(公財)経団連国際教育交流財団産業リーダー人材育成奨学生留学報告

2年間のフランス大学院生活

宍戸 萌香 (ししど もえか)
2016年度奨学生
慶應義塾大学からフランス/テレコム・ブルターニュ大学に留学

私は2016年9月から2018年9月まで、フランスのテレコム・ブルターニュ大学情報科学科の修士課程に在籍し、修士号を取得した。データサイエンスという分野を専攻し、近年様々な分野において生成している膨大なデータ(ビッグデータ)を分析するために必要な概念や手法を習得した。修士論文では、ディープラーニングという手法を用いて、テキスト情報を分析し、自動的に意味が似ているテキストを検出するための技術開発を行った。

海外生活経験のなかった私にとって、この2年間の留学は人生最大の挑戦であった。留学当初は非常に苦労したが、そのおかげで成長につながったと思うことについてまとめたい。

まず、言語の壁にぶちあたった。日本でフランス語の基礎を履修していたものの、留学当初は相手の話すことが全く理解できず、日常生活でも苦労した。学業面においては、フランス流討論に慣れず、自分の意見をうまく伝えられないミーティングが続いた。相手の話がひと段落した時に、発言をしようと律儀に構えていると何も話せずに終わってしまう。また、こちらの授業進度の速さに驚かされた。一科目につき、週に2回3時間の講義があり、学部時代では4ヵ月かけていたボリュームの内容が2か月で済まされる。研究活動に加えて、授業の予習・復習に追われる日々が続いた。

このような苦労があっても、留学して本当によかった、と思うのは、自己の大きな成長につながったことと、貴重な仲間ができたことからである。留学以前は、自分で「これは実現できない」と思って行動に移さないでいたことがあった。自分の限界を自分自身でつくっていた。この2年間の経験により、行動してみないと何が起きるかわからないという態度に変わったことで、より広い将来の選択肢が見えてきた。さらに、互いに切磋琢磨し、様々な挑戦を共に乗り越える世界各国からの友人ができた。彼らのおかげで日々の生活を楽しみ、また学業にも励むことができた。

修士課程修了後もしばらくはフランスに残り、研究室にて引き続き研究を行うことになった。修論研究の内容が評価され、このような機会をいただけたことを大変嬉しく思っている。共同研究先の企業とともに、AIを駆使した文章解析アプリケーションを開発することが目標である。今後も、データ分析をもとに様々な業界に応用できる技術を生み出すことに貢献していきたい。

最後に、このような貴重な機会を与えて下さった貴財団に心から感謝申し上げます。

修士課程最初の日に撮影。大学の敷地から徒歩5分で海にでる。(筆者は左から3番目)
(2019年1月掲載)

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