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企業人政治フォーラム速報 No.65

PDFファイル版はこちら 1999年12月14日発行

「税制改革・社会保障制度等当面の重要課題について」
/津島雄二 衆議院議員
(12月 7日政経懇談会)

自民党税制調査会では、来年度の税制改正大綱の取りまとめに向けた検討が山場を迎えている。12月7日の政経懇談会では、自民党税制調査会小委員長の津島雄二衆議院議員を招き、税制改革に向けての課題や検討状況等について聞くとともに、意見交換を行った。

<津島議員>

◆ 来年度の税制改正をめぐる論点

日本経済を回復基調にのせるため、昨年からさまざまな施策が取られてきたが、その中でも税と金融再生2法案が最も有効であったと思う。これから予算編成とともに税制改正に関する議論を進めていくが、税については、昨年に比べて目玉となる大きなものが出ていない。正直、これでいいのかな、との気持ちもあるが、今後、さらに取れる施策があれば、逐次議論していきたい。

【確定拠出型年金】

年金税制に関しては、確定拠出型年金を導入するかどうかという点に尽きる。大詰めで難しい状況になっているのは、日本の年金税制が諸外国に比べて、有利になりすぎているとの指摘があるからだ。特に、拠出時、運用時、給付時の何れの段階でも課税されないケースもある。
確定拠出型年金の導入にあたっては、拠出時に所得控除を認めるかどうかという点が一番の問題である。我々は拠出時非課税という前提で要求しているし、大蔵省をはじめ関係4省に対しても、その旨を指示してある。現状、適格退職年金では従業員個人の拠出に対する所得控除は、生命保険料控除の5万円の枠内でしか認められていない。大蔵省は新しい控除を設けることなく、現状の生命保険控除で対応するべきであると主張しかねない。新しい控除を設ける場合には、これがその他の控除に連動して収拾がつかなくなる可能性もある。
このような厄介な問題があるため、先に企業拠出だけを認めて、個人拠出については時間をかけて検討すべきであるという議論もある。しかし、確定拠出型年金の導入の基本的な狙いは、人材流動化が進む中で、ポータビリティを持つ年金制度として、現在の確定給付型年金の恩恵に浴していない中小企業の従業員や事業主にも選択肢を与えようということである。したがって、企業拠出だけでの出発は受け入れ難い。

【法人税制】

まず、商法の会社分割法制導入に伴う措置については、法人税制上の措置は入念にしたいが、企業組織再編にかかる登録免許税をどうするかが大きな問題となっている。企業分割や再編は待ったなしであり、リストラのために持株会社をつくっただけで多額の登録免許税がかかるのはけしからんと言われているが、登録免許税については一定の基準のもとで公平に扱わなくてはならない。現在は産業活力再生特別措置法の適用分についてのみ軽減している。それ以外については、別途ルールをつくらないとならない。関係省庁である大蔵省、通産省に新しい特別措置法が提案できないか検討させている。
これに関連して連結納税制度の問題もある。昨年、2001年度を目途に導入を進めると決定した時にも、党内には根強い反対論があった。また、連結納税制度に関する全ての問題点が2001年までに解決され、制度が完結的に構築できるかについては、技術的な問題も含めてかなりの疑問があり、約束通りに進められるかどうか自信が持てない。ただ、当面、会社分割やリストラなどを進めている企業が困ることのないように、最低限のことはしなくてはならない。
地方税の外形標準課税については、自治省は経済情勢から考えても、来年度からの導入は難しいと考えており、大綱には導入に向けて前向きな姿勢を示してほしいとの主張をしている。

【相続税】

相続税については、現在は10%〜70%の累進税率である。アメリカに比べて高率であるとの指摘についてはその通りである。しかし、日本の相続税制では、アメリカのように遺産全体に対して課税するのではなく、それぞれの相続分に対して課税する。また配偶者非課税の存在も大きい。実際には、課税最低限がかなり高くなっている。
最高税率が70%という状態を早く解消すべきであるとは思っているが、今、解消すると、マスコミから高額所得者向けの減税との批判を受けかねない。現在、所得税については定率減税となっているが、平成13年にはもう一段の大改正を実施し、正常化しなければならないので、その時にあわせて実施してもよい。
また、一部の新聞で、相続税の延納期間を30年に延長するとの報道があったが、30年となると孫の代になってしまう。延納でごまかすのではなく、相続税の負担軽減で対応すべきである。

