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企業人政治フォーラム速報 No.97

2002年4月4日発行

金子一義 衆議院議員

当面の政治情勢と政策課題
(3月26日政経懇談会)

 3月26日の政経懇談会では、自民党デフレ対策特命委員会事務局長の金子一義衆議院議員を招き、デフレ対策を中心に当面の政策課題について話を聴いた。

【ベクトルを合せたデフレ対策を】

我々は政府のデフレ対策がここ1〜2週間トーンダウンしていることに懸念を抱いている。自民党デフレ対策特命委員会の基本的な考え方としては、小泉総理の構造改革は支持する。しかし構造改革というアクセルだけを踏みつづけるとコースを踏み外す可能性がある。ブレーキを踏みながらアクセルを踏んだり、アクセルを踏みながらブレーキを踏むのではなく、コーナーではコースを外れないようなシフトダウンの意味でのデフレ対策が必要である。ノートでいえば左の1ページ目に構造改革があり、それを決して過去のものにせずベクトルを変えることなく、見開きの2ページ目でデフレ対策を実行する。つまり、二兎を追えずではなく、二兎を追っていきたい。

【税制・予算によるデフレ対策案】

税制による対策案の例を上げると、住宅贈与税の改正、低公害車取得時の税制軽減、PFIの対象となる民間企業への税制の優遇等を準備している。この中で例えば低公害車の取得時の課税の軽減については、税金で優遇すると自動車重量税の問題となり、道路財源一般化の議論にまともにぶつかる。道路財源の抜本改革の問題となると、その部分だけ対応が遅れてくる可能性がある。むしろ、予算措置で補助金のような形で進めたほうが良い。
もう1つ、都市再生についてであるが、対象の地区に対しての民間企業が再生計画を提言し、自治体が決定すれば、準商業地域などの用途制限を撤廃すると同時に民都機構の無利子融資の枠組みも作っていく。こういうものができると東京だけでなく、大阪を始めとする中堅の県庁所在地では事業活性化にもなる。また、現在でも予算措置は組んでいるが、多分不足するので、この予算措置も拡大してはどうだろうか。
また、税・予算の他に財投を使った計画造船などもデフレ対策に効果があると思われる。需給ギャップ・デフレの対策として、13年度補正のように各省庁のシェア配分で考えるのではなく、上記のような3〜4つのテーマ、住宅や低公害車というような特定の分野を取り上げ、税あるいは予算を組み合わせたデフレ対策を提言し進めていきたい。
この他に、所得税課税限度額の引下げや法人税については外形標準課税の問題、そして消費税率の問題があるが、国と地方の独自財源をどのように確保していくか議論を深めていくべきではないか。経済財政諮問会議では所得税、法人税の先行引下げの議論が出ているが、本当に今必要なのは、むしろ増税だと思う。ここへの道筋を明確につけることが大事だと思う。

【金融面からのデフレ対策】

金融面については、株式保有機構についての議論がある。持ち合い株の解消については、銀行についてはもちろんだが、生保についても市場に影響を与える恐れがある。従って、生保も株式保有機構の買取対象にすればどうかという議論をしたが、仮に2次ロスが出た場合の国民負担を考えて、議論が前に進まない。そこで、生保については株式の長期保有についてのメリットをもたせる方法を提案したい。今の仕組みでは株価が下がるとソルベンシーマージンが下がってしまう。そこで格付けが下がるような企業の株を売却せざるを得ない。しかし株価が下がるからまたソルベンシーマージンが下がるという悪循環になってしまっている。銀行の場合、BISという世界共通のルールがあるが、生保については各国で取扱が違うので、時価会計をやめずに長期間保有している株式を保有し続けることのできる仕組みを考えるべきではないか。

【ペイオフ問題】

4月1日からは何かあった時の日銀特融が、従来の特融ではなくなる。日銀が独自に4項目の基準を持ち、1番大きなものとして、全額返済できる担保、保証を政府に要求する。このときに政府はすぐに対応できるだろうか。昭和恐慌は台湾銀行の特融に対して、保証を求めている間に風評でおかしくなったことがきっかけである。現在も同じ話が起こり得ない。預金保険法の102条の適用について、長期間議論をすることなく即断が必要になるだろう。
また、市町村の普通預金も問題である。県のようなところは相殺という条項ができるが、市町村は金を借りることがほとんどない。従って、この1年間の状況を確認しながら、普通預金のペイオフ解禁については延長が必要となれば早めに議論を始めたい。

【住宅金融公庫はパイオニアになるべき】

住宅金融公庫の廃止を決めた時、総理から「やればできる。こっちが廃止すれば民間も動いてくれる」と言われた。確かに市中銀行は動いてくれているが、借主の信用リスク問題についてはスタートしたばかりである。
アメリカのように住宅金融公庫が保証し、銀行が貸したものを最終投資家に販売する長期証券市場は、日本では十分ではない。住宅金融公庫は今度同様の証券を6,000億円売り出す。今はある程度売れているようだが、金利が上昇したりマーケットが収縮した時どうなるのか。アメリカでも20年かかって超長期市場ができてきている。いわば住宅金融公庫の証券化支援業務が長期の証券市場を作り上げる役割を担い、この分野のパイオニアとして大きな機能転換を果たして欲しい。
税制面でも住宅ローン減税を現行方式からアメリカ型に切り替え、金利が上昇しても、ショックアブソーバーとして吸収できる仕組みに切り替えたい。


[金子一義プロフィール]
かねこ・かずよし 1942年岐阜県生まれ。66年慶應義塾大学卒業後、日本長期信用銀行入行、4年間のロンドン駐在を体験し、国際感覚を磨く。86年初当選後、厚生委員長、大蔵委員長、自民党国対副委員長等を歴任。現在は自民党副幹事長を務める。

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