WTOの更なる強化を望む

〜国際ルールに則った多角的貿易体制の一層の推進に向けて〜

1998年3月17日
(社)経済団体連合会


目  次
  1. 基本的考え
  2. WTO体制の強化の方策
    1. 加盟国によるWTO協定の遵守の確保
      1. 地域貿易協定とWTO協定との整合性の確保]
      2. アンチダンピング措置に対する規律強化
      3. 政府調達協定の締約国の拡大と適用除外の削減
      4. 知的財産保護の強化
      5. 原産地規則の調和作業の推進
      6. 途上国の国内産業保護を目的とした政策・措置への対応
    2. WTOの機能強化
      1. 紛争解決手続の更なる強化
      2. 加盟国に対する監視体制の強化
    3. 中国等の早期加盟の必要性
    4. 新たな課題への取り組みの強化
      1. 貿易と環境問題への精力的取り組み
      2. 投資の自由化に向けた交渉の開始
      3. 貿易と競争問題への取り組み
    5. 更なる貿易自由化の推進
    6. WTOと民間企業の関係強化
  3. 終りに〜日本政府への期待〜

  1. 基本的考え
    1. 1948年1月のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)の発効以来50年を経過した。この間、

      1. 加盟国数の飛躍的拡大、
      2. 数次のラウンド交渉を通じた貿易の自由化、
      3. モノの自由化からサービス、知的所有権などへの対象領域の拡大、
      4. 力ではなく国際的に合意されたルールに基づく紛争解決の実現、
      等、GATT・WTO体制は、自由で多角的な貿易体制の構築を通じ、戦後の世界経済の健全な発展や平和の構築に大きく貢献してきた。
      21世紀に向け、引き続き二国間至上主義や保護主義を排し、フリー、フェア、グローバルという基本理念の下、国際ルールに則った多角的貿易体制の更なる推進が求められる。その担い手としてWTOが中心的役割を果たしていくことを我々産業界は強く期待し、これに向けたWTOの機能、体制、組織の強化を強く支持する。
      また、WTOが、一部の加盟国の政治的影響力や利害関係によりその基本理念や中立性を歪められることなく、真に公正で透明な国際貿易秩序の構築に邁進していくことを強く望む。

    2. 他方、GATTからWTO体制に移行してから3年が経過したが、一部の加盟国において依然としてWTO協定あるいは理念に反すると思われる保護主義的貿易措置がみられるのは残念である。
      例えば、わが国企業は、国際的な事業活動を行っていくうえで、

      1. アンチ・ダンピング措置の濫用や原産地規則の不透明な運用、
      2. 地域貿易協定による域外国企業への差別的な扱い、
      3. 国際ルールに基づかない一方的措置の利用、
      4. 途上国の頻繁な政策変更、
      などの問題に直面している。
      これを放置すればWTOに対する信頼は失墜し、多角的貿易体制の根幹を揺るがしかねない。加盟国はUR(ウルグアイ・ラウンド)合意などの各合意を確実に実施し、また、WTO協定を誠実に遵守すべきである。

    3. 他方、加盟国による協定や各合意の遵守を確実なものとするため、WTOの紛争処理及び監視体制の一層の強化が求められる。併せて、新アンチ・ダンピング協定や原産地規則協定などについては、加盟国による保護主義的な適用を防止するため、一層の明確化、規律の強化が必要である。更に、中国等の非加盟国の貿易制度を国際ルールに整合的なものにするため、WTOへの早期加盟を促進すべきである。
      こうした努力に加え、急速なグローバル化が進展するなか、WTOは環境、投資、競争政策といった新たな課題に対する国際的合意の形成に向け積極的に取組むとともに、モノやサービスに関わる貿易の更なる自由化に向けた動きを加速する必要がある。

