[経団連] [意見書]

「日米通商・経済交渉および国際経済交渉における民間の役割」
に関するアンケート調査結果

1999年1月27日
経団連・国際本部

アンケート調査概要

企業活動のグローバル化に伴い、日米通商交渉の対象も従来の貿易自由化から競争政策や商慣行など、企業活動により密接に関連した分野へと拡大しつつある。こうした動きを踏まえてアメリカ委員会では昨年11月、アメリカ委員会委員および主要業界団体会員を対象に日米通商交渉・経済交渉における民間の役割に関するアンケート調査を実施した。
以下はその集計結果概要である。

【集計結果】

回答総数  89社 (送付先:330社・団体中/回答率27%)

【電機・電子(12)、輸送機械(10)、化学(6)、その他製造業(14)、
 建設業(6)、電気ガス(2)、情報通信(4)、運輸(3)、
 金融保険(6)、商社(8)、小売(2)、サービス(3)、その他(13)】
                            ( )内は 社・団体数

※項目によっては無回答の企業・団体があるので、各項目の回答数と回答総数は必ずしも一致しない。


  1. 日米通商・経済交渉に関する貴社・団体の関わりについて
  2. Q1:
    貴社・団体の関係するビジネスが70年代以降これ迄に、日米通商・経済交渉のイシューとして取上げられたことがあるか。

             (社・団体)
      ┌──あ る   60
      │  な い   23
      ↓
    

    (Q2:)
    【具体的な交渉分野】

    繊維、鉄鋼、半導体、フィルム、自動車・自動車部品
    牛肉、ソーダ・アッシュ、建設サービス、板硝子、電気通信、保険、
    紙製品、船舶、コンピュータ政府調達、スパコン、工作機械、
    変圧器用アモルファス、アルミ電線、医療機器、日米構造問題協議、 等
    日米包括協議の一部

    Q3:
    当該イシューが日米間の交渉に取上げられた主たる契機(複数回答)。

    (社・団体)
    (1)米国企業・団体が米国政府に問題提起52
    (2)マクロ貿易不均衡是正の一環25
    (3)既存の日米協定の見直し、協定のレビューの一環12
    (4)日米両国の企業・団体が双方の政府に問題提起4
    (5)日本企業・団体が日本政府に問題提起1
    (6)その他
      (米国政府が日本政府に問題提起、
       米国企業・団体が日本企業・団体に問題提起、
       日本の金融機関の海外でのプレゼンス増大を背景とする
       不均衡是正(内国民待遇、レシプロシティ)の一環)
    4

    Q4:
    交渉において貴社・団体の利益を交渉結果に反映させるため主にどのようなチャネルを利用して、誰に対して働きかけたか(複数回答)。

    【チャネル】

    (社・団体)
    (1)日本の業界団体・企業関係者43
    (2)日本政府関係者40
    (3)米国の業界団体・企業関係者15
    (4)米国のロビイスト6
    (5)米国の州政府関係者5
    (6)日本の国会議員・政治家3
    (7)米国の連邦政府関係者2
    (8)米国議員・政治家2
    (9)その他
      (米国人アソシエーツ、日米メディア、
       米国従業員、米国サプライヤー、
       業界団体長会社、貿易会)
    2

    【働きかけた対象先】

    (社・団体)
    (1)米国の連邦政府関係者33
    (2)日本政府関係者15
    (3)米国の業界団体・企業関係者13
    (4)日本の国会議員・政治家12
    (5)米国議員・政治家13
    (6)米国のロビイスト8
    (7)米国の州政府関係者3
    (8)日本の業界団体・企業関係者2
    (9)その他
      (米国消費者、米国サプライヤー、
       マスコミ、米国オピニオン・リーダー)
    1

    Q5:
    米国側利害関係者はその利益を交渉に反映させるため、主にどのようなチャネルを利用して、誰に対して働きかけたか(複数回答)。

    【チャネル】

    (社・団体)
    (1)米国の連邦政府関係者28
    (2)米国の業界団体・企業関係者25
    (3)米国議員・政治家21
    (4)日本政府関係者12
    (5)米国の州政府関係者11
    (6)日本の業界団体・企業関係者10
    (7)米国のロビイスト10
    (8)日本の国会議員・政治家2
    (9)その他(マスコミ)1

