提言「PFIの推進に向けて」
−市場原理を活用した社会資本整備と構造改革の実現−

はじめに


わが国は、現在、未曾有の経済危機に瀕している。この危機を克服し、活力ある経済社会の再生を図るためには、即効性のある景気対策のみならず、戦後半世紀にわたって構築されてきた、わが国経済・社会構造の改革を断行しなければならない。

構造改革を進める上で、イギリスで行われているPFI(Private Finance Initiative)に着目し、わが国においてもPFIを推進すべく、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律案」、いわゆる「PFI推進法案」が、先の国会で、議員立法により提出されたことを高く評価したい。

イギリスでは、1980年代よりサッチャー政権の下で、「小さな政府」を目指して行財政改革、国有企業の民営化等の改革が進められ、その一環として、公共事業分野にPFIが導入・促進された。このPFIの基本的な考え方は、官が民から「公共サービスを購入する」という発想に転換し、VFM(Value for Money:国民の税金を国民のために最大限有効に活用するという考え方)に基づいて、社会資本整備をできるだけ民間ビジネスに委ねていくというものである。PFI事業は着実に増え続け、今では、イギリスにおける公共投資の1割強を占めるまでになっており、イギリスの財政支出の削減と経済活性化に寄与してきた。

わが国の社会資本整備水準は未だ十分ではなく、本格的な少子・高齢社会を迎える前に、豊かさと経済活性化をもたらす社会資本整備を一層推進していく必要がある。また、戦後から高度経済成長期に整備された社会資本のなかには、修繕・更新を必要とするものが数多く存在する。国や地方を通じて極めて厳しい財政事情に直面しているわが国においても、PFIを推進することは、社会資本整備の推進にとどまらず、公共事業の効率化、財政支出の削減、官民の役割分担の見直し、新産業の創出といった経済構造改革、さらには経済の活性化に繋がるものとして、非常に意義深い。

経団連はこれまで、PFI推進法案の作成段階において、適宜、意見を述べてきたが、本提言は、PFIに対する基本的な考え方について、経団連としての見解を明らかにするとともに、PFIの推進を図る観点から、PFI推進法案の早期成立を期待し、法の運用上の課題について問題提起を行うものである。


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