  2. WTO体制の強化の方策
    1. 加盟国によるWTO協定の遵守の確保
      1. 地域貿易協定とWTO協定との整合性の確保
        WTOは無差別を原則としており、地域貿易協定による例外扱いは、本来限定的にのみ認められるべきであると考える。しかし、1990年代に入り地域貿易協定が更に急速な広がりを見せており、特に欧米の動きは差別的特恵地域の拡大競争の様相すら帯びている。こうした動きが行き過ぎ、多角的貿易体制の崩壊や後退に繋がることのないよう、WTOが防波堤としての役割を果たすことを期待する。
        地域貿易協定はあくまでもWTOと整合的・相互補完的でなければならない。しかし、EU、NAFTA等の地域貿易協定においては、現地調達率の引き上げ、原産地規則の恣意的な運用、新規加盟国の関税の引き上げなどにより、域外に対する新たな障壁が生じ、非加盟国の企業活動が阻害される事例が見られる。地域貿易協定に対し、GATT第24条(及びGATS第5条)の厳格な遵守を求める。
        地域貿易協定に関するGATT第24条(及びGATS第5条)の解釈の明確化および審査体制の強化が早急に図られるべきである。また、協定の発効時だけでなく、発効後も定期的に監視が行われることが望ましい。例えば、WTOが主要な地域貿易協定に対する調査を定期的に実施し、問題がある場合は当該地域貿易協定に関して改善に向けた勧告を行うことが必要である。

      2. アンチ・ダンピング措置に対する規律強化
        新アンチ・ダンピング(AD)協定により、透明性、予見性、公正性の面で規律が強化されたにもかかわらず、保護主義的なAD措置の発動の例が依然としてみられる。例えば、

        1. 国内価格と輸出価格の比較が公正に行われていない事例がある、
        2. サンセット条項が導入されたが、実際に撤回されるかどうか不透明であり、AD課税が実質的には恒久的輸入関税として機能してしまうおそれがある、
        3. AD税の対象として同種産品の範囲を広く捉え本来異なると思われる製品も課税対象とされる、
        などである。
        調査が開始された場合、被提訴企業には短期間に関連会社関係をも含め膨大な資料の提出が求められるなどの理由から、企業に相当程度の費用、事務負担が生じている。濫訴防止や被提訴側の負担の軽減を図るための措置を講ずるべきである。
        併せて、新AD協定に伴なって改正された各国の実施法や運用が協定整合的(例えば、新協定に新たに盛り込まれた公正な価格比較方法、アンチダンピング税に対するサンセット条項の各国の運用状況)であるか、WTOが十分に監視する必要がある。
        また、各国のAD措置の保護主義的な運用を防止するためにも、パネル審査の形骸化にも結びつきかねない「審査基準(standard of review)」は早期に撤廃されるべきである。
        更に、欧米等の迂回防止措置は、GATT第6条・新AD協定との整合性を欠くものであり容認できない。同協定に迂回防止措置の濫用を防止するための規定を盛り込み、規律を強化することが望まれる。

      3. 政府調達協定の締約国の拡大と適用除外の削減
        新政府調達協定は、他のWTO協定との一括受諾が義務付けられない複数国間貿易協定であることから、現在の締約国は、11カ国および1地域(EC)にすぎないのが現状である。同協定の見直し作業において、締約国の拡大が図られることを期待する。例えば、発展途上国については、まず緩やかな条件での加入を認め、段階的にオファーを見直していくなどの措置を講ずることも考えられる。
        また、相互主義に基づく適用除外範囲の削減に向け、締約国間で話し合いが進められることを期待する。
        更に、「政府調達の透明性」に関する作業部会において、全てのWTO加盟国の参加のもと、透明性の確保(調達制度及び調達案件の詳細な告知等)に関する新たな合意が策定されることを希望する。

      4. 知的財産保護の強化
        途上国の多くは、知的財産の保護が不十分であり、TRIPS(貿易関連知的財産権)協定に基づき速やかに国内法を整備し、模倣品などの取り締まりを強化していくとともに、知的財産の保護に対する国民への啓蒙・教育を行っていくことが求められる。
        今後の同協定見直しのなかで、特許制度のハーモナイゼーションの観点から、全ての国における先願主義の導入、特許出願の早期公開制度等の実現が検討されるべきである。

