生活空間情報基盤の構築に向けて
〜地理情報システムの高度利用のための提言〜
参考資料
経団連に寄せられたGISの高度利用をめぐる指摘例
- コストに係る点
- 米国での1/2400縮尺のデジタル地図作成コストは1平方キロあたり$1500〜$2000程度が標準である。地図に含まれる情報(調査項目)が、日本と米国とでは異なるので単純な比較はできないが、日本のデジタル地図作成コストが米国と比べて大幅に高いのは間違いない。
- 部局間、省庁間において、データの共有、相互利用という思想が乏しく、各部署が独立して地図のデジタル化を進めている。
- デジタル道路地図協会の道路情報(原情報)は、道路行政に係る業務を通じて整備されたものであるにもかかわらず、利用するためには高い会費を払わなければならない。
- 日本地図センターの地図情報(原情報)は、基本的には、著作権使用料相当額が付加されている。
- 町丁目コード等の利用に多額の利用料を請求される場合がある。
- データの不足・更新に係る点
- 3次元データが未整備である。
- デイリーでの交通情報をタイムリーに入手できない。
- 属性情報が不十分。属性項目の細分化が必要(同一の道路でも上りと下りとでは渋滞状況が異なる)。
- 国土地理院作成のデジタル地図と、施設・店舗等の場所情報の官民統合されたデータがない。
- 日本全国を網羅した統一仕様の地図データベースが存在しない。
- 土地の所在を明示している公図の多くは、精度、記述に関する信頼性に乏
しい。不動産の登記簿書類には、測量もされていない紙ベースの古いものがあ
る。
- 国土地理院による測量は、基本情報調査の導入が始まったものの、基本的には更新期間が長いため、現実に即した基本測量成果の入手が困難である。
- 郡部、山間部での道路に関する幅員等の情報を整備してほしい。
- 行政によるGIS利用に係る点
- GISシステムやデータベースの導入時や更新時に、競争原理の活用が不十分である。
- 行政による、民間が整備した地図の利用が不十分である。
- 行政縦割りの弊害に係る点
- 相互利用が考慮されないまま各省庁が地図投資を行うケースがある。たとえば、国土地理院の50mメッシュの標高データと林野庁の等高線データ、国土地理院の街区と総務庁の国勢調査における基本単位区等。
- 数値地図2500において公共建物として郵便局、警察、消防、役場、学校等17分類され、国土庁による国土数値情報における公共施設は、役所、教育文化、体育、医療施設、公共空地等を扱っているが、公共施設の定義が不明なため対応関係がつけられず、利用が制限される。
- 省庁毎の縦割のプロジェクトが多い。連携プロジェクトは存在するが、各省庁の担当者レベルの連携に止まり、省庁間の共同プロジェクトになっていない。
- 官民の役割分担が明確にされていない(官の中での役割分担も明確にされていないため)。
- データの定義が明確でない。たとえば、河川(河川はどこからどこまでか、堤防が入るのか入らないのかなど)、道路(建設省と国土地理院のものは中心線がわかれば良いとしているが、国土庁は2本線で表示しており、使いまわしがきかない)、建物(国土地理院の地図上の建物は公共建設物については敷地の状況を数値化して入れてあるが周りの建物については背景がわかる程度に住宅地やオフィスビル程度のデータが入っている。一方、国土庁の場合、個々の家までデータとしてインプットしてある)等が指摘されている。
- 建設省、農水省が所管する都市計画区域と農用地の基準が整合していない。
- 行政情報の公開に係る点
- 事業所統計がオンラインで公開されていない。
- 各都道府県での特殊車両の制限の情報の有無、所在がわからない。
- 行政・公的機関で整備されている家形図が公開されていない。
- デジタル道路地図協会の道路情報(原情報)は、税金を使って整備されているにもかかわらず、会員を通じてしか利用できない。
- 都市計画図は、多くの場合、自由に使用することが認められていない。
- 都市計画図はオンラインで公開されていない。
- 路線価評価が電子的手段により公開されていない。
- 土地・建物登記簿情報の整備・電子的公開が不十分。
- 商業登記簿情報のネットワークによる公開がされていない。
- 電子基準点に関する情報公開が不十分。
- 台帳データ、基本測量成果について、目的外利用が禁じられており、その理由がわかりにくい。
- 国土地理院地方測量部閲覧室の閲覧手続が煩雑。また、初心者にはわかりにくい。
- 国土地理院地方測量部閲覧室では、最新版の地形図をコピーしてくれず、書店で買ってほしいと言われる(最新版は書店で買った方が安いとのこと)。
- 国勢調査の基本単位区のデータが一般には公開されていない。
- 国土数値情報が一般に公開されていない。
- 行政情報の開示基準がばらばらである。
- デジタル化を想定していない制度に係る点
- 技術革新により、測量士でなくとも、目的に応じた必要な精度を確保した測量が行なえるようになりつつあるにもかかわらず、測量業者登録制(測量法第55条)により測量士の設置が義務付けられている。
- 基本測量成果の複製、使用に関する承認手続において、申請項目に使用目的が入っているため、多目的な有効活用がしにくい。
- 測量技術が急速に進歩しているため、米国では測量プロセスのチェックをやめ測量成果である地図の品質チェックに切り替えているが、わが国の公共測量では、作業規程の承認精度というプロセス管理が行なわれている。
以 上
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