[ 日本経団連 ] [ 政治への取り組み ]

民主党と政策を語る会

  1. 挨拶
  2. 意見交換の模様
  3. 民主党作成資料

日本経団連では2005年4月7日、東京・大手町の経団連会館で「民主党と政策を語る会」を開催した。同会には奥田会長以下日本経団連の幹部や会員代表者など約240名が出席、岡田克也代表、仙谷由人調査会長をはじめとする民主党の政策担当幹部25名民主党側出席者名簿 <PDF>)と同党の政策や取り組みに関する意見交換を行った。

I.挨拶

奥田会長

民主党には、責任政党として、経済界の声を踏まえた政策を立案し、国会の場で、政府・与党と建設的な政策論議を展開していただきたい。
経済界としては、特に社会保障制度改革に関心を持っている。国民負担の増加を抑制しつつ、持続可能な制度を確立するために、もはや抜本的改革の先送りは許されないと考える。

岡田民主党代表

民主党の政策は、結党以来7年間、議員同士が真剣に議論し直接作り上げてきた政策である。官僚任せの政策ではなく、産業界・有権者の意見を聞いて策定しており、日本経団連の意見と共通するところが多々あると考えている。

仙谷民主党政調会長

民主党は、ここ数年、選挙では必ずマニフェストを作成して国民に問うてきた。今年も予算案を作成、公表して、政府与党との論戦に臨んだ。我々がもし政権に就いたなら必要な改革を断固として行う意思がある。このため、我々も立派に政権運営できると信じている。

宮原副会長

経団連は企業の社会的責任の一端としての社会貢献として、政策評価に基づく政治寄付を促進している。この取組みは米英の企業やシンクタンクなどから高い評価を得ている。民主党は、政策本位の政治に向けて、国会を建設的・本質的な政策論議の場としていただきたい。

II.意見交換の模様

PDF版はこちら/A3横、4ページ)

【税制・社会保障制度改革】

経団連側発言

奥田会長

国民負担の増加を抑制しつつ、持続可能な制度を確立するために、もはや社会保障制度の抜本的改革の先送りは許されないと考える。

フロア発言

社会保障制度については痛みを伴う改革が不可欠である。民主党は政権をとったときに国民に痛みを求めることができるのか。
直接税中心の歳入構造は、就労意欲を減衰させ、企業の競争力を弱める。また、対日直接投資を抑制し、産業は弱体化・空洞化する。歳入の強化策、特に税制についての考えを聞きたい。

民主党側発言

古川元久政調会長代理

現行の社会保障制度は高度成長・人口増加を前提としており、少子高齢化時代にはそぐわず、持続可能性がない。手直しによる現行制度の延命策ではなく、ゼロベースから新しい年金制度を議論すべきである。そのためにも、税財政の抜本改革が必要である。また、現行の社会保障制度の適用基準の多くは所得をベースにしており、所得把握のための制度整備が必要である。

野田佳彦ネクスト財務大臣

次の総選挙までの最重要課題として、持続可能な財政に向けた施策を固め、それをマニフェストの柱にしたい。
通常国会が終わる6月までに民主党の財政再建プランを出したい。政権をとって10年でプライマリーバランスを黒字化することが基本方針だ。最初の4年で歳出の削減、次の4年で歳入増大のための改革を行い、最後の2年を調整期間とする。歳出改革では社会保障もタブー視せず議論する。国・地方の公務員の人件費も含めて検討する。消費税については、年金目的以外の使途についても今後考えたい。
特別会計は決して無視できない。一般と特別を合わせた240兆円全体を一体として見直す必要がある。

【規制改革・民間開放・経済法制】

経団連側発言

御手洗副会長

現在国会審議中の会社法案には、代表訴訟制度の改善、監査役設置会社と委員会等設置会社間の整合性確保など経済界の要望が盛り込まれている。また、企業買収に対する合理的な防衛策を講じることを可能にする。ぜひ原案のまま成立するよう協力を願いたい。