    【働きかけた対象先】

    (社・団体)
    (1)米国の連邦政府関係者28
    (2)日本政府関係者23
    (3)米国議員・政治家18
    (4)日本の業界団体・企業関係者13
    (5)米国のロビイスト9
    (6)日本の国会議員・政治家8
    (7)米国の業界団体・企業関係者4
    (8)米国の州政府関係者2
    (9)その他
      (日本の消費者、米国大統領、米国民)
    2

    Q6:
    交渉の結果、貴社・団体の利益を確保(または不利益を回避)することに成功したか。

    (%)(社・団体)
    成功した138
    一部、成功した3824
    どちらとも言えない3522
    成功しなかった149

    (成功した理由)

    1. 官民のネットワークと米国における当社独自のネットワークの利用(電機・電子)
    2. 301条による高関税の撤回と論争となっていた数値目標の排除(輸送機械)
    3. 日米半導体協定の締結(電機・電子)
    4. 日本製高級車への100%関税賦課の回避、数値目標の設定拒否(輸送機械)、等

    (一部、成功した理由)

    1. ダンピング提訴までにはならずにすんだ(その他製造業)
    2. イシュー自体の取り下げは成功せず、フォローアップ協議の度にテーマにされるが数値目標設定や政府の直接的規制には至らなかった(その他製造業)
    3. 大店法が廃止となった(小売)
    4. 期限付ながら損保子会社による販売商品、チャネルに制限が加えられた(金融・保険)
    5. ダンピング税賦課は回避できたが、市場アクセス等私企業の自由な活動には制限が加えられた(電機・電子)
    6. 関税引下げに応じざるを得なかったが制裁措置発動は回避できた(その他製造業)、等

    (どちらとも言えない理由)

    1. 日米建設協議において、米国企業への優遇措置、制度改正が決定したが日本企業に大きな影響はない(建設業)
    2. 表面上、指名競争入札から一般競争入札に移行したが、欧米企業の国内公共事業参入はそれ程進んでいない(建設業)
    3. 牛肉輸入自由化は日本が克服すべき古い体質の問題だった(その他)
    4. 多大な労力、時間、コストをかけて作業したが、結局日米両国政府間の交渉はうやむやのまま中断した(商社)
    5. 日米間の業界同士の意見交換を提案しているが米国側から前向きな反応がない。紙はスーパー301条の監視品目からはずれたが米国政府は将来、監視品目とする可能性を示唆しており状況は変わっていない(その他製造業)
    6. 交渉事項とその帰結をみると、金融グローバル化の中で必然的な部分も多分にあった(金融・保険)、等

    (成功しなかった理由)

    1. 日米繊維協定によって対米輸出が制限された(その他製造業)
    2. ダンピング判定が米国側の政治的判断で行われる余地が大きい(電機・電子)、等

    Q7:
    貴社・団体の属する業界には、日米間の交流チャネルがあるか(米国にある場合も含む)。

    (%)(社・団体)
    ある5749
    ない4137
    現在はないが今後持つ予定22

    Q8:
    所属している団体の名称・具体的活動内容。

    (省略)

    Q9:
    当該チャネルへの参加が日米間の通商・経済摩擦の予防に役立っていると思うか。

    (%)(社・団体)
    役立っている3216
    ある程度、役立っている4623
    どちらとも言えない168
    役立っていない63

    (役立っている理由)

    1. 日米間の通商摩擦にはいろいろなレベルの交渉が必要(電機・電子)
    2. 日本の電力会社の調達姿勢のPRの場となっているし、実際の取引に発展するケースもある(電気・ガス)
    3. 定期交流、統計情報交換を通じた密なる意思疎通に役立つ(その他製造業)
    4. 日米企業トップによる積極的・率直な意見交換、政策提言が出来る(商社)
    5. WSC(世界半導体会議)下で公正かつ効率的なダンピング運用に関する提言作成作業を行っており、提訴リスクの減少に役立つ(電機・電子)
    6. 業界間の相互理解促進や企業間の具体的なビジネス関係の強化は通商摩擦の予防に役立つ(輸送機械)、等

