「PE(Policy Evaluation:政策評価)モデル」による日米両国を中心とした経済予測に引き続き取り組み、更新データが毎月発表される都度、ホームページに新たな予測結果を迅速に公表して広く参考に供する一方、金融・経済問題の分析に活用し、シンポジウム(第28回)等において、わが国経済復活の兆しを逸早く示した。
資本市場の整備等、わが国経済の活力蘇生に向けた諸改革について検討を行ない、シンポジウム等(第26回)にてわが国の政治経済システムの問題点を提起した。特に郵政事業改革については、シンポジウム(第30回)等で重点的に取りあげた。
また、インターネット上に構造改革特区支援サイト「みんなの特区」を開設(8月)して関連情報を広く提供するとともに、シンポジウム(第29回、第34回)を開催し、「特区」の今後の可能性等を示した。なお、日本経済新聞の「ゼミナール」欄に、当研究所名による連載記事「『改革特区』が拓く」が掲載された(25回、1月上旬〜2月上旬)。
さらに、高付加価値を生み出し、雇用を創出する等、わが国経済の活力の源となり得る新たな産業・企業像の探究を開始した。
11月上旬の総選挙に先立ち、各種データを地域分布・時系列変化等を踏まえて地図上に明示する「デジタルマップ」等により、わが国の政策課題についての研究を進めるとともに、同選挙結果を分析し、各々シンポジウム(第32回、第33回)を開催してその成果を発表した。
2000年度から実施している台湾経済研究院(台湾の民間シンクタンク)との知的研究交流の一環としてシンポジウムを共催(於 台北、非公開)し、台湾の政治経済外交を含む東南アジア情勢について忌憚のない意見交換を行なった。また、同シンポジウムの前後に台湾官民の要人・専門家と率直な意見交換の機会を得た。
その他、欧米、中国等の有識者・専門家と適宜知的交流を行なった。
イラク復興支援のあり方、イスラム諸国における新たな経済秩序の構築等について検討を進め、シンポジウム(第26回)等にて課題を指摘した他、重症急性呼吸器症候群 (SARS)の及ぼす影響の重大性につき、シンポジウム(第27回)等にて注意を喚起した。
また、米国の財団「ジャーマン・マーシャル・ファンド(GMF)」が主催する国際会議「貿易と貧困に関するフォーラム(TPF)」に、豊田当研究所会長を団長、田中理事長を運営委員とする日本代表団を編成して参加した(第1回全体会議は5月にイタリア・ヴェニス、第2回全体会議は3月にベルギー・ブラッセルにて開催)。
TPFには、日・米・欧州連合(EU)・インド・ブラジル・南アフリカの5カ国1地域から政治家・労組指導者・実業家等が参加し、グローバルな貿易や投資が世界の貧困撲滅に資するとの観点から、特にWTOドーハ・ラウンドの側面支援を目指して討議が行なわれ、第1回全体会議後には、6名の共同議長連名による提言をWTOカンクン閣僚会議(9月)に先立って公表した(5カ国1地域各々の団長全員が共同議長)。第2回全体会議では、農業を中心とする貿易面での改革、多国間・二国間援助等に焦点を絞った提言を取りまとめて発表した。なお、TPFにおけるWTOへの取り組み等については、シンポジウム(第31回)にて取り上げた。
TPFの第3回全体会議は2005年4月上旬に名古屋にて開催が予定されており、当研究所では、今後の討議の深化に向け、貿易と貧困のみならず、貧困がもたらす新型感染症の流行拡大や環境破壊の深刻化等についても検討を開始した。