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いま、社会の一員として

─ 地域社会との共生をめざす企業と市民団体 ─

群馬県・栃木県
(No.59 2001 秋)

 今回の取材先は北関東の群馬県前橋市と伊勢崎市、栃木県栃木市です。東京から100km圏、本州のほぼ中央に位置する両県は、自然豊かな内陸県です。尾瀬ヶ原、草津白根、浅間山、世界遺産の「日光の寺社」や那須・塩原等々の観光地と、豊富な温泉にも恵まれ、四季折々の楽しさが味わえます。産業面では、製造業を中心に先端産業・組立加工が集積する工業県であり、乗用車の保有率は全国トップクラスに数えられています。企業の取材先は前橋市に本店を構える東和銀行と、栃木市に本社工場のある栃木富士産業です。そして、伊勢崎市で積極的な活動を展開する特定非営利活動法人「環境ネット21」を訪ねました。
 東和銀行は1917年、群馬貯蓄無尽(株)としてスタートしました。相互銀行法施行によって1951年に(株)大生相互銀行と改称。地域の信用組合を合併して1989年に普通銀行に転換、現在に至っています。本店ビルは前橋市の中心部にあり、花壇や人工滝を配した広いアプローチは、市の都市景観賞に輝いた「いこいの広場」です。主要な営業基盤は群馬県と埼玉県で、店舗数は94、行員数は1902名。栃木富士産業は1952年、元・中島飛行機(株)栃木工場を引き継いで設立された自動車部品、航空機部品等の専門メーカー。世界に通用する会社づくりをめざし、技術開発に力をいれる同社の社是は「和」。社員一人ひとりの切磋琢磨から生まれる調和と強い組織力をもとに、グローバル企業へと発展しています。現在の事業分野は航空宇宙部品から建設・農業機械部品、環境装置までと幅広く、従業員数は1170名。アジアに生産拠点を持ち、国内には車のテストコースと福島工場、東京に事務所、名古屋に営業所があります。特定非営利活動法人「環境ネット21」は、伊勢崎市の若手経営者で組織する環境NPO。“美しい地球を子供達に”を理念に活発な活動を展開すると共に、NPOサポートセンター「NPOネットワーク21」も設立。全国ネットワークによる市民活動の緩やかな連帯と飛躍をめざしています。
 東和銀行の取材は総合企画部広報担当の佐藤隆夫調査役と佐藤環さんに、栃木富士産業では栗原義一社長を中心に丸山忠常務取締役、早乙女秀雄総務人事部長ほかの方々に伺いました。環境ネット21は六本木信幸理事長、原義男副理事長、石原一夫専務理事ほか2名の理事から多彩な活動を紹介いただきました。


地域とともに歩み、信頼されるコミュニティバンクをめざして
● (株)東和銀行の地域活動

東和銀行は創立以来、地域社会に信頼され役立つ銀行をめざし、地域とともに歩んできました。経済のグローバル化や情報通信技術の発達にともない、産業構造が大きく変革する中で、専門的立場からの適切な情報提供やサポートを行うこと。次世代を担う新しい産業や企業の芽を育て、地元企業や地場産業の発展に金融機能を通じて貢献していくことも、コミュニティバンクの使命と考えています。
地域社会の一員として、全社的な社会貢献活動への取り組みは1990年から始まりました。最初の活動は環境保護です。当時、尾瀬沼の自然破壊が懸念され、多くの行員から「尾瀬の美しい自然を、自分たちで守ろう!」と、提案が寄せられました。同時に、小さな子どもたちが心豊かに育つことを願う「東和よいこ劇場」など、文化活動もスタート。また、行政機関からの要請をうけて県民マラソンや地域行事へ積極的に参加するなど、地域社会との触れ合いを深めています。これら一連の社会貢献活動は、全て総合企画部広報担当の企画運営による手作り行事。そして多数の行員がボランティアとして各行事に参加し、活動を支えています。

