企業人政治フォーラム速報 No.34

1998年 4月15日発行

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村上誠一郎衆議院大蔵委員長/
日本復活のシナリオについて
(3月24日政経懇談会)

[村上議員]

●第3の変革の波と日本の現状
明治維新、終戦に次ぐ、第3の変革の波の始まりは、1985年のプラザ合意とそれに続く冷戦構造の崩壊だと思う。この波により、経済のボーダレス化、グローバル化がおこり、人、物、金が国境を超えて動き出した。
日本は、バブルの崩壊により、土地・株の損失が約1,100兆円、外国投資の損失が約200兆円にのぼる。そして、規制緩和や価格破壊、メガコンペティションが進み、個人差が拡大していく。従来の明治維新、終戦は国民の目に見えたが、この第3の波は目に見えないので、国民はその波の大きさに気づいていない。
日本の現状をみると、政治、経済、行政の3本柱のコアがそれぞれ崩れてバラバラになっている。これに加えて、社会的状況としては、高齢化、少子化社会をむかえ、国家の活力がなくなっていく。その上、マスコミは扇情的な報道で悪い者を徹底的にたたく。こういう魔女狩り的なやり方をするので、みんなが萎縮してしまう。もう1つ心配なのは、傍観民主主義ともいうべき状況だ。みんなが甘えの構造で、誰かがやってくれると思って傍観している。結局、こういう状況で、誰がこの日本を引っ張っていくのか。この状況を打破するためには、政治家をはじめ、経済界も、正論を主張し続けなければならない。

●日本復活のシナリオ
これから日本を復活させるためには、財政の再建、経済の活性化、外交・国防の建て直し、それから教育の再構築の4つを早急にやらなければならない。
よく行財政改革というが、一番重要なのは、財政の再建である。現在、福祉は医療と年金で年に48兆円かかっているが、これが30年後には188兆円になる。これをどうするかが問題だ。橋本内閣の進めている省庁再編は、器をかえているにすぎない。本来は、外交、国防、警察など国にしかできない仕事と官と民の両方ができる仕事、民に任せるべき仕事の3つに分け、21世紀の国の行政はこれだけをやるということを決め、それから器を決めなくてはならない。やはり、世界的な流れとしては、小さな政府にして、減税するという方向だ。
次に、経済の活性化のためには、バブルを清算し、金融不安を取り除くことが第1だ。これをやらなければ信用収縮、資産デフレがとまらない。第2に、財政出動、減税、土地の流動化などの実質的景気対策をやり、それと並行して4月からのビッグバンに備えることだ。バブルの清算も実質的景気対策も財政出動をしなければできないが、今は財政構造改革法で手足を縛ってしまっている。私は、仮に10兆円の経済対策をやるとしたら、3分の1は減税、3分の1はハイテクや通信事業等次世代の産業振興のための公共事業、それから3分の1はアジア経済の救済のために使うべきだと思う。今までの景気対策は国内にしかお金が回っていない。これをアジアも含めた循環を考え、アジアも助かるし、日本もそれにより良くなるようにもっていかなければならない。
財政、経済の再建に次いで外交・国防の建て直しが必要だ。残念ながら、最近、自分たちの国を自分たちで守るという気概が若者になくなってしまっている。米国、中国、EUという3極の中で日本が生き残るための戦略を考えていかなくてはならない。
それから教育だ。最近のオウム事件、官僚の汚職、少年のナイフ犯罪などを見ていると、戦後50年の教育は失敗だったと思う。日本国家とは何かというアイデンティティーがなくなってしまった。日本の教育は、戦前は大家族や地域社会が分担していたが、戦後はそういったものが崩壊し、みんな利己主義で自分のことしか考えなくなってしまった。やはり、これからは道徳教育の徹底、国際化時代に通用する人材の育成、真の意味でのエリート教育が必要だ。

池田行彦前外務大臣/
東南アジアの経済危機と今後の外交課題について
(4月3日政経懇談会)

[池田議員]

●東南アジアの経済危機
2月に自民党の東南アジア経済・金融調査団に加わり、インドネシア、タイ、シンガポール、香港をまわってきた。
東南アジアの経済危機に関しては、最近、日本の貢献が少ないという声が外国だけでなく、日本のマスコミの中にもある。しかし、日本国内の景気回復の実現による貢献ができないのは残念だが、実質的な施策を一番やっているのは日本だ。それが、国内外で十分評価されるよう努めなければならない。
我々が訪問した当時、一番の関心事はインドネシアがどうなるかということだった。為替の安定はもとより、企業の民間債務をどうするか、また、短期的な問題として、当面の貿易品、特に生活必需品や日本の現地企業などの部品調達をどうするかという問題があった。これは、早急な対応が必要だということで、ジャカルタから日本に電話して日本輸出入銀行の融資の活用を指示した。その他に、貿易保険の弾力的運用や700億円の円借款の追加などを決めた。
この自民党のミッションは、各国にアドバイスもできたし、日本の対策の策定にも直接役立つものであった。

●今後の外交課題
私が外務大臣に就任した当時(96年1月)、日本の外交は八方塞がりだった。当時、世界は大きく変わってきており、日本に期待される役割も大きく変わってきていた。それにもかかわらず、日本はそれ以前から、政治的に大変混乱しており、きちんとした対応をとろうにもとれない状況だった。冷戦構造の崩壊により、西側陣営も単に米国に追従すればいいという時代が終わり、各国が自分で考え、自分で行動する時代に入っていた。そこで私は日本の主張をきちんとするような外交を心掛けてきた。
そうした中で、日本外交の基軸を従来通り米国に置くべきか、それともアジアに軸足を移すべきかという議論がある。私は、日米関係を大切にしながらも、日本が独自に考えて行動する、場合によっては、米国にサジェストし、米国の考え方を変えていくということがあってもいいと思う。例えば、カンボジアやミャンマー、中国などをめぐる対応などで、ここ2、3年日本が独自に考え、独自に行動する形につながっていることをご理解いただきたい。
国連安全保障理事会の常任理事国入りについても似たような問題があり、かつては、日本が常任理事国のメンバーになって、一体どういう仕事をしてくれるのかという点で、なかなか各国の理解が得られなかった。しかし、最近、いろんな事柄で、日本の判断が必ずしも米国と同じでなく日本独自の主張があるということで、それなら日本の常任理事国入りを考えてもいいという雰囲気が各国の間に出てきた。

[質疑応答]

経団連側発言:
経済人にとって、中国の元の動向が大変心配であるが、この点をどう見るか。

池田議員:
2月に東南アジア各国をまわったときも、元の動向に対する関心が高かった。元を現在の水準で維持していくのは簡単なことではないと思われるが、中国は全国人民代表大会を経ても今まで以上に切り下げはしないと強調しいる。

経団連側発言:
日本として、元を切り下げずにやっていけるようサポートするということを意思表示すべきだ。

経団連側発言:
韓国の新政権をどう見るか。

池田議員:
あまりはっきりしたことは言えないが、金大中大統領は大変よくやっていると思う。日韓関係で言うと、特に、文化の面で、日本の週刊誌や映画の禁止を取りやめたが、これは韓国国民レベルにおける対日認識の是正につながることが期待できる。また、朝鮮の南北対話の進展も期待できると思う。


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