(公財)経団連国際教育交流財団産業リーダー人材育成奨学生留学報告

アメリカ現地留学と日本でのオンライン留学

長田 真穂 (おさだ まほ)
2019年度奨学生
上智大学からアメリカ/ジョンズホプキンス大学に留学

日本帰国後、オンライン留学時(筆者上段中央)
ペルースラム街でのコンサルプロジェクト
(筆者中央)

私は、2019年から2021年までの二年間、アメリカのジョンズホプキンス大学に在籍し、経営学修士を取得した。大学院では、医療業界におけるデジタル技術活用を基軸としたイノベーションを発生・促進させるためのリーダーシップとマネジメントについて学んだ。近年、デジタル技術と結びつきの弱かった医療業界が、IT企業と協働して、全く新しい製品・サービスを生み出す動きが活発化している。協働によって既存の技術では満たすことのできなかったニーズへ対応することで、多くの人々の生活を向上させることができるからだ。

一方、協働の過程で直面する様々な問題や、産業・文化・言語・地理的な枠を超えた協働ノウハウの欠如によってこの取り組みが失敗に終わることも多い。そこで、ヘルスケア組織とIT企業の協働を成功させるために、現在の医療組織が持つ課題と、それを解決に導くためのリーダーシップとマネジメントについて研究した。

最も印象に残っているのは、新型コロナウイルスのパンデミックが発生した直後に参加したプロジェクトである。全ての授業とプロジェクトがオンラインに切り替わる中で、二年目に入る頃には帰国することになった。せっかくの現地留学が、日本からのオンライン留学になってしまったために落胆した。そんな中で経験したのが、スマートフォンを使った高度管理医療機器のコンサルティングプロジェクトだ。デジタル技術に関する知識の少ない医師達と、逆に医療知識のない技術者達が協力して、MRI以上の精度で手軽に脳梗塞を検知できる技術を開発した。私のチームでは、その革新的技術を多くの人々に使ってもらうために、リーダーシップと組織マネジメントに関する分析を行った。完全なリモートプロジェクトだったので、普段の連絡を非同期にして、会議前にはその目的と課題をテキストベースで明確にした。それぞれが時差を考慮して、効率よく話し合いできるように事前準備を綿密に進めたことで、対面同様の濃い意見交換と深い分析ができたと感じる。なによりも、パンデミック下という想定外の厳しい環境の中で、様々なアイデアと工夫を即座に実行に移せたことに大きな達成感を覚えた。振り返ってみると、このオンラインプロジェクトが最も印象に残るイベントであった。困難な状況においても冷静に現状を分析し、失敗を恐れず戦略的に挑戦し続けることで現状は好転させられるのだと身をもって感じることができたからだ。この他にも同窓会を設立したり、ペルーのスラム街に1ヶ月滞在してヘルスケアNGO団体のコンサルティングをしたりと貴重な経験ができ、留学では多くのことが学べた。

卒業後は、大学院で培った知識と経験を使って革新的なデジタルヘルスケア製品の市場導入に貢献したいと考えている。私自身が「産業リーダー」として成長し、日本経済の成長戦略をサポートすることが目標だ。

私の選択を全面的に肯定し、応援してくださった経団連の皆様に心から感謝申し上げます。

(2021年10月掲載)

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