【固定資産税】

非常に具合の悪いことに、地価が下落しているにもかかわらず、まだ固定資産税が上がっていく、あるいは下がらないという事態が起こっている。これは固定資産税の制度がこのような事態を招来する仕組みとなっているからである。かつて、固定資産税の負担があまりにもマチマチであったので、課税評価額を時価(地価公示価格)の7割に統一して、不公平にならないようにした。そしてバブル期に、地価の急激な上昇が直ちに固定資産税の上昇につながらないような措置を取ったために、地価が下落しても、すぐには固定資産税が下がらないようになってしまったのだ。
現状、同じ自治体の中でも、地価が上昇したり、横ばいであったり、あるいは急速に下落した土地が混在しているため、今回の評価替えで全ての土地について引下げて済むものでもない。同一自治体内での不公平を解消しつつ、全体として引き下げる方向で工夫したい。

【経済新生対策等】

● 住宅ローン減税
今年の減税の中で、一番効果を発揮したのは住宅ローン減税である。しかし、平成12年末までの2年間の特別措置であり、期限が気になってきた。減税の適用については居住要件となっているため、業界からは来年に入ると、住宅投資にブレーキがかかるとの声もあり、何とか対策を打ち出したい。しかし、現在言われているように、居住要件を契約締結要件に変更する場合には、執行上の問題もある。他に良い方法はないかという点についても検討のうえ、必ず対策を打ちたい。

● 特定情報通信機器の即時償却
パソコンの即時償却も景気対策としては有効であった。党税調においても、まだもう少しの延長を、との声が大勢である。また、ミレニアム事業の中でインターネットに関連したイベントを計画している。若い人がインターネットに馴染むきっかけとなれば、パソコン等に対する需要も出てくる。そういう場合には特別措置を延長していく必要がある。

● エンジェル税制
将来のリスクを伴うが、新しい企業に投資しようという人のための、いわゆるエンジェル税制に関しては、現在は、株式の譲渡損を株式の譲渡益の範囲内でしか相殺できないが、これに対しては何らかの対策を打つつもりである。

● 有価証券譲渡益課税
平成13年から有価証券譲渡益については源泉分離課税の制度が廃止され、申告分離課税に一本化されるが、税率が26%のままで良いのかという問題もある。取得原価が確定しない場合には「みなし原価」が適用されることになるため、来年中での売却を勧める向きもある。一部には、取得原価が分かりにくい人への対策として、来年末時点の相場で再評価し、それに対して1%の課税をし、以降はそれを取得原価にしてはどうかとの声もあるが、よく考えるとおかしい。ともかく、譲渡益課税で思い切ったことをやるのは容易ではない。

【児童手当】

少子化対策は国の政策として正面から取り上げるべき時代になっているのに、児童手当の拡充で対処するのは適当でない。とりあえず、来年度でできることのうち、大きな財源を必要としないものを考えている。現在でも、児童手当は主として企業の負担によって賄われており、経済界に新たな負担を求める考えはない。



<経団連側からの要望>

津島議員からの説明に対して、経団連側からは以下の3項目を中心とした要望を行った。

  1. 企業組織再編に関する税制の整備
    1. 連結納税制度の2001年度における確実な導入
    2. 会社分割法制の導入に合わせた分割税制の導入
  2. 土地に係る固定資産税の引下げ
  3. 確定拠出型年金の2000年度における確実な導入
    1. 老後所得確保に十分な拠出限度額の設定と、既存制度(企業年金、退職一時金)からの非課税移行
    2. 特別法人税の撤廃

※ なお経団連では、ホームページ上で、平成12年度税制に関する提言「21世紀を展望した税制改革を求める」を公開している。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/pol242/index.html


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