[ 目次 | 概要 (PDF) | はじめに | 第I章 | 第II章 | 第III章 | 第IV章 | 第V章 | おわりに ]

農業基本法の見直しに関する提言

第IV章
離島・中山間地対策としての財政負担型所得政策


  1. 既に「II. 4. 離島・中山間地対策」で指摘した通り、離島や中山間地などにおいて、産業としての農業の自立が明らかに難しいことが予想されるものの、地域政策や環境政策、社会政策といった観点から、農業生産を維持することが他の方法と比べて最も効率的・効果的な地域とされた場合には、財政負担型の所得政策の導入を検討すべきである。
    財政負担型の所得政策の導入にあたっては、離島・中山間地という形で一括りにせず、まず、農業適地や規模拡大の可能性を探ることが先決であり、また、地域経済の安定や環境保全などの政策目的の遂行が、コストも考慮しつつどの程度必要かについても、地域毎に木目細かく検討を行う必要がある。

  2. 財政負担型の所得政策は、地域経済の安定や水資源の涵養、環境保全といった目的を明確化、限定化し、それらの目的の遂行に対して財政給付を行う制度とすることが考えられる。財政給付を行うにあたっては、設定された政策目的に応じた地域限定や所得制限を付すとともに、目的に対する義務が的確に遂行されているかどうかについて、チェックを行うことが必要である。

  3. 給付制度の検討にあたっては、財源をいかに確保するかという問題がある。これについては、97年度予算で3.6兆円(当初予算)にのぼる農林水産予算全般を見直し、価格支持制度の見直しや関連公共事業等の効率化・重点化を図るとともに、給付目的の限定ならびに目的に応じた地域限定・所得制限を付すなど、給付制度の適用対象の限定化によって対応が可能と考えられる。
    ガット・ウルグアイ・ラウンド合意を踏まえ、EUや米国では、既に所得政策の導入が行われていることも考慮し、わが国の実態に応じた所得政策のあり方を早急に検討する必要がある。


日本語のホームページへ