[ 日本経団連 ] [ 政治への取り組み ]

自由民主党と政策を語る会

  1. 挨拶
  2. 意見交換の模様
  3. 自民党作成資料

日本経団連では2005年3月29日、東京・大手町の経団連会館で「自由民主党と政策を語る会」を開催した。同会には奥田会長以下日本経団連の幹部や会員代表者など約430名が出席、与謝野馨政務調査会長をはじめとする自民党の政策担当幹部26名自民党側出席者名簿 <PDF>)と同党の政策や取り組みに関する意見交換を行った。

I.挨拶

奥田会長

日本経団連では政策評価に基づく政治寄付を促進している。本日の意見交換を機に会員企業が自民党の政策への取り組みについての理解を深め、社会貢献の一環としての政治寄付を実施していただくよう期待する。本日の会合には大変大勢の方に参加いただいた。これは自民党の政策に対して企業が高い関心を持っている証である。

与謝野自民党政調会長

日本経団連の政策提言は、わが国経済を代表する総資本の声だと捉えている。できるだけ取り入れるよう努力したい。
わが国の財政再建は将来世代のために避けては通れない問題である。このため自民党では2月28日に柳澤伯夫政調会長代理の下に財政改革研究会を設置し議論している。3月9日に立ち上げた国際競争力調査会では国際競争力の維持・強化のために、教育から技術にいたるまで、幅広い問題について検討する。少子高齢化社会の本格化を控え、競争力確保のための方策を早急に確立する。
本年11月15日の結党50周年の式典の際に新憲法の草案を示したい。森前総裁を起草委員長に準備を進めている。経団連の意見も聞きながら完成度の高いものにしたい。
教育問題については、今年秋までに集中的に学習指導要領を刷新する作業を行いたい。教育基本法については、時代にあった教育方法を確立するために改正が重要であると考えている。見直し自体については、公明党も了解している。
社会保障については、年金、介護、医療一体とした改革が必要であり、党としての検討は社会保障制度調査会に一本化している。民主党は年金制度見直しを先行させたいということであり、先方の主張にも配慮する。

宮原副会長

経団連は企業の社会的責任の一端としての社会貢献として、政策評価に基づく政治寄付を促進している。この取組みは米英の企業や研究者などから高い評価を得ている。会員企業においては積極的に寄付を検討していただきたい。

II.意見交換の模様

PDF版はこちら/A3横、3ページ)

【税制・社会保障制度改革】

経団連側発言

西室副会長

財政の持続可能性を確保するには、社会保障制度の一体的改革が不可欠だ。国会における与野党協議の見通しはどうか。
国民の負担をこれ以上増やさず、自助努力を基礎とする社会を構築すべきである。広く国民全体で少子高齢化社会を支える観点から、消費税の一層の活用の議論は避けて通れない。
経済活力自体を高める観点から、研究開発、IT投資への税制支援なども実施してほしい。

自民党側発言

丹羽雄哉社会保障制度調査会長

社会保障に関する与野党協議については、現段階では見通しがたたない 。
自民党としては、介護保険や皆年金制度を保持することでは意見は一致している。景気や少子・高齢化も勘案しつつ、国民負担軽減の観点から今後の社会保障制度改革のあり方について検討を深めたい。

津島雄二税制調査会長

財政の持続可能性については経済界と同様に懸念している。国民負担と給付のバランスを包括的に見直す必要がある。国民負担率は、トータルで50%を超えることのないようにする。わが国の社会保障給付金は86兆円だが、一般会計は50兆円にも届かない。このため、2007年(平成19年)には、消費税を含む税制の抜本見直しを行いたい。このための検討は本年後半から本格化する。経団連も意見を出してほしい。
わが国の今後の繁栄のために、技術の維持向上は重要である。税制上、引き続き企業の開発努力を大切にしたい。

【規制改革・民間開放・経済法制】

経団連側発言

御手洗副会長

独禁法改正法案の成立後、内閣府に検討の場を置いて制裁や審査・審判のあり方等を検討することとなっている。これらにつき、経済界の要望を実現してほしい。
会社法制については、代表訴訟制度、監査役設置会社と委員会等設置会社の整合性確保など、経済界の要望も盛り込んだ改正が進められている。今国会での早期成立をお願いしたい。
企業買収防衛策については、会社法制のみならず、証券取引法や取引所規制についても課題が残されている。新しい会社法制の施行までに関連法制度の整備をお願いしたい。

渡邉経済法規委員会消費者法部会長

政府が検討中の消費者団体訴訟制度については、濫用防止措置を整備し、国民の信頼に足る制度としてほしい。

フロア発言

市場化テストに関する法律を早期成立させてほしい。

自民党側発言

平沼赳夫独禁法調査会長

公正取引委員会における審査・審判のあり方については、経団連の参加を得て、内閣府に検討会を立ち上げる。しっかりした制度を構築したいと考えており、経済界も遠慮なく意見を述べて欲しい。

