日本経団連では、1980年代後半から「企業の社会貢献」を企業と社会とのパートナーシップと位置づけて推進してきた。2000年代に入り、企業の社会的責任(CSR)への取組みが強化されるようになると、各社における社会貢献の位置づけは変化し、CSRの一環として推進する傾向が強まった。CSRとの関係で「わが社の社会貢献はどうあるべきか」という問いへの解を見出すことは、多くの企業に共通する課題となった。
社会貢献推進委員会では、各社の実務担当者を中心に、事例や実績について情報交換し、新たな活動領域の発掘や推進方法の検討を行ってきた。そして、今般、検討の成果を『CSR時代の社会貢献活動〜企業の現場から』(日本経団連出版)として出版した。検討過程では、NPOの基盤強化や企業との連携を促進する立場から活動している日本NPOセンターや国際協力NGOセンターとも意見交換しながら、お互いの活動に活かしてきた。
そこで、書籍の出版にあたり、日本経団連、日本NPOセンター、国際協力NGOセンターの三者による社会貢献シンポジウムを開催し、持続可能な社会に向けた企業とNPOの対話や協働のあり方などについて幅広く討議した。
7月31日(木)10:00〜17:30
経団連会館
(社)日本経済団体連合会
特定非営利活動法人 日本NPOセンター
特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)
企業の担当者やNPO関係者参加者など全国各地から385名
第1部:CSR時代の社会貢献活動 | |||
10:00 | 開会 | 古賀信行 | 日本経団連社会貢献推進共同委員長 野村證券(株)会長 |
10:10 | 記念講演 | 山本 正 | (財)日本国際交流センター理事長 |
<記念講演要旨>
最近、企業とNPOが対等な立場で意見交換しており、企業の社会貢献活動も本格的になってきている。企業が社会貢献活動をさらに深化させる上には、NPOの協働が重要だが、両者の協働を促進するには3つの課題がある。第1は、企業とNPOとの協力について、その意義や価値が、企業経営者も含めて企業内で十分理解、共有されていること。第2は、組織内外を刺激して動かすためのカタリスト(触媒)の存在。第3は、協働に向けた信頼関係を築くことのできる対話の場である。 また、地球的課題の解決には、企業とNPOとの民間としての協働をベースに、政治・行政・メディアなどセクターを越えた協力へと発展させていくことが有効である。 | |||
10:40 | パネルディスカッション | ||
テーマ: | 持続可能な社会づくりに向けた社会貢献活動とは | ||
進行役: | 嶋田実名子 | 日本経団連社会貢献担当者懇談会座長 花王(株)CSR推進部長兼社会貢献部長 | |
パネリスト: | 道傳愛子 | NHK解説委員 | |
青木 滋 | (社)日本自動車会議所企画部長 | ||
東 富彦 | 日本電気(株)CSR推進本部社会貢献室長 | ||
青木氏は、本田技研のビーチクリーン活動と住友化学の蚊帳の事例を紹介しつつ、本業と社会貢献活動の融合について、各企業が自らの得意分野で社会的課題を解決することが効果的であり社会全体でも効率が良いと指摘した。
東氏は、NEC社会起業塾やIT分野での包括的な支援策を紹介しつつ、社会起業家精神の醸成やソーシャル・インクルージョン(社会的包括)の大切さを唱えた。また、企業とNPOのパートナーシップを構築するためには、優先的に取り組む社会的課題を見つけ、両者にとって価値の高いプログラムを作るなど協力事例を積み重ねていく必要があると述べた。 道傳氏からは、自身の取材体験をもとに、国際社会から期待のあるジャパンブランドを効果的に発信していくこと、人間の安全保障の視点を持つこと、そして継続的な社会貢献活動をすることの重要性について発言があった。 | |||
11:50 | 挨拶 | 佐藤正敏 | 日本経団連社会貢献推進共同委員長 1%クラブ会長 (株)損害保険ジャパン社長 |
第2部:NPOと企業の対話フォーラム | |||
13:00 | 分科会−協働事例研究 | ||
分科会A「海外で協働する」 | |||
事例提供者: | 菰田雄士 | 日産自動車(株)グローバルコミュニケーション・CSR本部 グローバルブランドコミュニケーション部スタッフ | |