「尾瀬のゴミ持ち帰り運動」に始った、環境保護活動

水芭蕉やニッコウキスゲの群生する尾瀬には一年を通じて多くの観光客が訪れます。人が多ければ放置されるゴミも増え、自然破壊が進みます。1990年に始まった尾瀬の自然を守る運動は今年で17回を数えました。最初は年2回、水芭蕉やニッコウキスゲの美しい季節に実施されていましたが、ここ数年は年1回7月に実施です。「尾瀬のゴミ持ち帰りキャンペーン」と名付けたこの活動は、尾瀬の登山口、鳩待峠で、入山者にゴミ袋を手渡し「各自でゴミを持ち帰ってください!」と呼びかけるもの。今年は7月14日に実施しました。当日は社内メールの呼びかけに応えて、埼玉・群馬の支店から行員と家族を含め70名が参加。早朝6時に片品の駐車場に集まりました。そこからは専用バスで鳩待峠へ向い、銀行が用意した200枚のゴミ袋を「ゴミを持ち帰ってください!」と呼びかけながら登山者に渡します。終了後は三々五々、好きなコースで尾瀬の自然を楽しみ、周辺のゴミに目を光らせながら、指定時刻に集合場所に戻り活動を終える自主参加プログラムです。今年は家族参加が20名ほど。休日を自然保護活動に参加し、自然の豊かさと大切さを学びながら親子で過ごす。小さな子どもの環境体験教育の場としても評価される恒例行事です。
この他、4月のみどりの日、11月の勤労感謝の日に実施される「クリーン前橋奉仕隊」(前橋市主催)の清掃活動にも、毎回20名程の行員がボランティア参加しています。そして本店前庭の「いこいの広場」は、清掃活動などの市民行事の受付・集合場所として有効利用されています。

「東和よいこ劇場」など、文化活動への支援

子どもたちの心豊かな成長を願い、「夢と感動」を贈りたいと始めた活動が影絵による「東和よいこ劇場」。スタートは1991年。幼稚園児から小学校低学年までが対象で、1回の公演に1000〜1500名を無料招待します。群馬・埼玉両県内の市・町を巡回して年2回の開催です。「劇団角笛(つのぶえ)」による物語劇は美しい色彩とファンタジックな影絵で、子どもたちはいつしか夢と感動の世界へ。各町・市から要請も多く、「1回の公演で1000名をご招待したいのですが、一番の悩みは会場探し」と、佐藤調査役。小さな地方都市で、1000名収容可能な施設を見つけることは難しいのが現状です。22回目を迎える「東和よいこ劇場」は今秋、川越市市民会館で開催されます。会場受付や当日の運営サポートは開催地区支店の行員が担当、活動を支えています。劇団との交渉、会場探し、広報と当日の運営まで、すべて東和銀行による自主企画です。
群馬県県民会館から支援依頼を受けて、共催という形で1990年から続けている行事に「県民文化講座」があります。各界の著名人による文化講演会で、毎回500〜600名の県民が集まります。開催は年2回、同行は資金的支援と共に当日の運営にも協力。今年の講演会講師、俳優の江守徹氏は、洒脱な話術と豊かな表現力で観衆を魅了しました。前橋市と萩原朔太郎の会が、市政百周年を記念して制定した「萩原朔太郎賞」にも協賛しています。前橋市出身の詩人・萩原朔太郎の業績をたたえる賞で、優れた現代詩作品を選考し、作者を表彰して地域文化の向上を図るもの。今年で9回目を迎えます。

「ぐんま県民マラソン」への支援協力

群馬県と上毛新聞社の主催で毎年11月に開催される「ぐんま県民マラソン」は、マラソン愛好家に広く親しまれている恒例行事です。毎年県内外から1万人近くのランナーが集まり、ハーフマラソン、10km、4kmコースに分かれて晩秋の1日を楽しみます。東和銀行からは昨年、170名近くがランナーとして出場し、100名を超す社員ボランティアが運営スタッフとして大会を支えています。マラソンボランティアは午前3時起き、早朝からの設営準備です。「毎年100名を超えるボランティアが自主的に参加してくれるので、大変助かります」と佐藤氏。今年もすでに各支店に呼びかけて募集を行い、多数の応募がありました。豊かな地域づくりをめざして、地域社会との触れ合いと交流を深めています。

その他の貢献活動など

日本赤十字主催の献血運動への協力は、古くから続く貢献活動として毎年多数の行員が自主的に協力しています。社会福祉分野では、知的障害者福祉施設で制作している貼絵のカレンダーの定期購入があります。毎年300冊のカレンダーを各支店から顧客に配布する活動は10年続き、施設からもお客様からも喜ばれています。良き企業市民としての企業活動と、自主的な社員のボランティア活動を調和させながら社会貢献の輪を広げる。地域とともに歩み発展する、東和銀行の企業姿勢です。

