1996年11月28日発行
PDFファイル版はこちら
■今回の選挙は、「二歩前進、一歩後退」と岩井教授岩井教授
冒頭、岩井教授から基調講演が行われた。テーマは、『総選挙で何が変わったのか、何を変えればいいのか』。その骨子は以下の通り。
■「カネがかからない選挙」に近づいた
国分氏は、「少なくとも解散から投票までについてはカネがかからなくなった」と述べた。ひと昔前と大きく違うのは、派閥中心ではなくなったこと。選挙前にカネがかかるという意見もあるが、これには地域差がある様子。さらに、組織票の問題について、「核の組織が堅くても広がりがないとダメ。色の強い組織では難しい小選挙区制で、組織票の効用と限界が明らかになった」と分析した。
また、岩井氏は、「お金の問題で重要なのは、“入り”よりも“出”。選挙で勝つために飲み食いをさせるということではなく、政策づくりやその研究のためにカネは使われるべき。政党助成金が政治資金のメインになるのだから、その使われ方を厳しく監視するべきだ」と主張した。
■投票率アップとメディア報道の相関関係
櫻井氏は、米大統領選との比較で、「日本の政策論議は弱い」とする。「選挙期間の差もあるが、情報提供も不十分。国民は本当に納得して選んでいるのか」と疑問を投げかけた。メディア報道の仕方については、「政治を面白く伝えていける、そしてイキイキとした情報を提供していける仕組みづくりが必要」と主張した。
また、今回の選挙で「本当に一人しか受からないんだ」と実感した人々が「候補者を生かすも殺すも自分次第」と認識することで投票率も上がるのではないかと提言した。
また、選挙報道についてマスコミの立場から「今回テレビはかなり自粛した」(国分氏)、「マスコミ報道が国益を損なうとの配慮は不要」(桜井氏)、という意見が出された。
■シンポジウムでは、会場の企業人からも多くの意見が出された。「区議会なみの選挙区で戦略的政治家が育つのか」「比例区当選者の党の鞍替えはいかがか」などの発言から、新選挙制度と今後の日本の政治改革に対する関心の高さが窺えた。
■新選挙制度は一歩前進
また、小選挙区比例代表制に対する批判については「政治改革が叫ばれたころは『小選挙区』という声が大勢を占め、疑義を差し狭む人間は『守旧派』とレッテルを貼られた。マスコミや財界で『今度の選挙制度は問題』と批判している人達には当時の言動を反省してもらいたい」と批判した。その上で、今回の新制度を「韓信の股くぐり」に譬え候補者が選挙民に哀願・哀訴する選挙になりがちなこと、さらに評判の悪い重複立候補はベテラン議員との妥協の側面もあったことなどを述べた。
また、従来の自社さ連立政権を「単独過半数政党を欠いた状況では民意に沿ったもの」としたうえで「連立により、自社両党が健全な価値観を共有することができるようになり、単独政権下では考えられなかった成果をあげた」と、2年間の連立を前向きに総括した。
■行政を変えるには体制づくりが必要だ
その上で行革戦略論・体制作りとして、