甘利明企業統治に関する委員長

本日、企業統治に関する委員会の初会合を開催した。日本にもポイズンピル、譲渡制限株式など、一応の敵対的買収防衛策があるが、国際標準の観点から検討を進めたい。
具体的には、買収者の情報の開示や、TOB(株式公開買い付け)の期間の延長などを検討する。企業価値を高めるM&Aは必要だが、単なるマネーゲームは防がねばならない。本年の6,7月に委員会報告をまとめ、政省令等のフォローアップをする。また、秋の臨時国会に向け必要に応じ法改正も検討する。

岸田文雄消費者問題PT座長

消費者団体訴訟制度については、政府は来年2006年の通常国会に法案を提出すべく準備を進めている。濫訴防止は重要であり、企業活動を萎縮させないしっかりしたシステムを作りたいと考えている。

衛藤征士郎行政改革推進本部長

民でできるものは民でという観点から、市場化テストによって官業の民間開放を進めたい。現在はモデル事業を実施しているところであり、ハローワークのキャリア交流プラザの運営、社会保険庁の国民年金保険料の収納事業や未適用事業所への適用促進事業、行刑施設関連など3分野8事業23箇所である。今後も積極的に推進する。

【科学技術】

経団連側発言

フロア発言

科学技術立国の技術は、優先政策事項の1つである。知的財産権の保護や人材確保への取り組みについて伺いたい。

自民党側発言

尾身幸次科学技術創造立国推進調査会長

経団連の政策評価で、科学技術創造立国に向けた取り組みは最高点の「A」をもらっている。
政府では第3期科学技術基本計画を検討中である。課題の1つはこれまでは17兆円、24兆円と増えてきた予算枠の確定であり、鋭意検討中である。人材育成や知的財産権の保護は科学技術立国の目玉であり、具体的な方向付けをしたい。バイオ、IT、ナノテク、環境の重点技術4分野に加え、原子力、宇宙、情報処理など経済界の関心が高いが近年予算が減少傾向にある分野にも力を入れていきたい。

【環境・エネルギー】

経団連側発言

千速副会長

地球温暖化問題について、産業界は自主行動計画の着実な実施のほか、COが急増している民生・運輸部門の対策にも引き続き協力に取り組み、京都議定書の約束達成に貢献する所存である。
環境税については、効果に疑問があるのみならず、温暖化対策に必要な技術革新や設備投資の原資を奪い、企業の国際競争力を損ないかねない。環境と経済の両立に反する環境税については産業界を挙げて反対している。

自民党側発言

野田毅石油等資源・エネルギー調査会長

本日の夕方に政府の地球温暖化対策推進本部が開かれ、京都議定書目標達成計画案を内定し、4月にパブリックコメントに付し、5月に閣議決定する予定となっている。本日昼の党の会合への報告では、環境税は真摯に検討を進めていくべき課題となっている。最終的に閣議決定される文言がどうなるかが重要であるとともに、年末にかけての党税調での扱いも重要である。
現在の京都議定書には、米国など主要排出国が加盟していないという問題もある。日本だけ一生懸命やっても他国を巻き込まないと意味がない。日本は既に排出削減への努力がなされており、これから更に削減していくのは非常に難しい。日本としては目標の達成は目指すが、そのために税金が必要かどうかは直接リンクしない。

【教育】

自民党側発言

保利耕輔文教制度調査会長

教育基本法の改正については、連立の枠内で調整を進めてきた。ようやく政府の原案作成が了承され、現在文部科学省で原案を作成中である。憲法の精神と教育方針のすり合わせ、義務教育9年間の存続の是非と高等学校の意味、宗教教育、教育行政つまり教育委員会の関与のあり方などが論点となっている。少々時間を要するが大事な問題なので致し方ない。
義務教育の国庫負担の問題については、中教審で秋までに結論を出すことになっている。英国ではブレア首相が100%国費負担を提唱している。わが国でも今後とも地方の意見との調整を図っていく必要がある。
教育現場の問題も大事だ。不登校、いじめ、外部からの侵入者など問題が山積している。これらの問題については川村文部科学大臣の下で検討中である。

【雇用】

経団連側発言

柴田副会長

戦後直後(昭和22年)につくられた現行の労働基準法の下では、能力があって仕事の速い人よりも仕事の遅くて時間のかかる人のほうが多くの賃金をもらえる結果も生じかねない。
労働時間の規制については一定の基準を満たすホワイトカラー労働者について、健康確保を図ったうえで、労働時間の規制をはずす制度(ホワイトカラー・イグゼンプション)を導入するなど、現在の働き方に適した制度の導入を検討してほしい。