切磋琢磨から生まれた「和」を社是に、豊かな社会の発展に貢献する
● 栃木富士産業(株)の地域活動

栃木富士産業本社工場の敷地は約4万坪。縦横100mの新工場と鋸型の旧工場が左右に整然と並び、中央部分、緑の木立の間には研究開発の拠点となる最新設備の実験棟が点在。事務棟の西側は広々とした芝生のグランドで、手入れの行き届いた芝は緑に輝く絨毯を思わせました。創業は1952年、中島飛行機の役員を務めた栗原甚吾氏(栗原義一社長の祖父)が戦後同社栃木工場を引き継ぎ、自動車部品・航空機部品の専門メーカーとしてスタートしました。社員一人ひとりが切磋琢磨して互いを磨き、調和を生みだす。組織体の力を充分に発揮させるこの「和」を社是に、世界を視野に入れたグローバル企業へと発展しています。事業分野は主力となる四輪駆動系自動車部品に加え、航空宇宙部品から建築・農業機械部品・環境装置(汚水処理)までと幅広く、来年、創立50周年を迎えます。

社会貢献は「日本経営品質賞」へのチャレンジから

同社が社会貢献活動へ全社的な取り組みを始めたのは1999年から。21世紀へ向かう大転換期に向けて企業体質の改革・強化を図るべく「日本経営品質賞(JQA)」へチャレンジしたことから始まりました。同賞は経営全体の品質(経営品質)を客観的に顧客の視点から見直すもの。8つの主要課題の1つに「経営における社会的責任」が明記されています。同社では従来から、近隣の清掃活動や地域の人々が参加する夏祭り、小学生の工場見学、日本赤十字の献血運動など、特に社会貢献とは意識せずに実施していました。従来からの活動と社員が個人として各地域で行っているボランティア活動を見直し、「社員個々人が各地域で実践する自発的ボランティア活動は基本的に個人に委ねる。会社は企業としての活動・行事を行うと共に、社員が積極的に地域との交流活動ができるよう環境整備に努める」を基本姿勢に定め、倫理綱領の中に「良き企業市民として積極的に社会貢献活動を行う」ことを明示。社員のボランティア活動支援制度を制定し、全社的見地から地域社会の一員としての貢献活動を推進しています。

地域社会へ役立つ活動を志して

工場周辺の清掃活動は旧来の方式を見直し、今年から「工場周辺クリーン作戦」として実施しています。毎週月曜日始業前の8時から、社員の自主参加を原則に各職場単位で行います。会社が用意したゴミ袋に周辺のゴミを集め工場内の設備(ISO14001取得時に設置)で全て処理します。また従来から実施している栃木市運動公園の清掃活動も継続しています。これは毎春、全社を挙げてのソフトボール職場対抗試合の終了後に行う活動で、試合で使用した野球場だけではなく、広い運動公園全体を全参加者が自主的に清掃して帰る清掃美化活動です。社長自らも参加して毎年継続して実施されています。
また、地域の要望を受け入れて1992年から工場の始業時間を8時から8時半に変更しました。車通勤の多い従業員の通勤時間帯をずらし、小・中学生の登校時の安全確保に協力するもの。地元自治会、学校関係者から感謝されました。電力消費量がピークとなる7、8月の夏季期間中、工場では週末勤務、月・火休日の変則勤務を実施。最盛期の電力消費緩和へ協力するなど、地域との共生をめざしています。

教育振興に寄与することを目的に

小学校の社会科授業で行う工場見学は、10年ほど前から受入れ、協力しています。最近、学校単位の見学会とは別に4〜5名の小学生が先生と共に来訪する「企業(工場)探険隊」が増えました。地元に企業が少ないこともあり、毎年、近隣の小学校から200名近くの生徒が訪ねてきます。総務部では担当者を決めて一緒に工場内を回り、解りやすい説明に努めます。子どもの理科離れが懸念される折、モノづくりの現場を見ながら科学・技術に少しでも興味を持ってほしい。教育振興の一助になればと継続されている活動です。また、小さい頃から国際感覚を養えるよう、小学校4、5年生を対象に英会話教室を始めました。外国人講師を招いての教室は目下、従業員の家族に限っていますが、地域の子どもたちに一部開放することも検討中です。
社員の技術研修・教育に積極的な同社は人材開発・育成を目的とする「啓発館」を1996年に完成しました。5階建てバリアフリーを考慮した同館は、最新の研修用機材を備え、100名収容のホールに大小の研修室もあります。社員教育の場だけではなく、広く地域の人々に活用され社会に役立つことを視野に入れて建設されました。また環境保全に配慮し、太陽光発電によるクリーンエネルギー活用が計られています。新エネルギー産業技術開発機構と共同研究で10kwの太陽光発電システムを設置。発電データを研究開発に役立てると共に、電力消費量の10〜15%を賄っています。同装置を広く社会に開放し太陽光発電への関心と活用を願う取り組みです。

