企業人政治フォーラム速報 No.49

1998年12月25日発行

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自由党との政策協議について
/丹羽雄哉自民党政務調査会会長代理
(12月17日政経懇談会)

[丹羽議員]

■自自連立の経緯と党首間の基本合意

私は、小渕内閣になってから、自民党の政調会長代理を務めているが、党の各部会からあがってくる政策をつめることと、野党との折衝が主な仕事である。特に、参議院選挙で大敗したことが原因で、野党との折衝が大きなウエートを占めている。
今回の自自連立は、夏のいわゆる金融国会の反省、教訓から生まれてきたものだ。自由党をあわせても参院で過半数に届かないものの、少しでも自民党の政策に賛成してくれる人の賛同を得ていかないと1本も法律は通らない。理屈や感情を言っている場合ではない。
小渕総理と自由党の小沢党首の間で、連立政権樹立に向けた基本合意がいくつかできている。1つ目は、副大臣制の導入、国会議員数、閣僚数、公務員数の削減問題などの政治行政改革、2つ目は、減税や消費税問題などの経済財政政策、そして3つ目は、国連軍への自衛隊参加問題などの安全保障政策の3分野だ。

■政治行政改革

自由党の政治行政改革の提案は、基本的には若干の時間差はあっても受け入れていくつもりだ。
衆参の国会議員50人ずつの定数削減は、民間も必至のリストラをしており、公務員も減らしていく中で、唯一、政治家だけが例外であるということでは国民の理解が得られない。これは、選挙制度そのものに関わる問題であるが、早急に議論を進めていきたい。
国家公務員の数を10年間で25%削減するというのは、小渕総理も10年で20%削減を決めており、これに5%上乗せするということで、現在政府が進めている現業部門のエージェンシー化を進めていけば達成できない数字ではないと考えている。
副大臣制の導入、政府委員制度の廃止については、まさに、立法府と行政府の関係のあり方に絡んでくる問題だ。立法府が本来の法案審議の機能を取り戻し、行政主導から政治主導への転換を図るためにも必要な措置だと考えている。
閣僚数の削減の問題は、小沢党首は連立政権発足時に20人を17人に減らせと言っているが、現在の1府21省庁の体制で削減することにどれだけ意味があるのか。2001年には新たに1府12省庁の体制がスタートするのであるから、それにあわせて実施すべきだと考えている
(注:12/19党首会談で閣僚数を18に削減することで合意)。

■経済財政政策

消費税の凍結問題は、党内で相当反発が強い。私も、消費税は少子高齢化社会を迎えて、年金や医療の重要な財源であるのだから、簡単に下げたり上げたりするべきではないと考えており、これには何としても反対だという態度を貫いている。
そこで問題になるのが、消費税の福祉目的税化だ。ちょうど、昨日(12/16)、年金の改正案をまとめたが、最近、年金と減税の問題を絡ませる動きが強くなってきている。つまり、今年の特別減税が来年は定率減税になることで、増税になる所得階層に対して、年金保険料の引き下げで配慮すべきだというものだ。そのために基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1へ引き上げろというのが自由党や公明党の主張だ。我々は、今は景気が悪いから、年金保険料の引き上げは凍結するが、それを国庫負担を2分の1に引き上げるときに解除すべきだとうスタンスに立っている。
自由党は、消費税を福祉目的化し、基礎年金、高齢者医療費、介護の順に充当し、最終的に全額を賄うよう主張している。しかし、現在の基礎年金の国庫負担分である3分の1は4.7兆円であり、これを2分の1に引き上げるにはさらに2.2兆円が必要となる。現在の消費税の国の取り分は7.6兆円だから、消費税を年金や高齢者医療、介護に充てると宣言しても何の意味もない。急に消費税を10%に上げるなどということは不可能なのだから、自由党ができないことをやれと主張するのは理解できない。また、医療や介護は無駄があったり、恩恵を受けられる人が限られているが、年金はすべての国民が等しく恩恵を受けられる。だから、私は、消費税は福祉目的税化するのではなく、まずは、年金目的税化するのが国民の理解も一番得られやすいのではないかと考えている。そういう中で、基礎年金の国庫負担は3分の1だが、それには消費税を充てるということを税制改正大綱に明記することにした。この問題は、自由党の理解が得られるようにもう少し議論しなければならない。

■安全保障政策

安全保障の問題については、来年の通常国会で最大のポイントになるであろう。小沢党首は、自衛隊の国連軍あるいは国連安保理決議に基づく多国籍軍への参加問題を持ち出している。国連軍はかつて1度も編成されたことはなく、多国籍軍は湾岸戦争のときに編成されている。政府の憲法解釈では、「憲法9条のもとで許される武力行使は、わが国を防衛するための必要最低限のものである」としているわけで、目的や任務が武力行使を伴うものれあれば自衛隊の参加は憲法上許されない。この問題は、年明けから十分に議論しなければならない。「汗は流しても、血は流さない」という基本的な考えにたって、これから自由党と協議していかなければならないが、これは大変難しい問題だ。

■消費を喚起するためには国民のライフスタイルの変更が必要

現在、緊急経済対策により何とか景気の下支えをしていこうとの状況だが、これをいかに民需に結び付けていくかが重要だ。
私の個人的な見解だが、日本人はもっと消費を喚起するようなライフスタイルに変えていかなければならないと思う。よく日本人は、老後が不安だから貯金をするというが、実際問題として、寝たきりの介護を誰がやってくれるかという不安はあるが、お金の不安がある人はそんなにいないはずだ。しかし、実際には老後に備えてお金をあまり使わず、そういう人ほどお金を貯めている。これは、個人の人生観にも関わってくるが、この少子高齢化時代では、子供にあまりお金を残さないが、その代わり子供を当てにしないという、つまり「残さず頼らず」という考え方が必要ではないか。20歳代、30歳代はいろいろほしいものはあるが、所得が少ない。40歳代、50歳代は教育や住宅ローンで家計は苦しい。60歳以上になると可処分所得は増えるが、そんなにほしいものがなくなってくる、というような状況だ。最近は、企業で退職金の前倒し制度なども出てきたが、これからはこうした高齢者があまり消費をしない構造を何とか変えていかないと、消費も盛り上がってこないのではないか。

[質疑応答]

経団連側意見:医療や介護には確かに無駄があるかもしれないが、これはいろいろと改革をしていけばよく、世代間の不公平という問題を考えると、基礎年金と高齢者医療、介護はナショナルミニマムとして消費税で賄うというのが一番公平なやり方ではないか。

丹羽議員:日本の社会保障はすべて社会保険方式だ。したがって、財源は、保険料と公費と自己負担の3つで成り立っている。確かに、自分の支出と給付が結びつかないことがあるのは事実だが、世代間の支えあいということの中において社会保障は成り立っている。保険料を取らないで、税で全額面倒をみるというのは生活保護の世界だ。

経団連側意見:そうであれば、世代間の負担の公平のためには、年金の給付を減らすとか、老人医療費の自己負担を増やすという方向にもっていくべきで、それをはっきりと打ち出すべきだ。

丹羽議員:まったくその通りだ。


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