ネットワークを通じたコンピュータ・システムへの不正な侵入(不正アクセス)を防止することは、企業活動や社会活動の安全、さらには国際的な組織犯罪を阻止する観点から重要な課題となっている。このほど、警察庁ならびに郵政省が「不正アクセス対策法制」に関する考え方を公表し、パブリック・コメントを求めているが、これは意思決定過程の透明化という観点から、高く評価できる。不正アクセス対策法制に関する現時点での経団連の見解は、以下の通りである。
ネットワークの安全性・信頼性の確保やコンピュータ犯罪の防止等を図るためには、不正アクセス対策法制は不可欠である。関係省庁は、一本化された政府案の策定に向けて検討を進めるべきである。
不正アクセスを防止する観点から、電気通信回線を通じて、アクセス・コントロールが講じられている電子計算機ならびに電子計算機機能を備えた設備に、不正アクセスする行為を行った者に対しては罰則を科すとともに、不正アクセスを助長する行為を排除する措置を講ずべきである。
不正アクセス対策の法制化にあたっては、次のことに留意すべきである。
なお、今後とも日本政府は、いわゆるハイテク犯罪に関する国際的な協力体制の構築に向けてより一層取り組みを強化することが期待される。
不正アクセス防止に向けた民間の取り組みについては、法律において具体的に義務を定めるのではなく、技術革新への機動的な対応や、業種業態の実態の反映が可能で、民間の自助努力を促すものとするのが望ましい。通信ログの保存は、すでに多くの企業等が行っており、捜査当局は必要な時には刑事訴訟法の手続きに従って、保存された特定の通信ログの提供を求めることが可能である。不正アクセスを発見した際の届出についても、民間の自主的な判断に配慮することが望ましい。
行政庁の要請等に基づき通信ログを保存する場合には、プライバシー、通信の秘密等の確保に関して刑事法、民事法ともに責任を問われないことを明確にする必要がある。
民間に対する不正アクセス対策への支援については、既に民間のビジネスとして行われており、政府には、民間の不正アクセス対策がより効果的となるよう、民間では入手できない情報の提供等を行うことが期待される。
民間における不正アクセス対策に関する自助努力を支援するため、税制等の措置を講ずることが望まれる。
関係省庁との連携を密にし、不正アクセスの防止や捜査等の面で必要な協力をしていく。