(公財)経団連国際教育交流財団産業リーダー人材育成奨学生留学報告

アメリカからアフリカへ 〜現場から取り組む公衆衛生と開発研究〜

内山 歩美 (うちやま あゆみ)
2022年度奨学生
東京外国語大学からアメリカ/ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院に留学

卒業式のライブ中継映像のクリップ(筆者右)
ケニアの研究チームとの集合写真(筆者右)

私は、2022年から2024年までアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院に在籍し、公衆衛生学修士号を取得した。大学院では、疫学や生物統計学などの公衆衛生学の基礎科目、母子健康と性と生殖に関する健康についての選択科目、そしてプログラム評価の専門コースを履修した。多くの授業課題が低中所得国におけるケーススタディを用いた実践的なグループワークであった。そのため学術的な理解にとどまらず、多様な文化背景や職業経験をもつ学生たちと協働するためのコミュニケーション能力を高めることができた。卒論研究では、バングラデシュ、コロンビア、ウガンダにおけるジェンダー規範を定量化するというテーマで、携帯電話を用いた全国サーベイ調査の量的分析を行った。

また2年次には、ケニアの首都ナイロビに半年間研究滞在する機会に恵まれた。スラム地帯におけるデジタル技術を活用したパートナー暴力の予防・介入に関する研究に携わった。最も印象的な活動は、質的調査に向けた現地研修の計画・実施を任されたことである。ケニアには交通機関の乱れや政治的干渉、プライバシーを確保しにくいトタン屋根の建物など、質の高い研究をするための障壁がいくつもある。研修では土地柄をよく理解している現地チームが主体となり、これらの困ったシナリオを用いて共に課題解決を行った。データ収集ひとつとっても、先進国の人間が作成した研究計画と現地での実現可能性の間にギャップが生まれることが多々ある。研修を通じて、チーム内の理解の不一致を乗り越える面白さや、現地チームのキャパシティ強化や信頼関係の構築に貢献することのやりがいを感じた。また現場に身をおき開発研究に取り組むことの重要さを実感した。

最後に卒業後の進路について報告する。アフリカの開発研究を専門とするコンサルティング会社に就職し、シエラレオネに駐在し西アフリカ地域の公衆衛生や教育分野の課題解決に携わることとなった。社会開発の分野で活躍する日本人人材となるため、世界で通用する質の高い教育を受け、国際的に活動する団体や専門家とのネットワークを築き、日本では得られないフィールド経験も積むことを目標としてはじめた留学生活であった。奨学金を頂いたおかげで金銭的な苦労に圧倒されず、夢に向かって学生生活を全うできたと思う。改めて、2年間にわたる経団連国際教育交流財団の皆様の温かいご支援に心より感謝を申し上げたい。

(2024年7月掲載)

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