連結財務諸表制度の見直しに関する公開草案に対する意見

1997年3月18日
経団連経理懇談会


企業における連結経営の定着や金融システム改革の実現に向けた我が国証券市場の国際化への基盤整備といった観点から、証券取引法開示制度において連結情報を中心とするディスクロージャーへの転換が急務となっている。

当会では既に「連結財務諸表のあり方に関する基本的考え方」(1996年5月14日)を公表し、連結情報を中心とすることを柱とした提言を行ない、これらは概ね企業会計審議会から公表された「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書案(公開草案)」に盛り込まれているところであるが、個別情報の簡素化、国際的整合性、企業の実務対応等の観点からみれば、なお問題点が残されており、あらためて意見を述べることとしたい。

  1. 個別情報の簡素化
  2. これまで、連結・個別両面における開示内容の充実が図られてきた結果、我が国の証券取引法開示は、企業に極めて大きな負担を強いるものとなっており、今後のディスクロージャーの充実は効率性を重視して臨むべきである。我が国の証券取引法上の開示制度は、今や連結情報を中心とする方向に大きく転換することから、個別情報については、将来的には商法の計算書類のみとする方向での抜本的な簡素化を図るべきである。

  3. 国際的整合性
  4. 我が国の連結財務諸表制度を将来にわたり国際的に通用するものとするためには、米国基準などの国際的な動向を踏まえる必要がある。連結の範囲や資本連結における会計処理基準など、連結財務諸表作成に係る特有の事項については、現在、米国において検討されている基準等に対応できるよう弾力的な取扱いが必要である。

  5. 実施時期への配慮
  6. 連結情報を中心とするディスクロージャーへの転換は、親会社のみならず全ての連結子会社に影響を与えるものであり、実施時期に関する十分な配慮が必要である。円滑な実施を行なうためには、会計処理等に関する具体的な実務指針の整備期間とその後における企業のシステム対応等の期間を十分確保する必要がある。

  7. 税効果会計の適用
  8. 商法計算規定との関係から個別財務諸表に適用できない税効果会計を連結上のみ強制することは、連結情報と個別情報との比較といった観点からも投資家の誤解を招く惧れがある。従って、個別財務諸表における税効果会計の適用に関し、商法改正に向けた検討を急ぐべきである。

  9. 中間連結財務諸表
  10. 中間連結財務諸表の作成基準の検討に当たっては、中間決算を行なっていない海外連結子会社への影響等を踏まえ、簡略な決算手続ならびに監査手続きおよび簡易な中間連結財務諸表の様式に関する検討が必要である。

  11. その他
    1. 自己株式等の取扱いに関しては、自己株式取得・保有規制の緩和の動向を踏まえた検討が必要である。
    2. 今回の連結財務諸表原則の見直しによる連結財務諸表に与える影響額注記は、算定に極めて膨大な作業、コストを要することから、原則として求めないこととすべきである。
    3. 今後、連結情報がマスコミ、取引所等の関係者により前向きに受け止められ、名実ともに連結中心のディスクロージャーが定着するよう環境整備を望みたい。

以 上


日本語のホームページへ