(公財)経団連国際教育交流財団日本人大学院生奨学生留学報告

英国政治学留学―中間地点から振り返る

向山 直佑 (むこやま なおすけ)
2017年度奨学生
東京大学からイギリス/オックスフォード大学に留学

入学式(筆者上段左から2人目)
オックスフォードの街角
フィールドワーク先のカタールで

私は2017年秋より、オックスフォード大学政治国際関係学部に在籍し、博士号を取得して研究者となるために留学生活を送っている。研究分野は、国際政治学と比較政治学の中間領域で、博士論文では、天然資源の存在が、旧植民地が主権国家へと再編される脱植民地化の形態にどのような影響を与えたのかについて研究している。

天然資源をめぐる政治については、修士課程の頃から取り組んできたが、当地に来たことで自らの研究関心が大きく影響を受けていることを感じる。イギリスの国際関係論は、アメリカ他のそれと異なり、同学部にありながらも、政治学の一分野ではなく、それと同等の独立した学問領域として存在している。またオックスフォードでは、方法論的にも思想的にもテーマ的にも多様性が高く、研究科内にも、データ分析によって内戦研究を行う院生から、フェミニズム国際関係論に取り組む院生まで、幅広い関心を持つ仲間がおり、どのようなテーマであっても居場所があり、様々な角度からフィードバックを得られるのが魅力である。

留学開始からの最初の2年間は、私にとって地歩を固める期間であった。交換留学は経験したものの、学位留学は初めてだった私には、英語圏出身者や学部や修士からイギリスにいる留学生に囲まれた中で、埋もれずに実力を認めてもらうことは、簡単ではなかった。時々落ち込んだりもしながら、授業やセミナーでの発言、サマースクールへの参加、論文発表などに取り組んだ結果、2年経った今では、渡英当初に比べれば、一段階先に到達できたように思う。博士論文の研究は順調で、また修士論文を大幅に改訂して、初の単著査読論文を英文雑誌に掲載することもできた。今年度には、自ら発案して、学内の研究会を主催している。

上記のように書くと、ひたすらに研究に打ち込んでいると思われるかもしれないが、オックスフォードの最大の魅力は生活面の充実にあると個人的には思う。オックスブリッジに特有の「カレッジ」というシステムのおかげで、自分の研究科だけに人間関係が完結せず、他分野も含めた沢山の大切な人間関係を築くことができた。研究は人生の一部であり、博士課程の期間も人生の大切な期間であることを考えると、この大学で20代後半の時間を過ごせていることは、大変に恵まれたことだと感じる。

2年経った私の現在地は、まだまだ目的地には程遠い。これから質の高い博士論文を完成させなければならず、同時に博士課程の間にもっと業績を挙げたいとも思う。博士課程後の生き方についても、考えを深めなければならない。その意味では、この留学報告は、あくまで「中間報告」でしかない。ここまでの私の留学生活を可能にしてくださった、経団連国際教育交流財団には心よりのお礼を申し上げるともに、今後の行方についても見守って頂けたら、望外の幸せである。

(2020年3月掲載)

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