関 尚士 | (社)シャンティ国際ボランティア会(SVA) 事務局長 | ||
コーディネーター: | 金田晃一 | (株)大和証券グループ本社 CSR室専任担当 | |
2004年12月に発生したスマトラ沖地震の被災地支援として実施された、日産とSVAの協働事業「移動図書館プロジェクト」をもとに、海外で活動を行う日本に拠点のあるNGOと企業の連携の可能性について議論した。同プロジェクトは、日産の人道支援や絵本などの分野における活動の蓄積や、これまでに築いてきたNGOとの信頼関係が基礎となった。その上で、車両提供という本業を活かした支援形態と、SVAの活動がかみあった。相互理解や両者の専門性など対等な立場での協働につながる要素を確認しながら、グローバル社会における対話と連携に基づく、現地に受け入れられる活動のあり方について議論を深めた。
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分科会B「NPO→企業、企業→NPO。人がつなぐ社会貢献プログラムの新しい可能性」 | |||
事例提供者: | 牧文一郎 | アサザ基金顧問、元(株)損害保険ジャパン副社長 | |
木村真樹 | (株)デンソー 総務部企画2室DECOポン事務局スタッフ コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事 | ||
コーディネーター: | 水谷 綾 | 大阪ボランティア協会 事務局次長 | |
企業を退職後、NPOへと移った牧氏は、資本の理論で活動している企業人にとって、革新的なことを進め、社会が変わるという夢を持ち、壮大に生きることができるNPOでの経験は大いなる刺激になると述べた。NPOがミッションを成し遂げるためには戦術と戦略が不可欠であり、企業人が培ってきた経験を活かすことで力になれると、人材交流がもたらす可能性を示唆した。
NPOを設立し様々な形で活動を行う中で、デンソーへ入り込んだ木村氏は、デンソー独自の社員に対する環境意識啓発制度「DECOポン」を導入した。立ち上げた。 企業からNPO、NPOから企業へと入り込んだ人材が触媒となり、社会貢献プログラムの新しい可能性が広がっていくことが示された。 | |||
分科会C「循環型社会を目指す、NPOと企業の協働−地域を広く巻き込む」 | |||
事例提供者: | 永井寛子 | スペースふう 代表理事 | |
長澤利久 | (株)はくばく 会長 | ||
コーディネーター: | 鹿住貴之 | JUON(樹恩)NETWORK 事務局長 | |
地域活性化、女性の自立を目的として、環境・福祉・教育・文化をキーワードに山梨県増穂町を拠点に、リサイクルショップの経営から始まったスペースふうは、リユース食器レンタル事業について、地元企業のはくばくに協力を持ちかけた。長澤氏は、スペースふうの環境問題への取り組みに対する熱意と志に動かされ、資金提供だけでなく経営ノウハウについて一緒に考えるとともに、県内企業経営者に声をかけて支援の輪を広げた。
一地方都市でNPOと企業の協働として始まったリユース食器レンタル事業は、全国各地に同じ思いを持つ人々にも広がってきている。 | |||
15:15 | フォローアップ・セッション | ||
テーマ: | 社会貢献活動を社会につなぐとは | ||
パネリスト: | 下澤 嶽 | 国際協力NGOセンター事務局長 | |
田尻佳史 | 日本NPOセンター事務局長 | ||
長沢恵美子 | 日本経団連1%クラブコーディネーター | ||
共催三団体のコーディネーターが、「持続可能性」の環境から社会への領域の広がり、ISOにおけるあらゆる組織の社会的責任に関する規格づくり、国連ミレニアム開発目標に関する関心の高まりなど最近の動きを踏まえて、企業やNPOから寄せられる相談内容を紹介しながら討議した。
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16:15 | 挨拶 | 片山信彦 | 国際協力NGOセンター副理事長 ワールド・ビジョン・ジャパン常務理事・事務局長 |
山岡義典 | 日本NPOセンター代表理事 | ||
16:25 | 名刺交換会 | ||
17:30 | 閉会 |