ソーラーカーレースを支援してテストコースを開放

同社は四輪駆動系部品の評価確認のため、車のテストコースを所有していますが、このテストコースをソーラーカーレースの会場として毎年無償提供しています。最初は栃木県環境キャンペーンの一環として県主催でレースを行うことになり、同社に会場の無償提供依頼がありました。出場するソーラーカーは全て手作り。本格的なものから簡単なアイデア作品までさまざまな車が参集します。単に速さを競うだけではなく、仲間同士が互いの技術・工夫を学びあう交流の場でもありました。県主催のレースは3年前に終了しましたが、工業高校などの若い生徒たち、市民愛好団体の強い要望を受けて、テストコースの無償提供を現在も続け、同社の社員ボランティアが大会当日の運営を支援しています。「若い人たちの技術力向上に役立つことを願い、今後とも施設や機会を提供する活動は継続したい」栗原社長の言葉に力がこもりました。

33年間、地域の人々と一緒に楽しむ夏祭り

地域活動の中で最も歴史ある活動が地域の人々と交流を深める夏祭りです。きっかけは労働組合の中に青年部が組織されたこと。その記念行事として青年部が主催、地域開放型の夏祭りとしてスタートしました。取材日は夏祭りの数日前。芝生の上に盆踊り用のやぐらが組まれ、仕掛花火の準備も見えました。今年は日曜日の夕方5時開始。例年、5000名を超す人々が家族と共に楽しみに集まる、地域のビッグイベントです。青年部若手による御輿を担いでの開会式で始まり、地元お囃子連の演奏と浴衣姿の婦人団体や市民参加の盆踊りで最高潮に。やぐらの回りには彩り賑やかな20を超す模擬店が軒を連ね、管理職による叩き売り屋台も大人気。10万円ほどの売上金はすべて地元社会福祉協議会へ寄付されます。また肢体不自由児の授産施設2カ所に模擬店を提供。地元の人々との交流と売上げに貢献しています。会場の設営と運営は組合員を中心に全て社員による手作り。車が欠せない土地柄、アルコール類の販売は一切ありません。フィナーレを飾るのがみなさんお待ちかねの花火大会。栃木市で花火を打ち上げる夏祭りは、同社の行事だけです。工場周辺も次第に住宅が増え、花火打ち上げの条件は厳しくなっていますが、「花火職人方の努力と消防署の協力を得て続けています。夏祭りは近隣の方々が楽しみに期待される行事。会社も大切にしています」と栗原社長。会場の後片付けと清掃は、月曜日の早朝、祭りに参加した全社員が集まって実施します。
地域の少年チームや小学校への敷地内サッカー場の貸出しや甲子園出場校への支援も毎年行っています。文化面では栃木市で開催される「蔵のまち音楽祭」などにも協賛。特別史跡「日光杉並木街道」保護では杉並木オーナーとして支援しています。社会貢献活動への本格的取り組みを始めてまだ数年ですが、地域に生きる企業として、社長自ら率先される着実な活動に力強い次の一歩を感じる取材でした。

「美しい地球を子供達に」を理念に
● 環境ネット21の地域活動

環境問題に関心をもつ仲間で、できることから

「環境ネット21」の誕生は1994年、伊勢崎商工会議所青年部の若き経営者数名の居酒屋談義が発端でした。話題が環境問題に及び、「地球に住む一生活者として、自分たちにできることがあるのではないか。まず自分たちの住む地域を、より住みやすくしよう」意気投合した仲間で構想を練り、「美しい地球を子供達に」を理念に行動を開始しました。活動の柱は、(1)環境保全の学習・啓発、(2)子どもの健全育成、(3)まちづくり・まちおこし、です。できることから始めようと、“生ゴミを伊勢崎市に返さない運動”に取り組みました。生ゴミの肥料化を考えて、各自、家庭菜園で野菜づくりに挑戦し、有機農法の会員の田んぼを借りて米づくりへ。「そのお米から伊勢崎ブランドの地酒を造り、啓発活動のシンボルにしよう」と発展。田植えや稲刈りには、体験教育の場として子どもと母親たちにも参加してもらいました。活動の広がりと共に商工会議所青年部の経営者を中心に異業種20名余が会員となり、1999年に全国第1号の特定非営利法人「環境ネット21」へ発展。昨年、NPO法人取得を目指す団体の活動を支援するため、NPOサポートセンター「NPOネットワーク21」を立ち上げました。全国ネットワークを目指して活動の幅を広げています。精力的に活動する「環境ネット21」の活力の原点、現在推進している主要な行事に絞ってご紹介します。