宮内評議員会副議長

市場化テストという官民の競争入札を本格的に制度化すべきだ。
医療制度改革について、民主党は混合診療の容認に否定的で、政府が現在行っている特定療養費制度の拡大が望ましいとしているが、混合診療がなければ日本の医療制度は財政的にもたない。中医協(中央社会保険医療協議会)改革を通じ、医療制度改革を実現すべきだ。

民主党側発言

簗瀬進ネクスト法務大臣

上場会社はどんな株主が来ても対処できるよう覚悟しなければならない。今回の会社法改正は攻守両面で制度整備をしようという趣旨である。国際的な整合性をはかるとともに、モラルハザードがきちんとチェックされ企業の信頼が高まるような制度とすることが重要だ。

峰崎直樹ネクスト経済財政・金融担当大臣

感情的なM&A脅威論にくみするつもりはないが、日銀の量的緩和策の副作用により実態以上に国内外の株価に格差が出ている中で、合併対価を柔軟化し、わが国企業を買収することを容易化することがいいのかどうかという疑問がある。

直嶋正行ネクスト規制改革担当・産業再生担当大臣

市場化テストの導入については賛成である。
中医協改革には賛成だが、混合診療の容認には党として踏み切れない。保険診療の枠外に出る自由診療部分の医療費について、低所得者が負担できなくなるとの懸念がある。
ただ、今回混合診療の問題について色々な議論がおこったのは結果的によいことであった。従来適用されていなかった医療分野が特定医療分野の対象となったし、新薬治験も加速化した。
規制改革については、幼保一体化の実現、農業、農地、医療、教育、金融など6分野で意見を取りまとめ中である。

五十嵐文彦ネクスト総務大臣

郵政改革の金融事業の民営化は、能力のない民間金融機関を作り、不良債権を生み出すことにつながる。本筋は縮小・廃止であり、決して民営化ではない。金融事業を縮小し、その後ナローバンクをつくるか、廃止するかは、後で選択すればよい。

【科学技術】

経団連側発言

フロア発言

我が国の成長戦略については経済・産業の発展抜きにありえない。わが国は高コスト構造だ。個々の企業、業界、財界も尽力するが、国としての戦略的支援が必要ではないか。

フロア発言

日本のコンテンツの海外での流通を促進するためには、コンテンツに関する情報(著作権者等)を円滑に取得し、権利処理を行うためのシステムづくり、および、海賊版・模倣品対策などの課題がある。
政府は5月に「知的財産推進計画2005」を策定する方向だが、民主党としてもきちんと監視して欲しい。

民主党側発言

海江田万里ネクスト経済産業大臣

物づくり、特に組立加工技術の優位性を高めて競争力を確保するべきだと考えている。このため、研究開発を加速する税制整備を行いたい。

海江田万里ネクスト経済産業大臣

昨年の通常国会での「コンテンツ法案」の成立には民主党としても主導的な立場で努力した。また、簗瀬議員を座長とする知財戦略PTを立ち上げており、2005年春の通常国会の会期中に総合的戦略を仕上げることとしている。

【環境・エネルギー】

経団連側発言

千速副会長

地球温暖化問題について、産業界は自主行動計画の着実な実施のほか、COが急増している民生・運輸部門の対策にも引き続き強力に取り組み、京都議定書の約束達成に貢献する。
環境税については、環境と経済の両立に反し、国民経済への影響が大きい。産業界を挙げて反対している。

フロア発言

地球温暖化問題に対応するためには、化石燃料に依存している現在社会経済システムを変革しなければならない。しかし現在の議論は、環境税の導入の是非に矮小化されている。エネルギー源の創出まで含めて、まずビジョンを掲げ、具体的シナリオを立てるべきだ。
環境税の効果は疑問だ。環境税推進派は、長期で効くと言うが、効くまでに日本の企業が確実に疲弊する。石油関係では既に5兆6,000億円ほど課税されており、環境対策費も1兆2,500億円が支出されている。既存の燃料への課税や環境対策費の効果についても検証して欲しい。

