(公財)経団連国際教育交流財団日本人大学院生奨学生留学報告

研究とスポーツと私

武田 祐史 (たけだ ゆうじ)
2011年度奨学生
京都大学大学院からアメリカ/タフツ大学に留学

小さな卓球大会に出場したときの様子(左が筆者)

アメリカ、ボストン郊外にあるタフツ大学医療工学科の博士課程に留学している。日本を離れて新たな環境での留学生活は、時に厳しくつらいこともあるが、常に新鮮な気持ちで勉学に取り組めており非常に充実している。厳しい授業や試験、毎週おこなわれる外部からの研究者を招いたセミナー、研究資金獲得のための研究計画の執筆補助、ティーチングアシスタントなどは日本で学生を続けていては体験できなかった貴重な経験である。この文章を書いている2013年12月現在、すでに留学生活3年目だが、日本とは異なり学位取得には4年以上かかるため、引き続き研究に打ち込んでいる。

留学で得られるものとして、語学力や英語を用いた研究能力などを想像されるかもしれないが、実はこれらの向上は簡単なものではない。2年以上アメリカにいても、いまでも英語には苦労しているし、きっとこれからも苦労は絶えないだろう。分野によっても事情は異なるのだろうが、私の場合は実験とデスクワークが研究室にいる時間の大半を占め、人と話している時間はそれほど長くはない。英語を話すことで語学力を向上させるためには、アメリカにいても意識的な学習が必要なのだと思う。

勉学に勤しみつつも、いくつかのスポーツに取り組んでいる。スポーツはストレスの発散だけでなく、言語に頼らない要素が多いことからコミュニケーションのきっかけとしても役立っている。私は日本でもやっていた卓球やソフトボールを再開した。これらのスポーツを通じて、研究室にこもっているだけではけっして会うことのできない、学内外のさまざまな人たちと交流している。スポーツのおかげか、英語でのコミュニケーション能力が日本語でのそれに、少しずつではあるが接近しつつあることを最近実感している。

2年あまりの留学生活を振り返ったが、語学力・知識・研究力ともにまだまだ発展途上で、何も成し遂げられていないという気持ちが正直なところだ。スポーツも語学も研究能力も簡単には上達せず、成長を実感できるまでには時間がかかるものだが、小さな成長に気付くことがうれしく、それがモチベーションとなって苦しい中でも続けてこられたのではないかと思う。学位取得までの道のりはまだまだ長く険しいものとなることが予想されるが、一歩ずつ進めていき大きな目標を達成したい。その後は再生医療分野などの医工学研究の発展に貢献していきたい。最後に、この留学の実現を最大限支援してくださった経団連国際教育交流財団のみなさまに心から感謝の意を表す。

(2014年1月掲載)

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