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企業人政治フォーラム速報 No.98

2002年5月8日発行

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曽根泰教 慶應義塾大学教授

「政治の構造改革:首相のリーダーシップとは」
(4月19日企業人政治フォーラム 曽根 泰教 慶應義塾大学教授講演会)

 4月19日、新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)が発表した「首相主導を支える政治構造改革のあり方(2001年11月)」の取りまとめに中心的な役割を果された曽根泰教慶應義塾大学大学院(政策・メディア研究科)教授から、「政治の構造改革:首相のリーダーシップとは」と題して講演いただいた。

【21世紀臨調提言のポイント】

21世紀臨調では、以下の8つを提言し、昨年の11月19日に小泉総理に手渡した。

  1. 政府・与党に現体制を打破し「内閣一元」を実現。
  2. 「与党事前審査・承認慣行」の廃止。
  3. 政務調査会の役割転換。
  4. 事務次官会議による「事前承認慣行」の廃止。
  5. 会期不継続原則を廃止。
  6. 「政党の党議拘束」を根本改革し、実質的な議論を国会内に移行。
  7. 「内閣による一元的な政策運営」を整備。
  8. 政治主導体制を「内閣主導から首相主導へ」。

【小沢改革と橋本改革】

この半年はここ数年間の政治改革の中で最も動いている。日本の政治改革には2つの流れがあった。選挙制度改革、政府委員の廃止、副大臣、政務官制度の創設、党首討論を実施したのは小沢改革の流れである。もう1つの流れは橋本元総理の内閣機能強化のための内閣府創設、経済財政諮問会議の創設である。この2系列の流れがようやく結びついてきた。1990年代は失われた10年といわれるが、改革の10年でもある、色々な改革をやってきたが、そこに背骨を通す方法が必要である。内閣主導、首相のリーダーシップで背骨が通ると、制度の補完性で国会、選挙、官僚制までも変ってくる。

【政治主導の意味すること】

一般に政治主導という言葉は昔から使われており、「日本の政治家にはリーダーシップがない。首相にはリーダーシップがない。」といわれる。首相のリーダーシップについて政治家に、「政治主導とは何か」と質問すると、「与党主導、政党主導」と答える人が1番多かった。その次が「政治家主導」で、一番少ないのが「内閣主導」という答えであった。
しかし、最近の新聞の社説及び編集委員の書く記事では、「政治主導とは内閣、特に首相を中心とするリーダーシップのことである」と使われ始めた。端的な例として与党審査という言葉は半年前までほとんど知られていなかった。しかし、日本のオピニオンリーダーたちは、与党審査がかなり重要な問題でこれを議論することが日本の政策決定過程を変える中心テーマであると理解しているし、内閣与党一元論が何を意味するかも関心の的になっている。

【与党審査とは、事前審査とは】

現状では、内閣提出法案(官僚が立法過程で準備し、閣議決定する)はそのまま国会には提出できない。必ず自民党、あるいは与党連立協議に持っていき、与党が了承しないと法案を提出できない。そのため、自民党の中の陣笠議員、あるいは平議員といわれる人たちでも影響力を行使できた。しかしこれがあると、いかに首相や内閣のリーダーシップを発揮するよう内閣の中身を変えても結果的に首相がリーダーシップを発揮できないシステムになってしまう。これは森さんでも小泉さんでも同じである。大改革を実行しようとしても党の了承を得らないと、そこで政策は止まってしまう。

【内閣与党一元化】

与党と内閣の関係は難しい問題である。両者を一体として首相が集約する役割があるが、首相は通常内閣を仕切り、霞ヶ関をコントロールする。ところがもう1つの顔である総裁としては党をコントロールしていない。幹事長へ、あるいは与党の問題として問題を投げている。この背景として、議院内閣制と三権分立の考え方が入り組んでいることがある。日本は議院内閣制であって、アメリカ型の三権分立ではない。議員秘書の人数の問題についても、アメリカは三権分立を徹底しているので立法は議会でやるしかない。大統領にも法案提出権はない。従って議員に立法スタッフがつくのは当たり前である。霞ヶ関で立法している官僚を全部議会につけていると思えば良い。日本と同じ議院内閣制のイギリス型の三権分立は、国民が議員を選び、選んだ議員が首相を選び、内閣に大量の与党の議員が入り込んで、そこで官僚を使って立法を行なう。日本がイギリスと大きく違うのは、内閣が法案を提出して国会に行ってしまうと、内閣は何らコントロールできなくなる。イギリスの場合は内閣のメンバーが各委員会の理事等をやっているので、法案のプロセスをフォローできるしコントロールできる。したがって、事前審査は必要ない。

【事前審査廃止の意義】

与党の事前審査を廃止すると、国会で初めて聞く話が増える。そうなると与党修正が起きたり、与党議員の反発で否決されるかもしれない。そうなると国会が真剣勝負の場になる。つまり国会が活性化しないのは、国会議員の質が悪いとか、議員立法しないからと議論していたが、そうではなく、与党審査があるからである。しかしこの事前審査は部分均衡に陥ってしまった。当事者だけはみんなハッピーであるが、ここを脱する方法を考えなければならない。これを脱することで国会が活性化し、官僚機構が変り、政党が変る。何よりも首相のリーダーシップが生まれる。ただし、これを実行することを小泉首相が決断できるか。正式課題として自民党が実行できなかったら国会解散まで持っていき国民の真意を問うことができるかが大きな課題である。


[曽根 泰教 教授プロフィール]
そね・やすのり 1975年、慶應義塾大学大学院政治学科博士課程修了。1985年、同大学法学部教授、1994年より現職。ハーバード大学国際問題研究所研究員等を歴任。近著に「この政治空白の時代(共著、2001年)」他。



「企業人政治フォーラム東海地方講演会〜正念場、構造改革―経済界出身国会議員はこう動く」

企業人政治フォーラム東海地方講演会

4月26日、名古屋で経済界出身の加納時男、近藤剛両参議院議員をゲストに、中部経済連合会、名古屋商工会議所、愛知県経営者協会の協賛を得て、東海地方講演会を開催した。当日は、400名を越える企業人が参加した。
企業人政治フォーラムでは、全国各地の経済団体と連携を強化し、各地方での活動を積極的に展開することにしており、今年度中に全国主要都市(札幌、仙台、金沢、大阪、広島、高松、福岡他)での講演会を計画しております。多数の会員の方々の、ご来場をお待ちしております。



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