    (ある程度役立っている理由)

    1. 日米保険交渉関連テーマにつき、民間ベースで外国と意見交換(金融・保険)
    2. 経済界の主張を直接ぶつけ合って互いの考えを確認する場として有効(輸送機械)
    3. 米国主要企業の中には日本の事情を理解している企業もある(その他製造業)
    4. 米国メーカーとのコミュニケーション、協調関係の促進に役立つ(電気・ガス)
    5. 実務面では有効、但し政治的判断が加わるようなイシューでは難しい(輸送機械)、等

    (どちらとも言えない理由)

    1. 米国側の要求が引き続きなされている(その他製造業)
    2. 摩擦予防を意識した活動はあると思われるが効果は見えにくい(商社)、等

    (役立っていない理由)

    1. アジェンダを基準の調和、環境、安全問題等に絞っているから(輸送機械)、等

    Q10:
    貴社・団体は、生産、営業、販売拠点等とは別に、情報収集やロビイングのための拠点を米国に持っているか。

    (社・団体)
    (1)持っている38
    ワシントン(23)
    ニューヨーク(9)
    デトロイト、サンノゼ、
    ヒューストン、シアトル
    (各1)
    (2)持っていない48
    (3)現在は持っていないが、今後持つ予定2

  3. 日米間の貿易摩擦回避に向けた民間の役割
  4. Q11:
    日米間の個別セクターにおける貿易摩擦回避に向けた民間の役割のうち、貴社・団体の考えに近いものはどれか(複数回答)。

    (対米輸出)

    (社・団体)
    (1)現地生産や、米国企業との提携・協力関係を強化する58
    (2)貿易不均衡はマクロレベルで解決すべき問題であり、企業の対応は必要ない15
    (3)摩擦緩和のために、各社独自の判断で輸出を抑えることは有効である13
    (4)その他
      ・米国消費者の判断を優先すべき(小売)
      ・民間は主にミクロレベルでの対応となるが、不均衡防止には
       マクロ・ミクロ両面の対応が必要(金融・保険)
      ・これらを個別に行うのではなく組み合わせての対応が必要。人、モノ、
       カネ、技術等の経営資源を駆使して個別の事業展開を行う(輸送機械)
      ・本来はマクロレベルで解決すべきだが政治問題化すると
       企業の対応も必要(その他製造業)
      ・民間レベルでの継続的対話が重要(電機・電子)
      ・感情的摩擦の部分も少なくないので広く交流を行う(サービス)
    19

    (対日市場アクセス)

    (社・団体)
    (1)対日市場アクセスの改善を図るためにも、政府に規制の緩和・撤廃や
      経済の高コスト構造の是正を呼びかける
    48
    (2)米国企業との提携・協力関係を強化する42
    (3)購入計画を公表すると「約束」と曲解されるおそれがあるので、
      輸入拡大に努めることを公表するに止める
    18
    (4)米国側の市場参入努力不足の問題であり日本側の対応は必要ない12
    (5)各社が自主的な輸入拡大に努めるべきであり、そのメッセージを
      伝える意味から中期的な購入計画などを公表する
    3
    (6)その他
      ・米国企業の市場参入努力の奨励(輸送機械)
      ・ジェトロに対日輸入促進専門家を派遣(商社)
      ・対日市場アクセス改善だけでなく、産業の国際競争力向上のためにも
       高コスト構造の是正が必要(金融・保険)
      ・米国には日本市場が閉鎖的との誤解があり民間レベルの話し合いで
       相互理解を深めることが必要(その他製造業)
      ・保険市場へのアクセスについては、外国会社に内国民待遇を保証。
       日米保険合意では逆に第三分野での激変緩和措置として制限がある(金融・保険)
    19

