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1%クラブ寄付対象団体の紹介

1%クラブニュース (No.65 2004 春)

社会福祉法人 興望館
館長 野原健治

興望館は1919年(大正8年)に、当時東洋英和女学院校長であったイザベラ・ブラックモア女史やヘレン・ライシャワーさん(元米国駐日大使E・ライシャワー氏の母上)など、日本キリスト教婦人矯風会外人部の方々の発意によって、東京の下町墨田区に設立されたセツルメントです。セツルメント運動は産業革命を契機に、イギリス・ロンドン市で始められた福祉の実践方法。アメリカで発展し日本にもたらされました。在住職員を置き、地域の人々とともに、その時代の必要性の中で福祉課題を取り上げ解決に向けて実践努力する。専門性と博愛精神に培われた地域福祉の拠点なのです。
当時の墨田区向島周辺は下請や町工場、家内工業が集積する人口密集の貧しい地域でした。興望館の福祉活動は貧しい母と子の救済から始まりました。施設には診療所があり、託児、授産(職業訓練)、栄養指導、衛生と家族計画の知識普及に加え、料理や書道教室など多岐にわたるプログラムを実践し、地域に開かれた施設として活動しました。1970年代初頭まで、この地域は貧しいながらも賑わいと活力に溢れ、人情味豊かな下町でした。素朴で魅力的で恩義に厚いまちの人々に、興望館関係者は魅了され、地域の人々もまた献身的に福祉活動を実践する興望館を大切に守り支えて現在に至っています。
その後の産業構造の変化や国際化などによってまちの人々の生活は大きな影響を受け、地域社会も変動しました。少子高齢化が進み人間関係が希薄になる中で私どもは現在、次の福祉活動を実践しています。(1)乳幼児の心身を守り育てる保育事業、(2)児童の健全育成事業としての学童クラブ、(3)心に傷をもつ児童の養護事業、(4)高齢者福祉を目指す地域活動と地域交流活動、(5)ボランティアの育成と活動の場の提供、(6)種々の福祉相談や情報提供の機能など。これ等の中で、最も力を入れている事業が保育と児童の健全育成の分野です。保育園の定員は160名。ゼロ歳から5歳児が心身を守られて育ち、若い父母の生活相談もあります。児童クラブの定員は70名。ピアノやスポーツ、茶道、中学生教科といった教室活動も活発で大勢の子ども達が賑やかに伸び伸びと集います。子どもには創造力があり遊び道具などほんの少しで充分です。子どもの健全育成にとって欠かせないものに「いろんな人間に囲まれて育つ環境づくり」があります。少子核家族化の中で子ども達は、いつも親と対面し親や大人に適応する。子どもに必要なのは子どもの集団。多くの人間関係の中でプロセスを踏みながら育つことが必要です。夏休みには中軽井沢にある興望館の敷地で高校生・大学生のボランティアリーダーとともに過ごすキャンプがあり、毎年延べ300名近い子ども達が共同生活を体験します。
現在の常勤職員は約50名。多くのボランティアと地域の人々、団体に支えられています。興望館85年の歴史は、地域の人々に支えられ守られながら、たえず弱者の側に立つ理念を守り地域のために活動した日々の集積だと思います。

〒131-0046 東京都墨田区京島1-11-6
Tel:03-3611-1880 Fax:03-3611-1895

財団法人 日本生態系協会
会長 池谷奉文

日本生態系協会は1993年に設立した民間の環境NGO。自然と共存する豊かな国やまちを目指して活動しています。自然生態系は、「水」「大気」「土」「太陽の光」、そしてこれらに支えられて生きる「さまざまな野生の生きもの」、主にこれら5つの要素が複雑に関係しあって成り立つ自然のしくみです。人間社会の土台であり、子ども達や将来世代に渡す貴重な財産です。日本生態系協会は特定の生きものや場所に焦点をあてた自然保護活動だけではなく、全国の市町村に向けて、地域ごとに自然生態系を守ることを提言しています。日本の長期計画はせいぜい10年先までですが、自然生態系を守り持続可能な地域づくりのためには、50年、100年を見据えた、長期的展望が必要です。それぞれの地域が高齢化を視野に入れ、日本の自然と文化を活かした美しく住みやすいまちのグランドデザインを描いていく。地方自治体首長に向けた提言と情報提供と共に、国政を担う政治家の方々にも「世界の環境先進国における国づくりの方向性、自然と共存する自立した地域(まち)づくりに向けた取り組み」等をテーマとする環境教育も始めました。協会にはグランドデザインの構築に必要な調査・研究を行う生態系研究センターと、得られた情報をもとに長期的展望に立つまちづくりのあり方を提言するグランドデザイン総合研究所の機能があります。環境政策室では法律などに自然と共存する視点を加える提案などを行っています。日本の法律制定や改正の他、条約をはじめとする国際的な枠組みにも積極的に関与しています。世界の先進的地域(まち)づくり事例等はドイツとニューヨークの事務所から最新情報が届きます。
主要な取り組みのもうひとつは「学校ビオトープ」の普及による子ども達への環境教育。学校ビオトープでの体験を通じて子ども達は自然のしくみを学習します。第3回「全国学校ビオトープ・コンクール発表会」も1%クラブの援助もいただき今年2月に開催しました。
私は日本生態系協会を設立する以前に埼玉県で環境保全NGOを立ち上げ20年にわたり活動を続けていました。当時、日本の特別天然記念物だった「野田の白鷺」が絶滅に瀕し、野鳥を専門とする獣医師として何とか雛を救いたかったのです。田んぼから畑への変換による餌不足と、多量の農薬散布等が原因でついに1羽も救うことができず、野田の白鷺は絶滅しました。この経験から国レベルでの自然生態系を守る活動が必須と痛感したのです。協会にはグランドデザインなど有償の専従職員が70名、海外2名で、多数のボランティアに活動を支えられています。役員は全員自分の仕事があり、無償ボランティアです。
世界の人々が平和に暮らせる唯一の道は、「自然と共存する身の丈の簡素な生活をすること」。次世代の人々にも是非伝えたいメッセージです。

〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-30-20 RJプラザ
Tel:03-5951-0224 Fax:03-5951-2974
http://www.ecosys.or.jp/eco-japan/

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