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企業人政治フォーラム速報 No.58

PDFファイル版はこちら 1999年 7月 2日発行

今後の政治改革の方向性と、当面の外交課題について
/中山太郎元外務大臣
(5月21日政経懇談会)

5月21日の政経懇談会では、中山太郎衆議院議員・元外務大臣が、政治資金問題を中心とした政治改革問題、またガイドライン法をはじめとする安全保障問題と憲法問題との関連について語った。

[中山議員]

■政治資金規正法・政党助成法の見直しについて

細川政権において、金丸事件等の政界スキャンダルを受けて、「政治と金の関係をどうするか」という問題が議論された。その結果、政治資金の透明性を高めるために、政治資金規正法が改正され、政党助成法が制定された。政治資金規正法の改正により、企業の政治家個人に対する寄付、および政治献金集めのためのパーティーに対する資金提供に金額の上限が設けられた。施行後5年を経過した時点で、政治資金規正法については、企業等からの政治家個人に対する寄付を禁止すること、また、政党助成法については、政党や政治家に対する寄付等の状況を踏まえて、政党交付金の見直しを実施することを、それぞれの附則において定めている。なお「5年を経過した時点」とは今年末を指しており、これらの法律を改正するのか、もしくは現状のまま継続するのかという点に政治的な焦点が集まることになる。
政治資金規正法を改正した時点においては、個人による政治寄付の割合の増加をはかり、最終的には政党や政治家に対する企業等からの寄付を全廃し、企業と政治の利権関係を断ち切るというのが目的であった。しかし、現状はというと、個人寄付は根づいておらず、景気低迷等の影響により企業等からの寄付も大幅に減少傾向にある。このような中で、自民党所属の国会議員を対象に、政治資金に関するアンケート調査等を実施したが、その結果によると、匿名での寄付金額の上限を引き上げるべきだとの声が多く寄せられた。一方、政党助成法については、(国会議員の)任期途中での政党の「鞍替え」の問題をはじめ、さまざまな矛盾が指摘されている。従って、いずれの法律についても見直しが必要であるとの認識が大勢である。今後、政治資金問題については、前述のアンケート調査結果等をもとに、党執行部、および自由党等との調整をはかり、あわせて公明党とも協議の場を持ったうえで、10月を目途に、党としての方針を取りまとめる予定である。

■安全保障問題と憲法問題

今通常国会では、いわゆるガイドライン関連法案が焦点の一つとなった。この法案では「周辺事態」に対する自衛隊の対応が明文化されており、画期的な内容であるが、日本の安全保障問題を検討するにあたっては、日米安保条約をふくめ、「個別自衛権」と「集団自衛権」をめぐる憲法解釈の問題が、つねにその争点になってきた。
憲法はあらゆる法に優先する基本法であるが、現憲法が制定されてから52年が経過し、当時とは異なる状況のもとで立法が機能しており、憲法が現実の社会情勢に対応できなくなりつつある。戦後長らく、憲法改正問題はタブーとされてきたが、21世紀の日本のあるべき姿を考えるうえで、憲法について議論することは不可避であるといえる。そこで、2年前に自民、自由、民主、公明、改革の5党派の議員による、憲法問題に関する超党派の議員連盟を設立し、国会での「憲法調査常任委員会」の設置を検討してきたが、各党派間での調整の結果、衆議院に憲法発議権を有しない「憲法調査会」の設置を求めることを決定した。調査会の設置に関する手続きは、今通常国会中に完了する見込みである。この調査会の活動は、今後の日本を決定するうえで、非常に重要な問題を議論するスタート地点になると考える。

[中山太郎衆議院議員プロフィール]

なかやま・たろう
1924年大阪府生まれ。大阪医専(現大阪医科大学)卒業。医学博士。1968年参院初当選以来、参院3期、また1986年より衆院に転じ、衆院4期。海部内閣では外務大臣を務め、現在、自民党外交調査会長、政治改革本部長。



「近未来、政治からの挑戦」
/大野功統自民党政務調査会副会長
(6月10日政経懇談会)

6月10日の政経懇談会では、大野功統衆議院議員・自民党政調副会長が、ガイドライン関連法案成立の意義や、日本の税制の問題点とその解決方法等について語った。

[大野議員]

■ガイドライン関連法案成立の意味

私は常々、アメリカとは対等の立場で付き合っていく必要があると考えているが、残念ながら、アメリカでは政府高官をはじめ、日米両国が「対等なパートナー」であるとの認識は低い。日米安保条約においても、極東の平和と安全のために、アメリカは兵力、つまり「ヒト」を提供しているのに対して、日本は基地等の施設や物資といった「モノ」を提供しているに過ぎず、両国の関係には相互補完性は認められるものの、「ヒト」と「モノ」との関係では「対称性」がなかった。今回のガイドライン関連法案の成立は、いわゆる「後方地域」に限定されているとはいえ、日本も「ヒト」の派遣が可能となったわけで、アメリカとの対等な関係を築くための第一歩であるといえる。また、これを機に「国を守る」ということの意義を再認識し、「日本のアイデンティティー」についてきちんと考えておく必要があるのではないだろうか。

■日本の税制の問題点と税制改革への提言

現状の日本は、21世紀に向けた経済・社会の再構築の途上にある。現在、経済面については、産業競争力強化等の供給面からの問題提起がなされている。サプライサイドからの政策といえば、レーガン政権での経済政策、いわゆる「レーガノミクス」が挙げられる。レーガノミクスの効果については意見の分かれるところであるが、一般的に、サプライサイドの経済政策については、その効果が表われるまでに時間がかかるものとされている。したがって、早期にその効果を求めるあまり、財政支出等の拙速な政策を併せ実施することは得策ではないと思われる。
レーガノミクスにおける経済政策の柱として、税制改革が挙げられるが、日本では、従来から、包括的な対策を検討せずに、場当たり的に対応してきた点が最大の問題である。平成11年度の税制改革では、法人税、所得税ともに税率を引き下げた点については評価できるが、財政の問題との関連から、課税ベースをどのように設定するのかといったことを含め、将来に向けた税制の全体像を視野に入れた、総合的な検討を行う必要がある。単なる景気対策の観点から、税制を議論すべきではない。
戦後、日本人が「総サラリーマン化」しつつあるということがいわれており、それが日本の弱点であるとの指摘もある。これは、現行の税制に端を発する問題であるといえる。例えば、現在の所得税制には、限界税率が未だ高水準であることのほか、控除項目が多いといった制度上の問題点が数多く指摘されている。限界税率が高水準な税制のもとでは、所得の増加が税額の大幅な増額に直結し、「起業」による大幅な所得向上を目指すインセンティブを阻害することになる。この他、退職金に対する税制の優遇措置や、企業におけるフリンジベネフィットの存在も、企業への労働力の定着には役立つが、ベンチャービジネスの発展に対しては、阻害要因となりうる。このような現状を勘案し、所得税制については、(1)課税ベースの拡大をはかり、限界税率を引き下げる(2)退職金に対する税制の優遇措置を見直す(3)企業でのフリンジベネフィットに対する課税を実施する、といった改革が必要であると考える。

[大野功統衆議院議員プロフィール]

おおの・よしのり
1935年香川県生まれ。東京大学法学部卒業後、大蔵省入省。1986年初当選以来、当選4回。ガイドライン関連法案ついては、自民党政調副会長として、法案成立に向けて、各方面での調整に活躍。


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