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企業人政治フォーラム速報 No.94

2002年2月19日発行

太田昭宏 衆議院議員

当面の重要政策課題
(2月12日政経懇談会)

 2月12日の政経懇談会では、衆議院議員の太田昭宏公明党幹事長代行・国会対策委員長を招き、今次通常国会の重要政策課題や今後の日本のあり方について話を聴いた。

【経済活性化戦略に集中すべき】

今次国会では、

  1. 経済対策、
  2. 安全保障関係、
  3. 国会改革・政治倫理問題、
  4. 人権の問題、
  5. 行政改革、
  6. 医療制度等の社会保障の構造改革、
  7. 環境問題、
などが重要政策課題であり、継続案件を含めて100本以上の法律案、条約がある。
小泉改革は間口を大きく広げたと思うが、景気・経済に絞る時だ。国会論戦を聞いていても、景気対策という言葉と財政再建、経済構造改革、財政構造改革という4つの言葉がバラバラに使われている。一番重要なことは経済構造改革である。構造改革を持続的に成し遂げていくことと、景気対策とは若干、位相が異なるはずだが、同じような論議になってしまっている。また、これまで不良債権処理が改革の主軸になってきたが、前向きの経済活性化戦略が大事でこれに集中すべきである。
昭和30年、40年代は欧米に追い付け追い越せというキャッチアップ政策で、科学技術を軸とし、勤勉な日本人を土台にたくさんの良い仕事をしてきた。21世紀を迎えて、改めて国家の形、日本人の形、産業国家の形はどうなるのかを明らかにした上で、諸政策を断行し、インセンティブを与える意味での税制を論じなければならない。

【今国会の第2段階がスタートする】

この1週間くらいで、色々な潮目の変化が見られる。第1に小泉内閣支持率の低下である。第2に、1月18日に経済財政諮問会議から「構造改革と経済財政の中期展望」が出た。今までは不良債権処理という言葉が真っ先に出ていたが、この中期展望ではデフレ対策が前面に出てくる。新規国債発行額の30兆円枠も再来年度以降はふれていない。もう1つは、アメリカの一般教書である。ブッシュの一般教書は「悪の枢軸」という表現を使いながら強い路線を出してきた。イランや北朝鮮への動きに対しての日本としての対応が重要になっている。その他、医療制度改革や道路公団の問題等、様々な論議や変化の中での予算委員会の審議であり、いよいよ第2段階のスタートであると認識している。

【人権の問題】

今国会での重要課題の1つに人権の問題がある。マスコミ等の中で「個人情報保護法」、「人権擁護委員会」の法案が問題ともなっている。報道の自由と基本的人権がぶつかりあう、非常に難しいテーマである。公明党の考え方は、「報道、出版関係は自主規制でいくべきであり、国が取り締まるべきではない。」としている。選択的夫婦別姓法案や私たちの主張している永住外国人の地方選挙権付与法案もテーマになっている。国民全体で考えなければならない重要なテーマである。

【医療制度の抜本的構造改革とは】

医療制度改革について、診療報酬を引下げ、保険料や医療負担の増加を進めているが、高齢者医療等について本当に考えなければならない。保険を維持しながら毎年1兆円増えつづける医療費をどうするのか。構造改革とは正にここにある。医療保険制度の一元化と高齢者医療の抜本改革が必要である。65歳以上を老人として財源を確保するのは難しくなっている。60歳代の消費の拡大、新しいライフスタイル、雇用のあり方をトータルで考えていかなければならない。医療・年金・介護にプラスして、60歳代の雇用をはじめとする、これらのテーマを併せて考えなければ本当の構造改革にはならない。

【道路建設はメリハリが必要】

道路問題については、総延長9342kmを死守するとか、道路公団をどうするとかの議論が中心になってしまっている。しかしこの問題は国の形に関わることである。今までは北海道から沖縄までを全部1つに考えて、東京のような都市化、近代化を構想していた。この考え方は終焉を迎えている。現状は造りにくいが必要な、都市周辺の道路は高速道路を含めてできていない。造りやすい道路はできている傾向にあり、そろそろ全国一律ではなく、メリハリを付ける時期になっている。空港問題も同じでハブ空港は思い切りハブ空港にするべきで、各県にそれぞれ空港を造ってしまうとみんなで沈んでしまう。港湾も同じである。経済活性化と経済の推進力としてグローバリゼーションに勝てる戦略的な道路とライフラインとしての地方の道路を分けて、グランドデザインを作成し直すべきである。第三者機関にはこのような議論をまず、やっていただきたい。

【都市再生には産・官・学の連携が重要】

不良債権処理に関して、昨年4月8日の緊急経済対策等で雇用対策本部、都市再生本部の設置を決めたが、ようやく両輪がそろった。都市再生、民間による都市再生投資を促す法律案も出る。都市再生や住宅にかなり力を入れないと新しい需要が創出できないが、都市整備をしたその上に何の産業を置くかが重要で、産・官・学連携が大事になる。地域の中小企業の産・学共同技術開発を支援する補正予算を180億円組んだが、その応募が2,700件あり、競争倍率が7倍であった。これを10倍増やしても十分やりたいところはある。産・官・学が共同した都市再生時の産業の育成には、大いに予算をとるべきである。

【国家論はアイデンティティ論で】

戦前、戦後、今と考えると、新しい論議を始めるべき時である。全体主義であった戦前、個人主義であった戦後、そして今は脆弱な私生活主義に陥っている。軍国主義から平和主義になったが、一国平和主義が問題となっている。日本主義という時代であったのを戦前とするならば、戦後は国際協調主義になり、今ナショナル・アイデンティティがなくなってきている。また、思想統制から哲学不在へ、そして軽薄化の風潮をどうすれば良いかという今のステージがある。今までは戦前に戻すとか、戻さないとかの往復作業の論議であったが、今の現実的なステージの中に新しい対立軸が出てこなければならない。国家を考えるには、安全保障論ではなく、アイデンティティ論でなければならないが、あえて右ということでいえば、中曽根元総理などは今の問題意識の論議のステージの中から日本人と国家を考えている。従って、新しい論議のステージの中で左の壁をしっかりしなければならない。従来の古い左の壁が崩落した後の新しい壁を模索するのが我々でなければならない。日本文化は卓越した柔軟性を持っている。経済においても競争原理だけでなく、セーフティネットが様々な意味でビルトインされた社会とし、新しいナショナル・アイデンティティもそうした日本文化の卓越性の中に持っていかなければならない。


[太田昭宏衆議院議員プロフィール]
おおた・あきひろ 1945年愛知県生まれ。京都大学工学部大学院終了後、国家公務員上級試験に合格しながらも公明新聞の記者となる。1993年の総選挙で初当選。旧公明党副書記長、新進党・新党平和でも幹事長代理等要職を務める。現在は公明党幹事長代行・国会対策委員長として活躍中。

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