民主党側発言

中川正春税調会長

民主党はトン当たり3000円の環境税(=地球温暖化対策税)を提唱している。これは、COの排出構造を変えることが狙いだ。COの排出を抑制している企業には税率を軽減するなど弾力的運用をする。
環境税の導入は瞬間的に経済への悪影響はあるかもしれないが投資サイクルまで考えると効果はある。税収の使途について民主党は、省エネルギー・クリーンエネルギーの技術開発、設備投資、普及に優先的に振り分けるとこれまで述べてきたが、ドイツのように福祉関連、社会システム構築に使うことも考えられる。社会保険料の企業負担分の軽減に当てることも考える。

中川正春税調会長

税制の中立性の原則に反するが、ラストリゾートとして環境税を政策誘導の手段として使いたい。温暖化防止の緊急性について世論の喚起が必要であり、環境税にはシンボリックな意味合いがある。自動車の購入・保有に掛かる税を減免して、環境税に振り分けることを前提にしている。環境税が温暖化防止策として万全ではないことは承知している。現行の環境対策を最終的には統合する必要があるのもご指摘の通りである。温暖化対策を戦略的に進めたいと考えており、今後もさらに踏み込んだ意見交換をお願いしたい。

佐藤謙一郎ネクスト環境大臣

水俣病の関西訴訟では、昨年、不作為責任で国と県の責任を厳しく問う判決が出た。地球温暖化についてもこのまま手をこまねいていれば国の責任が問われかねない。

【教育】

民主党側発言

直嶋正行ネクスト規制改革担当・産業再生担当大臣

教育分野における規制改革について意見を取りまとめ中である。

【雇用】

経団連側発言

柴田副会長

企業としては、多様化する従業員が自らふさわしい働き方を選択できるよう準備する必要がある。この観点から労働市場活性化に向けた労働法制の規制緩和が必要だ。企業の競争力強化と雇用の多様化を整合的に実現することが重要である。
日本経団連では、昨年4月に外国人受け入れに関する総合的な施策を提言した。その中では国に対し、外国人に係る諸問題の総合的な企画・調整のため、内閣の中に「外国人受け入れ問題本部」を設置するよう求めている。国際的に高い専門性や技術を持った人材の獲得競争が世界的に激化する中で、外国人受け入れに関して国としての統一的な施策を展開すべきだ。

民主党側発言

小宮山洋子ネクスト男女共同参画担当大臣

仕事を続けながら子育てをしたいという女性が増えており、こうしたニーズに応えるために、子育てや介護が必要なときでも短時間は働ける制度の創設が必要だ。民主党では仕事と育児の両立支援法案を作成しているが、今後、パパクウォータとして男性の育児時間・休暇の取得を義務化する制度を創設する。
また、子育てに伴う経済負担を軽減するために、他国に比べて低い児童手当を、子ども手当として1万6000円、所得制限なしに出すべきだと考えている。配偶者控除・配偶者特別控除を廃止すれば、子ども手当の財源ができる。

横路孝弘ネクスト厚生労働大臣

日本社会では仕事と生活の両立が一番大事だと考えている。
パート労働者が増加している。パート労働者の月収は10万円以下になってしまっており、わが国労働者の働き方について再考する必要があると考えている。

【都市・住宅】

民主党側発言

直嶋正行ネクスト規制改革担当・産業再生担当大臣

国による地方への規制を見直したい。地方自治体は自分の判断で借金できない。一人前扱いされていない。こうした財政の問題や教育委員会など、国が一律に規制している問題について、地方分権の促進の観点からも、取り上げていきたい。

菅直人ネクスト国土交通大臣

人口減少社会に突入する中では、公共事業を所得の再分配に使うことは出来ない。本当に必要なもの、必要でないもの、スクラップしなければいけないものと、メリハリをつけていく。特別会計ではまだ野放図な使い方が残っている。
高速道路料金の無料化はぜひ実現したい。金利が安いうちに現在の道路公団の負債を新規国債発行により弁済し、現在の一般道路用の財源9兆円のうち、2兆円を国債の償還に充て、残りの7兆円を一般道路と高速道路の維持と必要な道路の建設に充てれば無料化は十分実現可能だ。国内の輸送コストも抑えられる。

