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さらなる構造改革と企業の責任

〜日本経団連会長新年メッセージ〜

2005年1月1日
(社)日本経済団体連合会
会長 奥田 碩

はじめに

わが国経済は、世界経済の拡大に加え、小泉構造改革や企業の“攻めの経営戦略”が結実し、回復基調で推移してきたが、不安定な為替や原油価格の上昇などもあって、先行き楽観を許されない状況となっている。
加えて、わが国は、地球環境問題などのグローバルな課題や、人口減少社会の到来などの国内問題に備える必要があり、10年、20年先を見据え、大胆かつ着実に布石を打っていくことが求められている。とりわけ、活力の源泉である企業が、その能力を最大限に発揮できるよう、法律・制度の見直しを含めた環境整備が急がれる。また、国民が新たな安心を得られるよう、税制・財政・社会保障制度の一体的改革に取り組むことも重要である。
そうした観点から、日本経団連は、構造改革を旗印に掲げる小泉内閣を引き続き支持する。内閣を構成する全閣僚には、総理の掲げる方針を共有し、スピード感を持って改革に取り組むよう望む。
企業は、法令遵守はもちろんのこと、社会的責任経営への取り組みを進め、様々なステークホルダーから広く信頼を得なければならない。そのうえで、雇用の創出や日本人らしい細やかな感性、高度な技術などを反映させた新製品・新サービスを開発し提供することを通じて、国民に豊かさをもたらす使命を果たすよう期待する。

1.国民の活力を引き出す

まず重要なのは、中長期的に潜在的国民負担率を50%以下にとどめることを目標に、税制・財政・社会保障制度の改革を一体的に進めることである。また、国際競争力確保の観点から、法人課税の制度整備を図るとともに、所得課税の一層のフラット化を進める。国・地方を通じて、歳出の重点化・効率化に取り組むとともに、歳入面においては、消費税を基幹税として拡充する。
持続可能な社会保障制度を確立する観点からは、年金・医療・介護制度などの一体的改革のグランドデザインを早急に明らかにし、速やかに実行に移す。その際、社会保障・福祉制度に共通で、かつ納税面とも整合性のとれた個人番号制と個人会計制度を整備する必要がある。

2.民間の創意工夫を活かす

縦割り行政の弊害を排除し、スピード感のある構造改革を推進するため、公務員制度の見直しなど一層の行政改革に取り組むとともに、個人や企業の多様な挑戦を促進し、民間需要の拡大を図るため、規制改革・民間開放を推進する。また、中央集権・官主導体制を転換するとともに、地方行革を推進する。
さらに、企業経営の円滑化に向けた経済法制、21世紀にふさわしい独占禁止法を整備する。郵政民営化については、「基本方針」を堅持し、公正な競争を可能とする法制を整備する。
ITを含む社会基盤の整備にあたっては、PFIなどを活用しその効率化に努めるとともに、地域住民のみならず利用者の視点を十分に反映させる。地域の特性を活かした観光振興、農業の構造改革を進め、地域経済の活性化を図る。
加えて、住宅政策を新たなコミュニティづくり、恒常的な内需拡大のための国家戦略として位置付け、住宅の質の向上に向けて防災・防犯などの観点も踏まえた「住宅・街づくり基本法(仮称)」を早期に制定する。

3.世界のトップランナーとなる

科学技術創造立国を実現するため、バイオ、IT、環境、ナノテクノロジー・材料、宇宙などの先端技術開発とその産業化を促進する。
このため、政府研究開発投資を拡充し、国や産業の基盤となる価値創造型のものづくり技術など重要技術の実用化を目指すとともに、国際標準化、人材育成などの施策を包括的に実施する。また、知的財産政策の強化、エンターテイメント・コンテンツ産業の競争力向上、新産業・新事業の創造に取り組む。
エネルギー・環境政策に関しては、原子燃料サイクルの着実な推進など、原子力を基幹に据えながら、新技術の開発と活用を通じたエネルギー源の多様化を進める。また、環境税や規制的な施策ではなく、「環境自主行動計画」など国民、企業の自主的な取り組みを信頼し尊重した温暖化対策を推進する。

4.個人の多様な力を伸ばす

国の礎である教育の質の向上と教育現場の活性化を実現するため、教育の多様化を図るとともに、教育現場に競争原理と評価制度を導入し、学校や授業を改革する。こうした観点も踏まえ、教育基本法を早期に見直す。
さらに円滑な労働移動と雇用機会の創出に向けて、労働市場・労働基準に関わる規制改革を推進する。女性や高齢者を含め、個人の多様な価値観を反映した雇用・就労形態を整備するとともに、少子化対策の充実を図る。加えて、外国人を積極的に受け入れるための体制を整備する。

5.通商・外交・安全保障政策を再構築する

多角的自由貿易体制の維持・強化を図るとともに、わが国にとって重要な国・地域との間で自由貿易協定、経済連携協定を迅速に締結する。このため、総理のリーダーシップの下で、対外交渉と国内構造改革を一体的に推進するための体制の充実・強化を図る。また、対日投資のより一層の促進に取り組む。
加えて、世界平和や国際社会が抱える課題に主体的に関与し、信頼、尊敬される国家を目指す観点から、戦略的な外交・安全保障政策を進めると同時に、憲法をはじめとする国の基本的な枠組みの再構築に取り組む。

以上

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