      5. 原産地規則の調和作業の推進
        原産地規則に関する協定には、各国が原産地規則を制定・運用する際の原則、遵守すべき規律が盛り込まれているが、加盟国の自由裁量による国内制度の制定・運用の余地が大きいため、地域貿易協定やAD措置などとの関連で保護主義的手段として用いられる危険性がある。
        WTOとWCO(関税協力理事会)の連携のもとに行われている非特恵原産地規則の調和作業が、国際的規範として、恣意的な解釈の余地の無い、客観的で拘束力を持った原産地規則の実現に繋がることを強く求める。今後は更に特恵原産地規則についても同様の調和作業が速やかに開始されるべきである。

      6. 途上国の国内産業保護を目的とした政策・措置への対応
        途上国では、国内産業の保護のため、関税政策の頻繁な変更、様々な外資規制などの措置がとられ、企業による長期的視野に立ったビジネス活動を阻害している。こうした措置がUR合意等に整合的なものであるか否か、WTOによる審査が望まれる。
        途上国の多角的自由貿易システムへの円滑な参加には、国内法の整備や政策立案に対する技術的支援が必要である。WTOが世界銀行やUNCTADなどの国際機関と協力して、引き続き途上国に積極的に助言していくことが望まれる。

    2. WTOの機能強化
    3. UR交渉の結果、紛争処理機能が強化されたことは高く評価されるが、被害を受けた企業の救済が不十分であるなど、いくつかの点で問題が残されている。また、加盟国による協定の遵守を確保するためには、WTOによる加盟国の政策に対する監視機能を強化し、紛争の発生を未然に防いでいくことが強く望まれる。
      なお、国際機関の肥大化が問題視される中で、WTOの事務局がわずか500名の組織で、効率よく世界の通商問題に対処している点は高く評価される。しかし、紛争処理体制や監視体制の強化に向け、必要に応じ現在の事務局体制の拡充が望まれる。

      1. 紛争解決手続の更なる強化
        1998年末までに実施される予定のレビューにおいて、WTO紛争解決手続の体制・機能の強化が必要である。特に、1〜2年を要する紛争処理期間の更なる短縮化を図るとともに、パネル設置から勧告の履行までの間に企業が被る被害に対する救済措置を導入する必要がある。なお、今後、紛争案件の一層の増加および内容の複雑化が見込まれることから、上級委員の拡充、パネルの抜本的改革(パネリストの常勤化等)、WTO事務局における法律専門スタッフの拡充などを図るべきである。
        前述の通り、新AD協定の審査基準(standard of review)は廃止すべきであり、ましてや他協定への適用拡大には強く反対する。
        UR交渉の結果、一方的措置が禁止されたことをわが国産業界として高く評価する。しかし、依然として国際的に合意された紛争解決手続を経ることなく自国のルールに基づいて制裁措置を発動したり、制裁措置の発動を示唆しながら相手国の貿易政策・措置などの変更を求めるケースがみられることは残念である。加盟国は国際ルールに基づき紛争解決を図ることを再確認すべきである。また、後述するように、新たな課題への取り組みの強化を通じ、国際ルールが構築されていない分野でのルールの早期合意が実現することを期待する。

      2. 加盟国に対する監視体制の強化
        既に述べたように、欧米等のアンチダンピングの実施法・運用と新アンチダンピング協定の整合性、途上国の関税政策・知的財産権制度や各地域貿易協定とWTOとの整合性などに関するWTOによる監視体制を強化し、問題点を適宜指摘し、改善を求めていくような体制を整備すべきである。
        そのためには、現在のTPRM(WTO貿易政策検討制度)を抜本的に見直す必要がある。例えば、対象国の審査に先立ちその主要貿易相手国等からの意見の聴取、WTO事務局の担当者の増員、調査頻度の増加、加盟国の問題ある貿易措置の改善を提言する機能の付与などが考えられる。
        あるいは、有識者で構成される権威ある監視委員会(オンブズマン)をWTO内に新たに設置し、WTOと各国の政策との整合性に重点を置いた調査、検討を行い、改善が必要な場合は同委員会より対象国に勧告を行うシステムを構築することも考えられる。