    Q12:
    自社・団体の関係する分野において米国による301条等の手続きによる一方的措置の発動が予想される場合、日本政府にどのような対応を望むか。

    (社・団体)
    (1)わからない(イシューによる)37
    (2)二国間交渉を打ち切り、一方的措置の不当性の是非を含めて
      WTO(世界貿易機関)に提訴すべき
    19
    (3)一方的措置の発動を回避することを優先させ、二国間交渉をまとめるように要請する18
    (4)その他
      ・まず二国間協議で話し合い、解決できない場合はWTO等の国際機関やEUなど
       他国と連携する(電機・電子)
      ・一方的措置に対する直接的対抗措置の発動と、WTOへの提訴(その他製造業)
      ・マルチ優先だが、情報、理解促進のため、バイの交渉も行なう(化学)
      ・現実的な解決は是非必要(輸送機械)

    Q13:
    日米間の貿易摩擦の回避に向けた民間の役割について(自由意見)。

    〔情報・意見交換の強化〕

    1. 民民、官民の間の目的をもった情報交換が必要。その度に要望書を出し、要望実現のための行動・交渉を行う(トップレベルのみでなく実務レベルの会談)(電機・電子)
    2. あらゆる機関、人脈を通じて意見を出すことが必要である。利害が直結するチャネルを使って進出先地元の有権者の声を引き出し、地元選出の議員に働きかけることが大きな効果を生む。PR活動を強化し、問題が起きた時のみでなく恒常的に米国に日本の立場について、理解を求める(輸送機械)
    3. 民間交流の地道な推進により意思疎通を図り、「顔の見える」存在となる(商社)

    〔業界団体による情報交換・協力の強化〕

    1. 業界団体等を通じて日米のメディアに対して正しい情報を提供し、米国側のバイアスのかかった情報を是正する機会を常備する(輸送機械)
    2. 半導体の成功例を参考に、日米の業界団体同士が世界市場における当該産業の発展に向けて協力、提携を行うために密な協議を重ねる(電機・電子)
    3. 米国業界と日常的に対話を行い相互理解、協力関係の拡大に努める。また米国有識者、メディア、消費者へのグラスルーツ活動、スピークアウト等を通じて日米の相互依存関係に関する理解促進や現地化推進による支持者の拡大に努める(輸送機械)

    〔ビジネス展開の中での協力の強化〕

    1. あくまで合理的企業活動が基本。米国等からの海外調達はコストダウンの一環としてやっており、結果として貿易摩擦の回避に繋がることが望ましい(電気・ガス)
    2. グローバルなビジネス展開を通じて日米産業間のハイレベルな協力関係、信頼関係を構築することにより、民間ビジネスに係わるイシューを政治問題化させないこと、現地化の促進(輸送機械)
    3. 企業活動を通じた相互理解の促進(商社)

    〔その他〕

    1. 過去を振返ると、個別交渉で米国の言い分はその時はいかにも理不尽だったが、何年か後から考えると日本側の規制体質こそが問題だった(その他)
    2. 米国では専門の研究機関(シンクタンク)が政府機関の下請け、アドバイス機能を果たしている(商社)
    3. 市場アクセスの法的、手続き的障害は取り除くよう努力する、日本の規制緩和のスピードは遅い。海外資材の活用を一層拡大する(建設業)
    4. 過当競争からくる集中豪雨的な輸出は望ましくないが、そうでない限り、消費者の立場も尊重して、基本的には自由貿易の枠組みを守る(電機・電子)
    5. 一企業としての理想的な姿は現地化し米国に溶け込むこと(その他製造業)
    6. 消費者、第三者(ユーザー、企業等)も含めた討議機関をアドホックに設置する(化学)

  5. 日米通商・経済交渉における官民の役割について
  6. Q14:
    日米通商・経済交渉の内容が貿易自由化から、競争政策、会社法制、商慣行、 コーポレート・ガバナンスなどに拡大しつつある中、政府間交渉における企業・団体の役割 について、貴社・団体の考えに近いものはどれか。