自民党側発言

森田一労働調査会長

情報化社会の進行が産業構造や働く者の価値観、雇用ニーズを大きく変化させている。ホワイトカラー・エグゼンプションについては、米国の例を学び、議論を進めていきたい。

【都市・住宅】

経団連側発言

フロア発言

住宅基本法の早期制定をお願いしたい。
住宅の購入にかかる消費税については格別の配慮を頂きたい。現在、30代の住宅志向が高まっているが、消費税負担があると大変である。住宅については資産課税も行われており、負担感が強い。

自民党側発言

山崎力国土交通部会長

日本の住宅は戸数は揃ってきたが質に問題を残している。優良住宅を含めた形での住宅政策のあり方を検討、推進する。自民党の住宅都市調査会では、住宅基本法を2006年の通常国会で制定すべく検討している。良質の住宅を増やすとともに、防災、防犯への目配りも重要である。

津島雄二税制調査会長

住宅政策は国民生活上、重要な問題である。住宅の購入は大きな出費であり、消費税増税の影響が大きいと思われる。制度、税率もこれからの検討であるが、ご指摘は念頭においておきたい。

中馬弘毅地方行政調査会長

1993年の地方分権の推進に関する国会決議以降、国の権限の委譲を進めてきた。最後の仕上げが三位一体改革であり、財源移譲とともに、自治体合理化のための合併を後押ししている。地方分権の実効あらしめるには、自治体のサービス競争を促す必要があり、そのために街づくり交付金を出している。

【通商】

経団連側発言

フロア発言

WTOにおける多角的な通商体制の整備と二国間の経済連携協定(EPA)の締結を車の両輪として推進することが必要。
既にシンガポールなどとは協定を締結し交渉中の国もあるが、中国との連携強化も不可欠である。
交渉を推進するためにも、農業や外国人労働者の受け入れなど国内の構造改革が必要である。政府与党一体となって推進してほしい。

自民党側発言

谷津義男FTA・EPAに関する特命委員長

FTA・EPAは積極的に推進している。本年4月からはメキシコとの協定が発効するし、フィリピン、マレーシアとは交渉がほぼ完結しようとしている。タイについては若干時間がかかっているが、4月20日頃に実質合意を目指す。
フィリピン、タイとの間で人の移動の問題が出ている(フィリピンは看護師・介護士、タイは介護士・スパマッサージ師の受け入れを要求)。可能な限り受け入れたいが詰めの作業に若干時間を要する。チリ、インド、インドネシアについても協定の締結の可能性を研究中である。韓国との交渉については韓国の国内状況もあって難しいが、なんとしても仕上げたい。
ハワード豪首相の4月来日の際、日豪FTAの提案がある見込みで、自民党としても前向きに検討する。豪州は、石炭、鉄鋼、アルミなど天然資源の産地としてのみならず、日本の食糧確保の基地としても重要だ。
中国はWTOの加盟約束を2007年に達成しなければならない。この状況を見つつ、近い将来には経済連携協定の締結を検討したい。日本はアジアを大事にしながら各国とのEPA交渉に当たっていく。

【外交・安全保障】

経団連側発言

三木副会長

憲法については、現実との乖離が大きい9条2項、及び、96条(改正要件)の見直しが必要との意見と考えている。自民党におかれても新憲法制定推進本部で精力的な検討が進められていると承知している。党内における検討状況、国民世論喚起のための方策について、ご教示いただきたい。

自民党側発言

与謝野馨政調会長

9条1項の戦争の放棄は不戦条約の流れを汲む理想で依然重要である。自衛隊の存在は国を守る実力組織として、9条2項を改め明確化する。自衛隊の新しい名称については未定である。9条の3項として国際貢献を盛り込むべきだという有力な意見もある。

額賀福志郎安全保障調査会長

昨年12月に決定した新防衛大綱では、テロ、大量破壊兵器の拡散、弾道ミサイルなど新たな脅威に対応するため「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」を整備する方針を打ち出した。また、武器輸出三原則については、弾道ミサイル防衛に関して日本の技術の参加が必要との声に応え、例外とするとともに、米国との共同開発・生産案件や海賊対策支援に資する案件についても個別検討によって認めるとの緩和措置の方向となった。また、わが国の安全保障上重要な航空宇宙関連技術については、国産輸送機、哨戒機の研究開発体制の整備を行っている。国内旅客機の開発と並行して進めることで、コストダウンの可能性も検討している。
米軍再編に関連し、今までと違った形で日米が役割分担することを検討している。米軍の再編に合わせてわが国自衛隊の再編も検討する。三沢、横田、嘉手納の組み合わせを考え、抑止力を維持しつつ、国民の負担を軽減する方策を検討中である。

III.自民党作成資料

日本経団連の2005年の優先政策事項と自由民主党の政策・取り組み <PDF>

以上

日本語のホームページへ