    4. 中国等の早期加盟の必要性
    5. WTO非加盟国の多くは、関税政策、知的財産権保護、外資政策などの面で、多くの問題を抱えている。加えて、国内法の実施体制が不透明であり政策変更も多いなど、事業活動を行ううえでリスクが大きい。こうした国々についてはWTOへの加盟を促進し、貿易制度を国際的ルールと整合的なものとするとともに、通商政策の透明性を高めていく必要がある。
      とりわけ世界貿易における中国の重要性は益々高まっており、WTOを真に世界的なものとしていくためには、中国の早期加盟が不可欠である。そのためにも中国が、知的財産保護制度などの国内の貿易、経済制度をWTOルールに整合的なものにしていくとともに、関税政策の見直し、流通業などへの外資規制の緩和など市場アクセス面での更なる自由化に引き続き取り組んでいくことを希望する。

    6. 新たな課題への取り組みの強化
      1. 貿易と環境問題への精力的取り組み
        今日、環境問題は喫緊に取り組むべき地球的課題になっている。WTOでは、貿易政策と環境政策の相互支持的関係に鑑み、多角的貿易体制の維持・発展を通じて持続可能な開発を推進する方策を発足以来検討してきている。しかし、1996年のシンガポール閣僚会議以来、この問題に関する議論に大きな進展が見られないことは残念であり、今後の精力的な取り組みが望まれる。
        特に、自由貿易を通じた経済成長が環境保護を促進するうえで不可欠との観点から、多国間環境協定(MEAs)上の貿易措置とWTO協定の調整が図られることを期待する。環境保護を口実とした一方的保護貿易措置には、強く反対する。また、各国の環境政策が過度に貿易障壁となることは避けるべきであり、ISO(国際標準化機構)などにおける国際的議論の進捗を踏まえて環境と貿易との関係が検討されるべきである。
        環境問題への取り組みには、国際的な協力体制の強化が重要であるが、WTOとしても環境関連機器の自由化促進などを通じて、この取り組みに貢献すべきである。

      2. 投資の自由化に向けた交渉の開始
        現在OECDにおいて進められているMAI(多国間投資協定)の締結に向けた交渉が1998年4月のOECD閣僚理事会までに合意されることを望む。
        また、WTOの場においても、国際的な投資の自由化に資するべく、投資に関する包括的なルール策定に向けた交渉を開始する必要がある。こうした交渉のなかで、投資における内国民待遇、最恵国待遇などの原則の確立、投資をめぐる紛争処理体制の整備を図るとともに、各国の投資の自由化が実現していくことが望まれる。

      3. 貿易と競争問題への取り組み
        貿易と競争に関する作業部会において、ダンピング防止措置の濫用などの競争条件を歪める貿易措置について活発な議論が行われることを希望する。
        競争政策と通商政策との国際的調和が図られないままに、一国が自国の産業や輸出保護のために競争政策を濫用することには、強く反対する。

    7. 更なる貿易自由化の推進
    8. 1995年のWTO設立以降も、ITA(情報技術協定)の締結、基本電気通信自由化交渉ならびに金融サービス自由化交渉の終結など、一層の貿易自由化が推進されてきたことを歓迎する。現在検討中のITAの加盟国及び対象品目の拡大(例えば、DVDプレーヤーやカー・ナビゲーション・システムなどの情報家電分野)に加え、新たな分野別自由化交渉として、前述の理由から環境関連機器の関税撤廃交渉が早急に望まれる。
      しかし、分野別自由化交渉は、どうしても一部先進国の関心分野しか取り上げられず、途上国を含めた世界全体の貿易自由化に結びつきにくい面もある。そこで、2000年1月1日までに開始されるサービス交渉、2000年頃に開始される農業交渉に加え、鉱工業製品についてもUR合意に基づき1999年までに関税率を引き下げたうえで、2000年以降の早い時期に包括的関税引き下げ交渉を開始すべきである。
      わが国の農業分野の自由化については、経団連が1997年9月に公表した意見書(注参照)にあるように、将来の例外なき関税化の受け入れは不可避であると考えられることから、そのための国内体制の整備を急ぐ必要がある。
      サービス分野については、今後、GATS規則作業部会においてサービスの政府調達に関する規律の作成、補助金に関する規律の作成等が実現していくとともに、新ラウンド交渉において思い切った自由化コミットメント交渉が行われることを期待する。