    (社・団体)
    (1)交渉内容が、企業行動により直接影響するものになっていることから、
      企業・団体がより積極的に交渉に関与する枠組みを考えるべき
    38
    (2)政府間交渉は、政府規制など政府が直接関与する問題に限定すべきであり、
      企業・団体は政府間交渉から距離を置くべき
    30
    (3)既存の企業や団体による活動で十分である7
    (4)その他
      ・内政干渉ともとれる内容については交渉の入口で明確にすべき(運輸)
      ・市場原理に基づく企業活動への制限は最小限に止めるべき(その他製造業)

    Q15:
    日米通商・経済交渉において、企業・団体がより積極的にイニシアティブを取るためにはどのような方法があるか。

    (社・団体)
    (1)政府間交渉の内容や結果について、交渉開始前、交渉実施時、交渉終了後に
      民間から意見を聴取する機会を制度化する。
      1.パブリック・コメント制度の充実(商社)
      2.ニューヨーク、ワシントン等の地元日系団体(在米日本商工会など)との話し合いを
       必ず行う必要がある。また場合によってはその代表を臨席させる(輸送機械)
      3.交渉終了後より、開始前に焦点をあてるべき(化学)
    27
    (2)既存の業界団体、民間経済団体による活動を拡充・強化する。
      1.経団連から政府交渉団にメンバーを送る(建設業)
      2.情報、データの早期収集、および分析の強化(情報通信)
      3.政府に対する経済界の提言に一体感がない。提言団体も多すぎる(電機・電子)
      4.問題点の明確化、一般への広報、米国への情報提供などに注力すべき(サービス)
    12
    (3)その他
      1.政府に民間人を出向させ、その人に交渉させる(その他製造業)
      2.95年以降米国は貿易規制でなく為替や金融等経済政策により経済力を
       調整しようとしており、それへの対策が急務(その他製造業)

    Q16:
    わが国の経済外交の窓口を一元化(例:諸外国との通商交渉を専門とする部署を新設する)という意見についてどう考えるか。

    (%)(社・団体)
    賛成4030
    わからない3929
    反対2116

    (賛成の理由)

    1. より効率的で外部からも交渉の進捗状況や内容が把握しやすい(化学)
    2. 交渉における窓口の一本化は交渉力強化のための常識(その他製造業)
    3. 意思の統一性が確保できる、わかりやすい(輸送機械)
    4. 役所の縦割り行政の弊害が交渉に出ている。例えば資材の規制緩和では通産が反対で建設が賛成というように役所により認識に差がある(建設業)
    5. 各省庁と関係業界の立場ではなく、各業界の立場を国が包括的に判断できる形が必要(その他製造業)
    6. 所管省庁が異なると複数官庁が競合することもあり効率的でない(電機・電子)
    7. グローバル・スタンダードに対応できる専門性を有した部署が不可欠(輸送機械)
    8. セクター間の開放度に大きなギャップがあり日本経済全体としてバランスの取れた自由市場メカニズムを目指す必要がある(輸送機械)

    (反対の理由)

    1. 現在の交渉は専門化、複雑化しており事実上一元化は不可能(情報通信)
    2. 大統領的権限を持つところがない日本にはUSTR方式はそぐわない(商社)
    3. 現在の日本の官僚システムの中では十分機能しない(輸送機械)
    4. 部署は設けられても、一元的な対応能力、権限付託が行われるか疑問(建設業)
    5. 現時点でもある程度一元化されている。government reach問題に関する交渉は権限を有する当局間の交渉が望ましい(金融・保険)
    6. 一本化すると国を代表する立場から相互に妥協できなくなる。民間ベースでは結果的に商売を拡大できれば成功であり、政府窓口も多元的で良い(化学)
    7. 業界事情に精通した担当者が得られるかどうか疑問(建設業)

    Q17:
    日米通商・経済交渉における官民の役割について(自由意見)

