企業人政治フォーラム速報 No.46

1998年11月27日発行


今後の政局と国会運営について
/古賀誠自民党国会対策委員長
(11月17日政経懇談会)

[古賀議員]

■参院選の大敗と先の臨時国会

7月の参議院選挙は、改選議席が61、非改選議席が58であり、何としても69〜70議席を取り、参議院でも過半数を確保したいという意気込みで臨んだ。しかし、結果としては47議席と大敗した。現在、参議院における自民党の議席は104であり、過半数に23足りない(議長を除く)。

そういう中で、選挙後、私は国会対策委員長をおおせつかった。はっきりいって、先の臨時国会は、苦労の連続だった。参議院選挙の勝利により、民主党を中心とする野党に非常に勢いあったことも国会運営を困難にした。また、臨時国会では、金融の安定化が経済再生の第一歩であるということで、金融問題に一点集中したが、参議院選挙の大敗を受けて、参議院で荷崩れしないように衆議院段階で法案の調整をするというのが党の役員会での決定だった。そこで、野党が対案を出してくる中で、与野党の実務者レベルでの法案のすり合せを連日行ったが、かなりいい所まですり合せができると、週末に各党(特に野党)のトップがテレビで国民向けの発言をし、せっかく積み上げたものをぶち壊してしまうということが多々あり、これには非常に難儀した。

■国対のやり方も様変わり

私は国政にでて19年になり、主に党務を中心にやってきた。6代の国対委員長に仕え、10年間国対副委員長もやらせてもらい、国対には若干の自信を持っていた。しかし、今の国対は昔とは全然様変わりしてしまった。その最大の理由は、衆議院が中選挙区制から小選挙区制へ変更になったことだ。かつての中選挙区制の時は、野党第一党とどうやって話をし、国会を回していくかというのが国対の一番の仕事であった。しかし、小選挙区制では、野党第一党は、当面、次の政権をねらう政党であり、安易な妥協や合意は有り得ない。それを念頭に置いておかないと国会対策がうまくいかない、ということを先の国会でいやというほど思い知らされた。ここに、現在の国会運営の大変な難しさがある。

こうした中、金融再生関連法案については、民主党と公明党の協力で成立させてもらった。これに対し、旧国鉄長期債務処理法は自由党と社民党が賛成してくれた。また、金融機能早期健全化措置法案は自由党と公明党の賛成によって成立した。このように、法案によって賛成してくれる政党が違っており、これを部分連合とか、パーシャル連合といった言い方もあるが、これが先の臨時国会の実態であった。

■政権の安定のため、基本的な考えを共にする党との協力が不可欠

私たちは、実は、今後もこのようなことが続けていけるのだろうかと思い悩んでいる。衆議院の場合は解散があるので、もし衆議院で議席が足りないということであれば、解散するという手段があるが、参議院の場合は、解散がないので、早くとも6年、十分な議席を取るということを考えれば9年間は今の状態が続く。世の中の動きに機敏に政治が対応していくためには、パーシャル連合ではおのずから限界がある。何とか基本的な考え方を共にする、政策が近い政党と協力の枠組みを作っていく必要があると私自身考えている。先の臨時国会から次の臨時国会までの仕事は、この新しい政権の枠組みをどうするかということで、日夜このことで飛び回っている。いずれにしろ、政権を安定させることに全力をあげて取り組まなければならない。

■次期臨時国会について

金融システムの安定とともに、今度は具体的にどう経済を活性化させるかということが最も大切で、昨日(11月16日)、緊急経済対策を決定した。現在、野党の国対委員長と調整を進めているが、11月27日には国会を開かせていただき、総理のASEAN訪問の外交日程もあるので、12月14日には閉じたい。今度の臨時国会は非常に会期が短いので、第3次補正予算と財政構造改革法の凍結、あとは日韓漁業協定の3点くらいに絞った国会運営になるだろう。現在、大蔵省は、補正予算の予算書の策定を12月4日を目途に進めている。しかし、これでは国会日程がほとんどとれないので、予算書の骨子で委員会審議をすることを認めてもらえるよう野党の国対委員長にお願いしている。これは大方理解いただけると考えている。

[質疑応答]

経団連側質問:かつて、レイプハルトという政治学者が多角的協調的民主主義ということを言ったが、その際に必要なのは通年国会だということだった。外国では、かなりこの通年国会を行っているが、通年国会についてどう考えるか。

古賀議員:通年国会についての正式な検討機関は設けていない。しかし、これだけ国民の価値が多様化しており、メディアもある意味で政治を商品化している中では、将来的には通年国会を検討することは必要だと思う。しかし、その前提としては、国会法だとか、内閣法を見直し、例えば、今のように大臣がいなければ委員会も開けないということは変えていかなければならない。

経団連側質問:今度の緊急経済対策には、税のことがあまりはっきり出ていなかった。今度の臨時国会で税を扱わないとすると、通常国会で第4次補正をやらない限り、99年度予算成立後になってしまうと思うが、その辺をどう考えているのか。

古賀議員:税の問題については、自民党税調(税制調査会)、政府税調の議論が遅れており、申し訳ない。この問題については、手法などの工夫で、通常国会で処理しても1月にさかのぼれば同じではないか、という議論や、事務的な作業が非常に時間がかかる、という議論もあり、取り組みが遅くなったことは率直にお詫びしなければならない。いずれにしろ、臨時国会には税についてはご提案できないので、通常国会で取り組むことになる。
1つ問題は、所得課税の最高税率を50%に引き下げるという中で、所得税の課税最低額が特別減税による引き上げで、現在、491万円になっていることだ。これに手をつけないままでいいのか、党税調でも大議論になるのではないかと思う。何とか、もとの361万円に戻せないかということだが、そうするとその部分は増税になるので、そこをどう調整するかが問題だ。ただ、やはり課税最低額491万円は諸外国と比べてもあまりに高い。地方へ行けば、ほとんどが納税者ではなくなってしまう。


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