにすえ、新しい人材価値の創造を目指す。まず、インターネット上に「info.CAN.press」をオープンする。


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