    1. 一層の情報交換と戦略についての協議を行う。政府のG8の後、民間のG8を実施してはどうか(化学)
    2. 民の国家的な役割意識を高揚させる。日米関係史を通じた交渉技術、事例をもっと研究すべき(電機・電子)
    3. 官から民へのアプローチが少ない。ワシントンでは大使館から民間企業への実状聴取が多々あるが、日本では少ない(商社)
    4. 交渉の専門家集団を民間団体で設立し、必要であれば現在の官庁の担当者を受け入れる(小売)
    5. グローバル化の進展に伴い、民間ビジネスの利害関係は多様化しており、日米対立の単純な図式は成立しにくくなっている。官の関与は個別セクターの利益の代弁から自由なビジネス環境整備のためのルール作りにシフトしていくと思われる(輸送機械)
    6. 日本政府 は従来以上に民間企業の意向を反映させるべき。そのため民間企業による情報提供は、透明性、公平性を確保の上、ある程度認めるべき(金融・保険)
    7. 政府と経済界がビジョン、戦略を統合し、一体的な交渉、フォローアップを行なう。(全体の統合度が米国に比べて弱い)(電機・電子)
    8. 現在の米国のやり方に対応するような官民合同プロジェクトの実施、民間人の閣僚への登用(その他製造業)
    9. 市場に委ねるべきイシューについて官がコミットするという不思議な現象をいつまでも許すべきでない。官は公正競争が行われる枠組み、条件作りに専念する(輸送機械)
    10. 政府はガバメントリーチの範囲外においては交渉自体を行うべきでない。民間は政府が問題に対処せざるを得なくなる前に民間同士による解決を図るよう努力する(輸送機械)
    11. オープンで透明性の高い制度とし、事業者間の利害を明確にした上で、国益の観点から戦略的政策を立案し、事業者への調整を行う。事業者は、市場実態について政府に情報を提供する(情報通信)

  7. 新しいイシューに関する交渉のあり方について
  8. Q18:
    企業活動がグローバル化し、企業間の戦略的提携や相互依存が進展している中、企業の利害関係を国籍で分けて論じることの意味が薄れている。その中で、政府には今後、どのような役割を期待するか(複数回答)。

    (社・団体)
    (1)グローバルなビジネス環境促進に向けた諸制度、ルールの共通化75
    (2)マクロ経済運営における協調(為替の安定等も含む)55
    (3)国際的な紛争解決機構・手続きの整備、強化45
    (4)世界的、地域レベルでの貿易、投資自由化促進へのイニシアティブ37
    (5)その他
      ・戦略的産業の育成、国際的感覚を持ち、外国語で
       意思伝達が可能な人材の育成、登用(輸送機械)
      ・WTOへの提訴権を民間にも認める(化学)

    Q19:
    企業のグローバル化、情報化を受けて、地球環境、電子商取引、サービス貿易交渉などの新しいイシューに関する交渉では、交渉内容も貿易の自由化から制度、ルール作りへ、また交渉チャネルもバイからマルチ(OECD,WTO)やリージョナル(APEC)へと拡大しつつある。こうした変化を踏まえて、新しいイシューを日米交渉で取上げることをどう考えるか。

    (社・団体)
    1.なるべくマルチで話し合いバイの交渉は日米の問題に限定する61
    2.新しいイシューについても日米交渉で取上げ、
      米国と協力して新しいルール作りへ参画する
    16
    3.その他
      ・基本的にはマルチの話し合いを優先し、バイの交渉で補完(輸送機械)
      ・基本的にはマルチだが、円滑な交渉のため案件によっては、
       日米間で事前のすり合せが必要(輸送機械)

    Q20:
    新しいイシューに関わる制度、ルール作りに関して日米が協力する場合、対欧州、対アジア関係で留意すべき点(自由意見)。

    (対欧州)

    1. 欧州とは一定の協力関係を保ち、対米関係への牽制とする(電機・電子)
    2. 日米案を作り欧州と交渉する(その他製造業)
    3. 対米のみでなく対欧州も含めた協力が必要(電機・電子)
    4. むしろ交渉技術を学ぶべき(小売)
    5. 日米のみでなく日米欧の観点を心がける(その他製造業)
    6. イシューによるが、早期段階で欧州も含めて協議すべき(電機・電子)
    7. 日米間の利益のみを優先させるのではなく、EUの意見を十分に取り込む(輸送機械)

    (対アジア)

