(公財)経団連国際教育交流財団産業リーダー人材育成奨学生留学報告

ケンブリッジ大学での生活

須田 健太郎 (すだ けんたろう)
2015年度奨学生
早稲田大学からケンブリッジ大学院に留学

留学先と研究内容

私は2015年9月から2016年8月までケンブリッジ大学院工学部地盤環境工学科の修士課程に在籍し修士号を取得した。修士論文は北海油田における天然ガス採掘に伴う圧力上昇のメカニズムの解明に関する研究を行った。本来、天然ガスを採掘した場合にはガス貯留層でのみ圧力変化が起こり、他の堆積層ではキャップロックとよばれる不浸透性の岩石の影響で圧力変化が起こらない。しかしながら、本研究対象であるガス油田においてはガス貯留層の上に存在するシェール層及び炭酸塩岩層で圧力上昇が確認され問題視されていた。そこで、フラクチャー発生に伴う浸透率と不飽和浸透特性の変化を考慮した力学連成気液2相流有限要素解析によって、圧力上昇メカニズムの解明及びガス採掘のリスク評価を行った。

留学中に印象に残ったこと

この1年間は毎日授業と研究に追われ、常に研究成果を求められるというプレッシャーの中で慌ただしく過ごしてきたが、振り返ってみると非常に充実していたと思う。何より、ケンブリッジ大学でしか出会えないような人々と出会い、語り合い、共に生活することで得た経験は私の人生の糧になるだろう。世界的に著名でありながら驕った態度など一切見せずに、私のような一学生に対しても真摯に耳を傾けて下さる教授、友人の中には13歳で大学に入学した天才もいれば、決して突出した能力が無くても1日4時間睡眠で乗り切ってしまう努力家もいた。大金持ちの上流階級出身の友人もいれば、母子家庭で貧困の中から這い上がってきたという友人もいる。彼らからは常に刺激を受け、多くを学んだ。時には自らの実力の無さを痛感して自信を失い、また時には周囲から信頼を勝ち取らなければ相手にすらされない厳しさも実感した。それでも自分は日本を代表しているのだ、という気概を持って奮起し、彼らに負けじと何事にも挑戦してきた。そして、落ち込んだとき、困難に直面したときには、文化や国籍、バックグラウンドの違いなど一切関係なく、いつでも親身になって手を貸してくれる人々がいた。彼らと共にフォーマルディナーやメイボールといったケンブリッジ大学独特の伝統に触れ、13世紀から建ち続ける美しいキャンパスの中で学んだ日々を生涯忘れることはないだろう。

留学終了後の進路と今後の目標

修士課程修了後は三菱商事株式会社に入社予定である。発展途上国のインフラ整備を志して大学に入学し、東日本大震災をきっかけに特に電力エネルギー分野に携わりたいと考えて、これまで天然ガス採掘、地熱発電、洋上風力発電等の研究を行ってきた。今後は業種を越えた組織で中心的役割を担い、事業主体となって海外発電事業に携わりたいと考えている。私が働く今後40年間は、世界人口の急増、新興国の経済発展、低炭素社会の構築、再生可能エネルギーのコスト低減等の観点から、電力エネルギー分野で急激な変化が訪れると考えられる。将来は、発電事業を通して新興国の経済発展に貢献にし、再生可能エネルギー導入の実現に携わることで、今後のエネルギーパラダイムシフトの一端を担いたい。

最後に、このような貴重な留学の機会を与えて下さった貴財団に心から感謝申し上げます。

Christ's Collegeのメイボールにてケンブリッジ大学の友人たちと(筆者は2列目一番左)
(2017年3月掲載)

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