メンバーそれぞれの経営資源をフルに活用

環境ネットの大きな特長は、(1)全メンバーが夫々一国一城の主、事業経営者として経営資源を持っていること、(2)異業種のメンバー構成で提供資源の幅が広いこと、(3)大企業の煩雑な手続と決済が不要。例えば「悪いけど、トラック1台出してほしい」と頼むとすぐ出る迅速な機動力、(4)商工会議所青年部として全国の仲間とのネットワークが活用できるなど、情報とネットワーク、ヒト・モノ・カネの経営資源がフルに活用できるメリットがあります。確固たる理念を持って、家族を含めて楽しみながら活動する、これも環境ネットの大きな特徴でした。
現在実践されている活動は大変幅広く、前述の3本柱に加え、(1)収益事業、(2)環境保全・まちづくり事業、(3)行政からの委託事業(群馬県委託の「地域環境学習事業」、伊勢崎市委託の「リサイクルプロジェクト事業」)など、(4)フロン回収事業があります。(1)は地酒「自由の海」の販売のほか、有機農法の野菜ドレッシング「伸びゆく大地」が加わり、会員が経営する市内商店で販売中。将来は全国へと夢が広がり、家庭用バイオ分解式生ゴミ処理機や竹炭枕なども扱い品目です。(2)は「生ゴミからの堆肥製造作業」に本格的に取り組み、事業化。環境にやさしいまちづくりの一環として「食品産業から出るビール粕等を活用した生産プラントによる家畜飼料製造作業」にも取り組んでいます。(4)は廃棄自動車のフロン回収事業で、会員であるフロン回収装置の開発メーカーに委託。装置を搭載した回収車を、県内の自動車整備工場に派遣して回収するもの。今後は群馬県をフロン回収の先進県として回収システムの確立を急ぎ、全国ネットによる事業化をめざしています。

まちづくりに寄与する甲冑(かっちゅう)教室や地ビールまつり

群馬県が推進する「一郷一学」運動に因んで今年スタートしたのが段ボールと組紐で作る甲冑教室。小田原の商工会議所青年部が開いている手作り甲冑教室の法人化を支援したことが契機になりました。伊勢崎市の由来を調べるうち、初代伊勢崎藩主稲垣氏の業績に辿り着きました。今年は伊勢崎藩が最初に成立して400年目。環境ネットでは、市の原点となる「藩」を核にまちおこしを行い、未来の都市建設に活かそうと「時代まつり」を計画。8月に開催された「いせさきまつり」に初代藩主・稲垣氏の末裔を招待。市長をはじめ多くの人々の協力によって甲冑を纏った華やかな武者行列を再現しました。今年の甲冑は小田原からの借用ですが、来年は甲冑教室で製作した手作りを纏う予定です。
地ビールまつりも「いせさきまつり」の期間中に開催される環境ネット主催のイベント。目的はゴミをすべて自分たちで処理する、「完全なるリサイクル」を披露する啓発活動です。テント張りの特設会場に2日間で2000名ほどの来訪者がありました。ビールコップは伊勢崎市のマークを入れた素焼きで、来客は最初にコップを買う仕掛けです。コップもビールも300円、2杯目からはビール代だけ。洒落たコップは記念品として持ち帰ってもらいます。おつまみなどの生ゴミは会場に設置された家庭用処理機で有機肥料に。割箸、紙、発泡スチロール、ガラスなどはその場で分別収集し、再生商品や建築材料に利用。作業や収集にかかるコストはすべて会員の関係する会社・商店などが協力・負担します。

未来を担う子どもたちの自然体験教室を

今、着手し始めた大きな夢と構想は、子どもたちが思う存分自然に親しめる施設をつくること。子どもたちが四季折々の自然に接しながら、夢と冒険心を持って自由に遊べる常設の遊び場です。子どもの自然体験に関する助成金「子ども夢基金」へすでに申請書を提出し、構想実現に向けて行動を開始しました。行政、教育機関、地域住民など多くの人々たちの協力・支援を受けながら、実現に向けて動いています。
志を一つにし、苦楽を分かち合い、目標に向けて楽しくダイナミックに活動する「環境ネット21」。全国ネットを活かした今後の展開に期待する取材でした。

(取材・文責 青木孝子)


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