    1. アジアの立場を考えた政策提言、例えば、アジアの為替管理について、独自の考えをまとめておく(化学)
    2. アジアの視点を忘れないで、場合によっては前面に出す(電機・電子)
    3. 民間感情への特段の配慮(小売)
    4. 発展段階、文化が多様であり、一律的なグローバル化が難しい点もある(運輸)
    5. アジア代表としての気概でルール作りに臨む(その他製造業)
    6. 各国の政治・経済発展度合を考慮(電機・電子)
    7. 欧米とアジアの橋渡しの役割を日本は果たす(輸送機械)

    Q21:
    コモン・アジェンダの推進において、民間として具体的にどのような分野で具体的に協力できると考えるか(自由意見)。

    1. 建設業として廃棄物処理問題等、地球環境問題に取組んでいる(建設業)
    2. 教育に対する投資、貢献を増やす(電機・電子)
    3. 環境問題には製造業の立場から協議に参画できる(その他製造業)
    4. 地球環境問題への協力(発電所における環境技術対策)(電力)
    5. 企業ではなく日本国民として協力すべきもの。政府またはNGOが主体となるべき(その他製造業)
    6. 地球環境については自社製品、工場等の環境対策により貢献、協力が可能。麻薬、エイズについては寄付金協力を実施(その他製造業)
    7. 民間が金銭的に貢献する場合、どうしても企業の業績に左右される。総論賛成、各論反対になりやすい。経団連として基金を作るのも一つのアイディア(建設業)
    8. 環境にやさしい商品の提供、企業倫理の実践を通じて一企業市民として出来る限り協力する(電機・電子)
    9. 地球環境保全に向けた取り組みの推進(低公害車の優先的購入、梱包資材のリサイクル・ユース、低公害化、排ガス規制の強化等(運輸)
    10. エイズ(既に業界として研究活動の助成、基金に寄附)(金融・保険)、等

    Q22:
    マルチ交渉での新しいルール作りに対するわが国民間人の参加を促進するため、企業、経済団体、政府レベルでどのような施策が必要か(自由意見)。

    〔経済団体・業界団体の役割強化〕

    1. 政府レベルの交渉に民間の意見を反映させるためには、企業レベルでは難しい。経済団体、業界団体の役割が重要(建設業)
    2. 経団連の強化により政策提言、情報発信力を強める。そのために既存の多岐にわたる委員会制度の見直しが必要(化学)
    3. 企業・団体は自己責任、政府は国益の観点から諸般にわたり更なる国際化に努める。将来、サミット前に緩い形でも良いので、民間版サミットを開催する(情報通信)

    〔官民の協力強化(官民の対話の枠組み設置)〕

    1. 企業、団体、政府間の人的交流、交渉窓口の一本化と民間人の参加意識の促進(その他製造業)
    2. 企業、経済団体と政府間で、国益を考える対等の立場から、内容の伴った意見交換や検討ができる場を交渉前に設ける(その他製造業)
    3. 日米、日欧、日アジア間の民間対話の強化。但し、民間には対話参加へのインセンティブが少ない現実を考えると、官の旗振りによる「対話」の組織化、てこ入れが必要(電機・電子)
    4. 課題毎に官民一体の協議・推進機関を設置(運輸)
    5. 企業、経済団体、政府関係者による実態に即したルール作りが行なわれる枠組み作りをタスクフォースを設置して検討(商社)
    6. 政府間協議に民間代表を参加させること。個別省庁、業界の利害誘導による歪みがでないよう、中立、大局的提案をなせる個人とする(輸送機械)
    7. 公聴会、官民意見交換会の開催等、交渉に民間意見を反映させるため広く公平に開かれた場を設定(輸送機械)

    〔官民の間の人的交流の促進〕

    1. 政府組織による民間人の採用を促進する(建設業)
    2. 中途採用によるビジネスマンの役人への登用(輸送機械)
    3. 交渉に広く適材を募れる体制作りが必要。参加する民間人の処遇、待遇を手厚くすること、当該民間人の所属する企業、経済団体が快く適材を派遣するインセンティブ作りが必要(その他製造業)

以 上

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