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ワンパーセントひろば

─ 企業の社会貢献活動のご紹介 ─

(No.66 2004 秋)

トヨタ自動車株式会社
トヨタグループ災害Vネット

7月中旬、北陸地方を襲った集中豪雨は新潟・福井など各地に大きな被害をもたらしました。各被災地では復興に向けボランティア支援本部を立ち上げました。新潟ではボランティア活動も活発に行われていますが、福井県では被害の大きい美山町を除いて支援本部の立ち上げが遅れ、特に今立町支援本部ではボランティアがかなり不足しているとの情報が届きました。
昨年4月にトヨタグループ13社で立ち上げた「トヨタグループ災害Vネット」(以下“災害Vネット”)要綱には県内の自然災害を支援対象とするとありますが、今回は要綱の例外として、今立町のボランティア支援に有志を募って応援に行こうと企て、トヨタボランティアセンターも上司の理解を得ました。早速ネットワーク企業の(株)デンソーに相談を持ちかけ快諾を得、社有バスの配車も快く受けていただけました。加えて、総務部長自ら被災地でのボランティア活動に参加してくれるとのことでした。早速、現地の今立町ボランティア支援本部に連絡を取り、翌日の7月21日に24日(土)、25日(日)の活動募集を“災害Vネット”のメンバーに呼びかけました。募集期間が2日間と極端に短く、さらに両日とも地域の大きなイベントと重複するという悪条件でしたが、2日間での活動希望者が60名程ありました。活動前日の夜、今立町ボランティア支援本部に現地の状況をしっかり聞き、当日のバスの中で参加者にオリエンテーションしました。
被災地での活動で一番留意することは“安全確保”です。特に酷暑での活動で汗をかくため、水分補給が重要です。また“張り切り”“燃え尽き”症候群で体力消耗・熱中症、さらに現地では糞便の混入した泥などの撤去活動が主流で、下痢・嘔吐など注意すべき点が沢山あります。それらの点をしっかりオリエンテーションし、現地に臨むことにしました。朝6時30分デンソー本社を出発し約3時間かけ今立町支援本部に到着、受付後被災者宅ニーズをもらい活動に出かけました。支援本部のコーディネーション機能にはいくつかの改善すべき点もありましたが、現地スタッフのほとんどが未経験者で、大変な中、何とかボランティアを活動に送り出していました。私たちの活動は5軒の被災者宅の泥だしで、被災地のコーディネートは地域の総代さんが担当で活動の指示をもらいました。5班に分かれ30分活動し10分休むといったパターンを繰り返し、家の内と外の泥だしを行いました。酷暑の中での活動のため、一人当たり3リットル位の水分を補給するという状態でした。
私は以前、福島県の大信村で同じような時期に活動したことがありますが、今回と大きく違うのは被災者のショック状態です。今立町の被災された方たちは精神的に明るかったような気がしました。ボランティアに対しての気遣いなど、かえって申し訳ない気持になりました。こういう活動をする度、被災者にとって生活の復興はできても、精神的な自立復興にはかなりの時間がかかるということを痛感します。でも今回私たちが関わった被災された方たちからはその心配は感じませんでした。災害Vネットのメンバー全員、いち日も早く被災地が復興し元の活気ある町に戻ることを願って被災地を後にしました。こういう活動は人海戦術が効果的? に思えました。企業の強みでもある“人”を活かすという点で、今後、企業の社会貢献活動としての課題かも知れません。困ったときはお互い様の心で助け合い活動をすることが、人として最も大切だと痛感した2日間でした。

トヨタボランティアセンター
TEL:0565-35-1089 FAX:0565-35-1058

ジャパン・プラットフォーム(JPF)
イラン南東部地震評価調査隊に参加して

1.バム地震へのJPF支援と評価団の派遣

2003年12月26日にイラン南東部のバム市(人口約10万人)を直撃した直下型地震(M.6.9)は、2.6万人の死者、3万人の負傷者を生じ、市街の90%以上の建物を崩壊させる未曾有の大災害となった。国際緊急人道支援を目的に組織されたジャパン・プラットフォーム(JPF)では、地震当日に支援方針を決定し、翌日にはNGOの第1陣が日本を出発することができた。今回初めて日本経団連の寄付先団体として推薦を受けることができ、63企業から計2620万円の義援金をいただき、民間と政府資金合わせて総額3.3億円をNGO 9団体に助成した。JPFはこのような大規模かつ多額の民間資金の拠出をいただいた支援事業に関しては、現地調査を含めた事業評価を自ら行うべきであると考え、今回調査団を編成し現地に派遣した。

2.被災地におけるNGOの活動

地震直後に、世界各国から約80のNGOが被災地に駆けつけた。日本のNGO9団体は、いち早く被災地に入り、阪神淡路大震災、インド地震などの豊富な経験と教訓を活かす形で、被災地の人々のニーズにきめ細かに対応し、被災者から大変感謝されていた。日本の各NGOは、JPFの助成金に加え、自ら調達した自己資金で、被災者に直接裨益する事業を実施し、投入資金に比べて、効率的に大きな成果を挙げていた。一般的には「日本の援助は現地で見えにくい」との批判を受けているが、バム被災地では、日本の支援と各NGOの成果をはっきりと確認することができた。

3.本格的な復興事業はこれから

現在、日本を含め国際NGOはほとんど帰国してしまっているが、被災地ではまだ復興事業が始まったばかりとの印象であった。現地で会った多くの方々は、現在までの国際NGOの支援に感謝し、これからは自力で復興に向けて取り組むとの覚悟を語っていたが、実情は海外からの技術と資金支援が今後も必要であることを強く感じさせられた。被災者の多くがまだテントや仮設住宅に住んでおり、また、働く職場の確保や被災者への心のケアなどの支援も今後の重要課題であり、本格的な復興には今後何年も要するものと思う。

4.おわりに

調査団の一員として地震発生から半年以上経った現地を訪れ、まだ復興が一向に進んでいない瓦礫の山と化した災害の現場を目の当たりにし、大変なショックを受けた。しかし、日本のNGOに対して「欧米の大規模国際NGOの陰に隠れ、大した活動はしていないのでは」などと勝手に想像していた私の偏見は、今回現地を訪れ、完全に払拭された。むしろ日本の各NGOの現地での活躍と助成資金の生きた活用に大変感銘するとともに日本人としての誇りを感じた。現在、企業ではCSRの方針に則り、ステークホルダーに対する説明責任が大変重要な課題となってきている。企業の社会貢献を担当する立場で助成金が現場でいかに使われ、それが被災地でどう評価されているのか、現場を直接確認することができたことは大変光栄である。また、現場を直接調査確認することの重要性をあらためて認識させられた現地調査であった。

JPFアドバイザー(松下電器産業) 森信之

JPF事務局
TEL:03-5223-8891 FAX:03-3240-6090
URL:http://www.japanplatform.org/


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