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企業人政治フォーラム速報 No.91

2002年1月9日発行

新年明けましておめでとうございます。
本年も企業人政治フォーラムの活動にご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

「経済界出身国会議員から観た小泉改革の行方」
(12月20日企業人政治フォーラム関西講演会〜企業人と政治の新たな関係〜)

 企業人政治フォーラムでは2001年12月20日、大阪において関西講演会を開催した。当日は荒木経団連副会長のご挨拶に引き続き、関西経済界を代表して小池大阪商工会議所副会頭にご挨拶をいただいた後、経済界出身である加納時男文部科学大臣政務官・参議院議員、近藤剛参議院議員から国政に対する熱い思いを語っていただいた。以下はその概要である。

● 加納時男文部科学大臣政務官・参議院議員

加納時男 文部科学大臣政務官・参議院議員

【平成14年度税制改正のポイント】

  1. 経済構造改革の推進
     連結納税制度の導入について、紆余曲折はあったが、企業の戦略を果たす上で非常に重要な項目であり、強く導入を主張した。最終的に4月以降に法律ができても4月から遡及適用することで折り合った。また、付加税は実質的な法人税アップと同じで企業再編を進める企業戦略にブレーキをかけるものと導入に強く反対したが、最終的には党税調の最高顧問の集まる会議で、4年間はきついが2年間なら飲んでくれということで導入が決まったことは残念である。
     その他にストックオプション税制の拡大、私立学校等の受託研究収入に係る非課税措置の創設、金庫株導入に対応した税制の整備もある。

  2. 中小企業関連
     中小企業投資促進税制の延長・拡充、中小企業技術基盤強化税制も延長とした。中小企業の事業承継に係る負担を軽くするため、自社株に係る相続税の軽減制度が創設された。交際費についても損金参入枠を拡大した。

  3. 外形標準課税は今後の課題
     外形標準課税については経済界の反対要望が通り、14年度からの導入が回避された。大綱では「各方面の意見を聞きながら検討を深め具体案を得た上で、景気の状況等も勘案しつつ平成15年度を目途に導入を図る」とされ、15年度からの導入が決まったわけではなく、様々な歯止めがかかった。

【エネルギー政策基本法案】

 エネルギー政策基本法案は、1年半前から自民党内で31回に亘った議論がとりまとまり、私が事務局長を務めた与党3党のプロジェクトチームで合意を得て、11月8日に衆議院に提出した。なぜ今エネルギー政策基本法案なのかというと、これまでは個別にエネルギー問題に対処してきたが、個別には正しくても全体を合計してみると全体像ができていない。アメリカでの電力自由化も結果として失敗している。やはり基本となるものをどこかで決めておかなければならない。そこで、安定供給、安全保障の原則と、環境の原則を盛り込んだ基本法が必要である。国と地方との関係について、地方自治体には、基本的な政策の方向について国のエネルギー政策を尊重してもらい、細部は地域事情を加味するとの趣旨を入れた。最後にこの法案は多数の省庁にまたがるので、関係機関の長、つまり大臣の意見を聞くことを義務付け、全省庁の参加を促した異例の扱いとした。これも議員立法だからこそ、盛り込めたと考える。

【構造改革は目的ではない】

 国会議員となって4年目を迎え、参議院自民党の副幹事長を始め、多数の役割を経験させていただき、今は文部科学大臣政務官もやらせていただいている。今回も法律の原案から法律を書くところまで全部やらせていただいたが、経済界の皆様の応援で国会議員になったからこそ異例の扱いで責任のある仕事をさせていただいたと思っている。今は構造改革といわれているが、構造改革が目的ではなく、日本経済の再生が狙いである。崖っぷちから落ちるのではなく、踏みとどまるための構造改革が必要である。



● 近藤剛参議院議員

近藤剛 参議院議員

【テロ関連3法成立には隔世の感がある】

 先の臨時国会がまず全力で取り組んだのはテロ関連3法であった。たまたま同時多発テロが起きた時、私自身ホワイトハウスを訪問中であったこともあり、この法案には特別の思いを持って審議に参加した。投票の際には、10年前の湾岸戦争時に民間企業の駐在員としてワシントンにいた時の思いが頭をよぎった。当時、日本は国際社会において大変苦しい立場に立たされたが、今回小泉総理のリーダーシップによってこの3法が成立し、新しい冷戦後の世界における日本の国際的役割を果たす基礎ができつつある。大変良い法律ができ、大きな1歩が踏み出された。
 ただ、残念に思う点は、中核となるべき後方支援法が今後の国際外交、協力外交において十分恒久的に使っていける法律であるにもかかわらず2年間の時限立法になったことである。また、審議の過程において各省庁の縦割りの領域争いが起きたことである。結果、例えば原子力設備などは自衛隊の警備対象外になってしまった。また国民の生命、財産に関わる重要な法案であるのに、党利党略が見え隠れもした。

【経済界と政治の意思疎通が益々重要に】

 来年は大変な年になる。先日発表されたGDP統計からみても、日本は既にリセッションに入っていることは明確である。この背景の中、1月21日からは通常国会が開催される。冒頭に第2次補正予算の審議があり、その後平成14年度予算の審議となる。日本国債のレーティングも下がり、国債発行30兆円の枠をはずせない。PFIの有効活用など、我々の構想力が問われる。2月には税制の抜本改革の議論が始まる。日本は財政・金融政策の幅が限られており、税制こそが経済再生の鍵を握っている。3月には京都議定書の批准法案が出てくる。このまま国内法が制定されると経済界だけでなく国民生活も大変な問題に直面してしまう。内容的に世界全体のためなのかどうか再考せねばならない。4月にはペイオフが解禁となる。金融市場に大きな混乱のないよう手立てを十分に尽くさなければならない。
 日本経済は、加納先生の言葉を借りると、正に「崖っぷち」である。このような中において、経済界と政治の関係、意思疎通の重要性が益々増している。私も皆様方のご支援をいただきながら、微力ながら全力を尽くしていきたい。


[加納時男文部科学大臣政務官・参議院議員プロフィール]
かのう・ときお 1935年東京生まれ。1957年東京大学卒業後、東京電力入社。1964年慶應義塾大学(通信教育課程)を卒業。その後経団連環境安全委員会地球環境部会長、東京電力副社長を経て1998年の参議院選挙で初当選。2001年文部科学大臣政務官に就任。
[近藤剛参議院議員プロフィール]
こんどう・たけし 1941年東京生まれ。1964年早稲田大学卒業後、伊藤忠商事入社。同社アメリカ会社副社長兼ワシントン事務所長など海外経験が豊富。1998年常務取締役等を経て、2001年参議院選挙にて初当選。

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