【通商・農政改革】

経団連側発言

フロア発言

現在飼料用穀物を大量に輸入していることが影響し、カロリーベースの食料自給率は40%となっている。民主党は食料自給率についてどう考えているか。
これまでの日本の農業の保護政策により、食品業界は高い輸入原料を使い続けなければならない。経済全体をとってみると、農業の競争力の低さがEPA/FTA推進のネックにもなっている。腹を据えた農業改革が重要だ。

民主党側発言

鮫島宗明ネクスト農林水産大臣

食料自給率に過敏に反応する必要はない。現在、日本全体で2割の食物が捨てられており、飽食状態の条件での自給率は意味がない。国と国民生活の安定を考えるなら、潜在的な食料自給率について考える必要がある。民主党では、遊休農地や耕作放棄地まで含めて農村資源の総利用を達成するために薄い手当てを拡げれば、食料自給率を50%まで持っていけると試算している。
昭和36年の農業基本法制定以来、日本はプロ農家への農地集中という政策を掲げてきたが、実際にはプロ農家が減少し、兼業農家が増加している。3月の新しい食料・農業・農村基本計画でも担い手への集中を謳っているが、この方向は間違っている。日本の農業は8割が2種兼業農家という世界に例を見ない構造である。こうした実態にあわせて農政を転換すべきだ。

鳩山由紀夫ネクスト外務大臣

FTA・EPAについては、アジアに軸足をおきながら推進していく。

【外交・安全保障】

経団連側発言

三木副会長

憲法については、現実との乖離が大きい9条2項、及び、96条(改正要件)の見直しが必要と考えている。民主党としての意見集約の方向性やスケジュール感について伺いたい。また憲法改正となると国会議員の3分の2という発議要件から、与野党の協力が避けられないが、他党との連携をどう考えるか。

民主党側発言

仙谷政調会長

憲法を改正し、国民主権についての規定を明確にするとともに、国民の代表である政治に国政の執行権があることを明確化したい。また、憲法に公会計原則を明記し、行政監視員の設置などを付け加えたい。地域主権の確立のため、中央政府と地方政府の対等な関係及び課税自治権を地方自治の本旨とすることを明記したい。その他、人権の保障についてはその実効性を担保するための規程をおきたい。
9条については、専守防衛のための自衛隊を憲法上明確化し、国際協調主義により国連の枠組みの下で実力行使的行動にも関与することを書き込みたい。

鳩山由紀夫ネクスト外務大臣

民主党は、日米同盟を基点に置きながら、今以上にアジアに軸足を向けていく。日米関係は当然重要だが、対米追従ではなく、適切な間合いが必要だ。その中で、日米中3カ国の関係が極めて重要だ。現在の日中関係は極めてよくない。政冷経熱から政冷経涼と役所にも言われる始末である。その上に総理の靖国参拝が重くのしかかっている。過去の歴史を見つめる勇気を持ちながら未来志向でいく。民主党が政権をとった暁には、アジアとの良好な関係を構築することが出来る。

前原誠司ネクスト防衛大臣

昨年決定された防衛大綱や中期防(中期防衛力整備計画)には2つの問題がある。1つ目は、米軍のトランスフォーメーションに伴い、基地負担と防衛のあり方が大きく変わるにもかかわらず、大綱がこれに対応していないことである。すぐに大綱を見直さなければならない事態になるのではないか。2つ目は、ミサイル防衛の強化に当たって、財務省に陸海空の予算を抑制するとの言質をとられてしまったことである。ミサイル防衛は重要だが、中国の軍事力増大、東シナ海権益問題、尖閣諸島問題がある中、ミサイル防衛に突出して通常戦力を損なうことは得策ではない。
ミサイル防衛については米国に対して武器輸出三原則を緩和することを認めたが、米国のイージス艦、次期戦闘機のブラックボックスはブラックボックスのまま日本に来る。防衛基盤を確立するために見直しが必要だ。
危機管理体制の充実の観点から、危機管理庁、情報統合組織、日本版NSCを設立する法案を提案した。

III.民主党作成資料

日本経団連の2005年の優先政策事項と民主党の政策・取り組み <PDF>

以上

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