7月6日(金)、経団連会館12階ダイアモンドルームにおいて、企業人政治フォーラム第6回定時総会を開催した。引き続き、講演会を開催し、甘利明自由民主党筆頭副幹事長のご挨拶の後、政治経済研究所21代表近藤たけし氏が「構造改革に向けた政治の役割」と題する講演を行なった。また、講演の後、記念パーティが開催され、山崎拓自由民主党幹事長、森山法務大臣、尾身沖縄及び北方対策・科学技術政策担当大臣をはじめ、国会議員、有識者の方が多数参加した。
総会では、(1)2000年度事業報告案、(2)2000年度収支決算案、(3)2001年度事業計画案、(4)2001年度予算案、(5)役員の補充選任案、の5項目について、中村経団連専務理事から説明があり、満場一致で承認を得た。
日本全土を覆っている厚くて、高い壁を取り除くために、各地域の皆様方は懸命に努力されているが、はっきりとした成果としてなかなか現れてこない。この壁が経済、社会の両面で閉塞感となり、日本全土を覆っている。小泉内閣はこれを取り除いてくれるという、国民の期待感によって驚異的な支持率を得ている。しかし「聖域なき構造改革」を具体化する法案はまだ1本も審議されておらず、成立もしていない。勝負はこれから、夏から秋にかけての臨時国会である。
1980年代半ばの中曽根総理の頃から、構造改革の必要性は叫ばれていた。以降90年代の歴代内閣も、我こそは改革内閣と称していた。小泉内閣の前の森内閣もそうであった。我こそは改革内閣と宣言していたが、具体的な第1歩を踏み出すことが出来なかった。この10年間の政治の歴史を簡単に言うと、「総論賛成、各論反対」であった。そしてその議論の中で常に各論反対派が勝利を収めてきた。しかし、小泉内閣が「今度はやる」と、不退転の決意で望むのであれば、次の臨時国会は壮絶な戦いが繰り広げられ、大変な国会になる。しかし、その前に幸いにも、参議院議員選挙がある。“参議院議員通常選挙”と称されているが、これは通常の選挙ではない。臨時国会における議論を大きく左右する、正に21世紀最初の国政選挙にふさわしい、極めて重要な選挙になる。
本来のあるべき構造改革とは何なのか、という議論が日本国民のコンセンサスを得る形で煮詰まっていない現実がある。特に骨太の方針が発表されて以来、議論の混乱の一つは、「痛みが伴う」という言葉である。一体誰が痛みを伴うのか。その対象が中小企業、あるいは地方になるのではないか。日本経済を担っているのは中小企業である。そして、過去10年間、構造改革が進まない故に一番血を流し、痛みを感じてきたのも中小企業である。構造改革の基本は、日本経済を支える中小企業を中心として、経済全体が元気を出して行けるシステムを作ることである。
不良債権を処理することが構造改革を進めることにつながるという議論があるが、極めて短絡した議論である。後ろ向きの処理をやるのは必要なことであるが、それをもって構造改革と称するのは適切ではない。経済は生き物である。全てを切り離して不良債権の処理をやると、経済成長が伴わなければ、新たな不良債権が起こってくる。構造改革とは総合的なものであって、守るべきは守り、攻めるべきは攻め、攻守同時、並行的に進めていかなければならない。
また、中央対地方の議論も、地方交付税交付金の話がそのきっかけとなったが、これも単純な交付税の削減だけで構造改革ができるわけがない。地方財源をどうするのか、あるいは地方自治体のあり方が今のままで良いのかどうか、総合的な議論が必要である。単純に日本経済と一言でいうが、それぞれの地方経済の集積体が日本経済である。日本全土が同時並行的に、総合的な施策によって、将来を見据えた、大きな枠組みを変えることで発展するような政策を打ち出すことが本当の構造改革につながる。
骨太の方針の中に大変懸念される一項目がある。それは外形標準課税を導入するという項目である。今の世界の税制のあり方として、外形標準課税はできるだけ少なくしていく方向で議論されている。日本だけが世界に逆行した議論を構造改革の名の下において行なうのは、少し悪乗りしすぎではないか。やはり新しい税、増税を考える前に、歳出構造の見直しや、より重点的に考えるべきなのは、行政の改革、行政のリストラである。
セーフティネットは大変重要なことである。ポイントは3つある。
こんどう・たけし
1941年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、伊藤忠商事に入社。その後ロンドン駐在、伊藤忠アメリカ会社副社長など海外勤務を経て、92年に伊藤忠商事政治経済研究所長、98年に常務取締役に就任。2001年「今こそ日本を変えよう」と決意。