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政府開発援助(ODA)の改革に関するわれわれの考え

1997年4月15日
(社)経済団体連合会


  1. 内外情勢の変化と政府開発援助(ODA)
  2.  21世紀を間近に控え、日本は、価値観の多様化、高齢化社会の進展、財政赤字の深刻化といった国内状況の変化に直面しており、政治・経済・行政・社会システム全般の改革が求められている。国際的にはボーダレス経済の下での大競争時代の到来と新たな国際的な緊張、地域紛争および難民問題、更には環境、貧困、食糧、エネルギー等の地球規模の問題などに対して、わが国の積極的な参画、協力を求める国際社会の声が高まりつつある。
     これに応え、日本は既に経済協力、平和のための協力(PKO派遣)あるいは国際文化交流等を通じて、非軍事的な国際協力を行ってきた。その中において経済協力は、近年、その規模も拡大し、就中ODAについては、過ぐる5年の間トップドナーの地位を保つなど、わが国の国際協力を進める重要な手段のひとつとなっている。また、受入れ国の経済発展、国民の生活向上に大きく貢献してきており、関係各国からも評価をうけている。
     資源小国、貿易立国であり国際社会にその存立を大きく依存するわが国にとって、経済協力を通じて世界経済の安定的成長の維持、およびエネルギー等の安定確保を図ることは最重要の課題であり、わが国が関係する地域・国の平和と安定および経済発展に貢献することは、国民的利益すなわち国民の生活・生命の安全の確保およびわが国産業・経済の一層の発展につながる。従って、引き続きこの最重要の課題の達成のために、貿易・投資など民間企業の活動とともに、ODAが大きな力を発揮することが必要である。
     然るに現在のODAの推進体制は、関係省庁が複雑多岐にわたり、その中での縦割りの弊害が著しく、変化に柔軟に対応できていない。また財政構造改革の流れの中で、ODA予算ももはや聖域として扱われることは困難となりつつある。
     こうした内外の急激な情勢の変化に対応し、ODAを通じて国際社会からの期待に応えつつ、わが国の国民的利益を追求していくためには、ODAのあり方を再度問い直し、抜本的な改革に取り組むことが求められている。

     かかる認識に基づき、われわれは次の4点をODAの改革の基本的方向とし、これを踏まえて具体的に提言を行うものである。

  3. 抜本的改革の基本的方向
    1. ODAの位置付けと政策、執行それぞれの一元化による責任体制の明確化
    2. 国際協力は外交戦略および対外経済政策に基づいて総合的に展開すべきであり、その中でODAを最重要かつ有効な手段として明確に位置づけるとともに、政策、執行の一元化をそれぞれ図り、責任体制を明確にすべきである。

    3. 政府と民間の役割分担、民間の参加拡大
    4. これまで援助は政府の役割という考え方が一般的であったが、途上国のニーズの多様化に伴ってわが国民間のノウハウや経験が大いに活用される範囲が拡大しつつある。国内的にも、規制緩和・民営化等により、民間の果たす役割が増大しており、援助においても新たな官民の役割分担を考えるべきである。

    5. 広範な国民参加による援助の実施
    6. 途上国の開発を支援することは、国民の日常生活に密接に関係していることをわが国国民の一人一人が明確に認識し、そのあり方について身近な問題として真剣に考えていく必要がある。今日、国民の間ではNGOやボランティア活動への参加意識が高まっているが、こうした動きも捉え、より広範な国民の参加による援助を促進すべきである。

    7. 次期中期目標の量的設定の廃止と効果的援助の推進
    8. 財政構造改革の中にあってもODAの重要性は変わるものではないが、一旦、金額目標が設定されると、その達成が最優先されてしまう傾向がある。従って、現在、政府が検討中の次期中期目標については金額目標は設定するべきではない。むしろ、援助の効率化と質の向上を企図した具体的施策をわが国として明示し、相手国に評価される効果的な援助を推進すべきである。


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