交通機関を対象とした新税等の導入に反対する

−旧国鉄長期債務の処理に関連して−

1997年11月10日
(社)経済団体連合会


  1. 国鉄改革は1987年、第二臨調の答申を踏まえた行政改革の目玉として分割民営化が実行され、毎年の膨大な赤字によって国民負担の累増を招くという事態にひとまず歯止めをかけることができた。しかしながら、残された旧国鉄長期債務は多額の利払い費等のために却って増大し、現在、その処理がわが国財政上、極めて大きな国民的課題となっている。この長期債務については、国鉄改革時、JR各社と国との責任分担が明確になされており、国の責任とされた債務については、あくまでも国の債務と捉えるべきである。

  2. 従って、まず国鉄改革時の合意に基づき旧国鉄用地等資産処分を進め、長期債務を少しでも圧縮するよう全力を尽くすべきである。その上で、なお残る債務については、国の歳出の徹底した見直し、削減を基本に、一般財源で処理せざるを得ないと考える。その処理にあたっては、政府保有株式を含め広く国有財産の積極的な売却も検討すべきである。
    併せて、金利負担の増嵩が債務の累積に拍車をかけており、財投資金の借り換えのルールを明定する必要がある。

  3. 現在、政府・与党の財政構造改革会議企画委員会において、長期債務の処理財源として、総合交通利用税など交通機関を対象とした新税の創設等が選択肢として議論されているが、この債務の性格上、特定の産業・企業への負担の転嫁や税(自動車重量税を含む)の転用により処理することは妥当でない。
    交通機関を対象とした新税等の導入は、輸送事業者のみならず利用者も含め国民経済全体に多大な影響を及ぼし、わが国経済にとって至上命題である物流コスト低減をはじめとした高コスト構造是正に逆行することになり、経済界としては新税等の導入に絶対反対である。
    国鉄改革の仕上げが「増税なき財政再建」という第二臨調の改革方針に背馳するやり方で決着をつけることは許されないと考える。

以 上

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