財投改革の基本方針

1997年5月20日
(社)経済団体連合会


  1. 財政投融資制度に関する問題認識
  2. 戦後のキャッチアップ過程においては、十分な産業・生活基盤整備を行ううえで、財政投融資が果たした役割は大きかった。
    しかし今日では、キャッチアップはほぼ終了し、民間部門の資金不足も解消されてきたため、従来のような意味での財投の意義は薄れた。それにもかかわらず、「入口」の郵貯・簡保が、国家信用や税の免除などの恩典を背景に、依然として大量の資金を集め、民間金融機関を圧迫している。また、財投規模が拡大し、市場を通さない形での資金配分が増えたこと自体が、金融システムに歪みを生じさせている。さらに、豊富な財投原資の存在が、結果的に、必要性の低下した分野への資金供給を温存させるとともに、いわゆる「財政の肩代わり」をも招いている。
    こうした財投自体の制度的欠陥が顕在化したことに加えて、六大改革を一体的に進める観点からも、財投改革のタイムリミットは目前に迫っている。
    改革にあたっては、財投の現状を批判するにとどまらず、財投に代わって民間が果たすべき役割・機能について、具体的に提示していく必要があり、われわれ経済界を含め、民間側にも相応の責任が求められる。

  3. 改革の基本方針
    1. 財投の「入口」「中間」「出口」の分断
    2. 前述の通り、財投の「入口」「中間」「出口」が一体である必然性はもはや失われており、これらのつながりを断ち切る必要がある。
      「入口」部分については、郵貯資金や年金資金の資金運用部への預託を廃止し、簡保資金の財投協力をやめ、それぞれ自主運用させるべきである。
      郵便貯金・簡易保険を財投制度から独立させる以上は、もはや政府の国営事業である必要はなく、例えば商法上の株式会社である特殊会社に経営形態を変更し、民間金融機関とイコール・フッティングのもとで経営させることが望ましい。その際は、納税、預金保険制度への加入などを義務づけるとともに、監督体制についても、金融行政改革全体の一環として、適切なあり方を検討すべきである。なお、これと併せて、郵便事業との関連、山間僻地を含めたユニバーサル・サービス提供の問題についても、別途検討する必要がある。
      「出口」、すなわち個別の財投機関についても、原則として自ら資金調達させる必要がある(財投機関債の発行など)。こうした「市場の洗礼」を受けた結果、何ら支障なくやって行ける機関は、当然民営化すべきである。また何らかの公的支援無しには立ち行かない場合についても、一般会計がみるべき分野、税制、あるいは利子補給や債務保証といった「質的補完」で対応可能な分野、そもそも廃止すべき分野などを切り分けたうえで、真に財投が行うべき業務を吟味する必要がある。その前提条件として、全体的として極めて不十分な財投機関のディスクロージャーを見直し、その徹底を図らなければならない。特に、民間企業と同様の統一的会計基準の導入による、財務内容のディスクロージャーが不可欠である。
      こうした「入口」、「出口」の改革を進めれば、財投の規模は大幅にスリム化し、それにあわせて「中間」にある資金運用部の役割も縮小されることになる。当面、資金運用部は、ロットが小さく自己資金調達が困難な分野について、個々の財投機関に代わって必要な資金調達を行うなどの役割を果たす必要があるが、最終的なあり方については、何らかの組織改革が必要かどうかを含めて、さらに検討しなければならない。

    3. 改革の推進体制
    4. 財投改革の立案・実施については、政府が責任を持ち、金融ビッグバンと軌を一にする観点からも、2000年末を最終期限とする「財投改革推進3ヶ年計画」を策定する必要がある。具体的な立案作業は、行政改革会議において行うことが適当と考える。
      政府による改革の実施状況を監視するための機関としては、民間人からなる「財投改革監視委員会(仮称)」を時限的に設置すべきである。同委員会では、政府の財投改革推進計画を監視するとともに、監視結果に基づき、総理大臣に対して必要に応じて勧告を行うことができるようになる。委員会の設立期限は、政府の財投改革推進計画とあわせ、2000年末までの3ヶ年とすることが適当である。

以 上


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