    9. WTOと民間企業の関係強化
    10. WTOの対象領域の拡大に伴い、WTOはビジネス活動に益々大きな影響を与えるようになっており、WTOと民間企業との関係の強化が望まれる。
      WTOは、可能な範囲内で各交渉や作業部会の議論の内容の積極的開示を行うとともに、必要に応じ民間企業との直接対話を行うなど、民間企業の声を活動に反映させるような機会を提供していくことが望まれる。

  3. 終りに〜日本政府への期待〜
  4. 以上のように、21世紀に向け、WTOの一層の機能強化や更なる貿易の自由化および新たな分野でのルールの策定が急務となっている。こうしたなかわが国政府が強いリーダーシップを発揮し、今後の議論や交渉をリードしていくことを強く期待する。
    その前提として、我が国政府は、国内の規制緩和を大胆に推進するとともに、基準・認証制度の国際的整合性の確保、諸外国との相互認証の推進、検査・検疫制度の改善など、対日市場アクセスの一層の改善に自ら積極的に取組んで行く必要がある。
    また、わが国は、WTO事務局に対する人的貢献を強化していく必要がある。わが国政府は、専門職クラスにおける日本人職員の増加を図ると共に、幹部にも積極的に人材を送り込んでいくためのスキームを検討すべきである。さらに、WTOが現在の欧米諸国に偏った事務職員構成を是正し国籍の多様化を図るよう、採用システムの見直しを働きかけていくことが望まれる。

以 上


(注)経団連意見書「農業基本法の見直しに関する提言」(1997年9月)より抜粋

第II章 新しい基本法で期待される政策展開の基本的な見方
2.国際化への対応
  1. グローバリゼーションの進展のなかで、農業問題も、単に国内の問題として捉えることはもはや不可能である。例えば、最終加工食品や中間製品については、製品関税の引き下げや円高の進展に伴ってその輸入が増加しており、食品工業は、これまでにない国際競争に晒されている一方、各種の価格支持制度や国境措置により割高な国産原料農産物の引取りを余儀なくされているため、非常に厳しい経営を迫られている。今後、食品工業が事業の縮小を図ったり、海外に事業展開する場合には、結果的に国内農産物に対する需要も減退することになり、国内農業の縮小にも繋がる。
  2. このように、国際化の波から農業も逃れることはできない。農業分野においても、グローバル・スタンダードを確立する努力が求められる。とりわけ、多角的自由貿易体制から最大の利益を享受しているわが国としては、WTOルールの維持強化のため最大限の努力を行う必要がある。ウルグアイ・ラウンド合意においては、関税のみによる国境措置と関税率の引き下げを目指すというガットの基本思想が、農業分野においても適用され、将来に向かって継続される方向が確認されている。わが国としても、国内体制の整備を急ぎつつ、WTOの基本思想を受け入れていくことが求められる。なかでも、関税化を留保しているコメについては、2001年以降の関税化は不可避であると考えられることから、そのための体制整備を急ぐ必要がある。
  3. 一方、わが国で生産される農産物のうち、うんしゅうみかんをはじめとした果実などは輸出実績があり、コメについてもまだ少量ではあるが在外邦人向けに輸出が行われている。国産農産物も、差別化や高品質化を図ったり、加工を施すことによって、国際競争力を持ちうる余地はあると考えられ、今後、輸出も視野に入れた農業経営も試みていくべきである。
  4. さらに、国際協調の時代への移行を踏まえて、わが国の食料外交を積極的に推進していくべきである。具体的には、食料輸出国との良好な関係維持に努めるとともに、世界に誇るわが国農業技術を諸外国に積極的に移転したり、発展途上国に対する開発援助を推進するなど、国際社会に貢献しつつ、わが国の食料安全保障体制を構築していくことが重要である。

以 上


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