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企業人政治フォーラム速報 No.93

2002年2月15日発行

渡辺乾介氏

政治ジャーナリスト 渡辺乾介氏講演会
「国民の危機感が政界を再編する」

 2月5日、企業人政治フォーラムでは、政治ジャーナリストの渡辺乾介氏を招き、講演会を開催した。渡辺氏は、ケニー鍋島名で、昨年日本テレビ系列で放映されたドラマ「レッツゴー永田町」の原作者としても知られている。

【なぜ劇画か、なぜ秘書か】

 「票田のトラクター」など、劇画の形で政治を描き始めたのは、知りえたことを残しておくことは、ジャーナリストとしての使命だと考えたからだ。記事にはできないものでも、劇画という形でなら、残せるものはある。「票田のトラクター」などには、「独特のリアル感」があると言われるが、これは事実をつなげたフィクションだからだ。
 劇画に取り組みはじめたのは、ちょうどリクルート事件の頃だった。当時、頻発したスキャンダルに対して、政治家は「秘書が、秘書が」と連呼した。政治家自身に焦点を当てたドラマはあったが、「秘書」については、十分に理解されていない。また、政治家の中で秘書経験のあるものは多数おり、一体秘書は日ごろどのようなことをしているのかを示すのは重要と考えた。

【真紀子の答弁】

 一連の更迭騒動の中、田中前外相は、「今回の問題は外務省の問題ではない。政治不信を払拭するできるかどうかであり、真の問題は政治改革である」と国会答弁した。これは、日本が抱える本当の問題を内在したコメントだ。
 政治を見つめつづけて感じるのは、日本は欧米とエリートとのあり方が根本的に違うということだ。西欧の場合、王権を抑制しチェックするものとして官僚制が発達した。しかし、日本の場合には、富国強兵の下、官僚は国家に対する忠誠心と「自分達が国を動かす」という強烈な意識を持っている。彼らにとっては、国会や議会制民主主義というのは、自分達が考えている政策を実現するための手続でしかない。
 官僚は、「常に官は民に勝っていなければならない」と信じている。しかし、時代は変わり、今はこの意識だけが空回りしている。もはや官僚には、国家の経営能力が備わっていない。しかし、古い思想と制度だけが残り、結果として腐敗と低迷が続いている。
 日本は今、変化を必要としている。この時代に、日本の中核を担っているのは、未だに古い官僚制度だ。官と一体になっているメディアにも改革を進める力はない。

【小泉政権の行方】

 田中更迭により、90%もあった小泉政権の支持率は、約半分にまで落ち込んだ。まだ50%近い支持があるとの見方もあるが、森政権の支持率が20%から半分の10%に落ち込み、辞任したことを考えると、小泉政権も危機的な状況だ。
 経済状況は、かつてない程悪いとはいっても、国民の側には、まだ切羽詰ったものがない。このため、政治家や役人に対する批判も穏やかであり、政治を権力のゲームのように眺めており、まだまだ余裕がある。
 経済が行き詰まり、国民の側から湧き上がるように批判が高まる段階で、改めて有権者の判断が問われ、政界再編が実現すると見る。
 今後期待できるリーダーは、小沢一郎と石原慎太郎だ。両氏が手を組むかどうかは見えないにしても、両氏の動きが今後の政界のあり方を左右するだろう。


[渡辺乾介氏プロフィール]
わたなべ・けんすけ 1943年、新潟県生まれ。上智大学文学部新聞学科中退。著書に「あの人─ひとつの小沢一郎論」、「還流」、「首相官邸」他がある。ケニー鍋島名で「票田のトラクター」、「永田町仰天日記」などを原作。
渡辺乾介氏

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