阪神・淡路地域の復興と災害に備えた国土づくりを目指して

─ 阪神・淡路復興シンポジウム・アピール ─

1998年1月23日

社団法人 経済団体連合会
神 戸 商 工 会 議 所
社団法人 関西経済連合会



死者6,430名、被害総額約9兆9,268億円という甚大な被害を出した、阪神・淡路大震災の発生から3年が経過した。被災地では、地震直後から行政・民間が協力して懸命な復旧作業が続けられ、道路、港湾、鉄道をはじめとする主要インフラは予想以上のテンポで回復した。しかし一方で、神戸港の貨物取扱量が7割程度に留まり、地場産業も低迷するなど産業復興も道半ばである。また、今なお2万数千世帯が仮設住宅での生活を余儀なくされ、数多くの被災者が震災前の住みなれた街に戻れないままとなっている。
阪神・淡路大震災は、戦後のわが国経済社会が直面した未曾有の大都市災害であり、震災復興は被災地にとって喫緊の課題であるとともに、300万人を擁する大都市の再生を図るという国民的挑戦と位置づけられよう。

このような認識に立って、被災地の復興と今後の災害対策のあり方などを討議するため、本日、阪神・淡路復興シンポジウムを開催した。この中での討議を通じ、下記の点について参加者のコンセンサスが得られた。

  1. 産業の復興は、震災による被害とわが国経済の深刻な状況という二重の困難に直面しており、復興の進み方も企業の規模別・業種別に異なってきている。復興に遅れの見られる分野への支援とともに、転換する産業構造に対応した重点的施策を講じるべきである。生活の復興も、魅力ある都市づくりへの再生を図るなかで早急に進めるべきである。
  2. 震災の記憶が風化していくなかで、戦後稀に見る大都市直下型地震であった阪神・淡路大震災は、今なお、われわれが汲みとるべき多くの教訓を残している。地震の多いわが国では、被災者の生活復興策、防災および災害に対する危機管理などの課題について改めて全国民的な関心を高める必要がある。
経済界としては、産業および都市の復興に最大限の支援・協力を行っていくとともに、震災の教訓を生かした防災対策の構築等についても本シンポジウムの開催を契機に積極的に取り組んでいく決意である。
行政においても、今後とも思い切った施策の実施と支援を継続するよう、下記の諸点について要望したい。

  1. 阪神・淡路地域における産業復興の促進
    1. 新産業創造・企業誘致施策の重点的展開
      将来、成長が見込まれる新たな産業・事業の創造・創出を促進するための拠点整備・支援事業を一層強力に進めるとともに、内外からの企業誘致を進めるための魅力ある環境を整備する。

    2. 中小企業・商店街などの活性化支援
      再建支援・人材育成および新たな事業展開などを具体的に支援するとともに、中心市街地活性化事業などまちづくりと適切に連携した施策を実施する。

    3. 集客・観光関連産業の復興支援
      今春の明石海峡大橋開通を契機にして、阪神・淡路地域の魅力を名所づくりなどでPRするとともに、新たな観光資源の開発・集客施設の整備を支援する。

    4. 復興プロジェクトの推進
      国および地方自治体、経済界は一体となって、被災地の産業復興の牽引力として期待されるさまざまな復興プロジェクトを強力に推進する。

  2. 震災の教訓を生かした全国的な施策への取り組み
    1. 広域的な連携による緊急支援体制の確立
      既存の行政区域を超え連携し、応急対策を円滑に実施し得る専門的能力を平時より準備するため、広域で緊急支援を行う体制を行政・産業界などが協力して地域ブロック単位で確立する。また、災害ボランティアの活動を支える仕組みについても、国民的な議論を通して早期に整備する。

    2. 地域性を考慮した多様な防災都市づくりの推進
      災害対策に配慮した国土・都市政策を推進するとともに、都市計画に関わる規制緩和の成果を生かした街づくりを進め、職住混在した活気あふれる街並みへの配慮など、各地の実状に適切に対応した地域主体の多様な都市づくりを進める。

    3. 地震災害からの文化財保護施策の整備
      わが国の国民的な財産であり、世界的にも守るべき文化財を地震災害から守るため、全国的な文化財保護施策を整備する。

以 上


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