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「希望の国、日本」の実現に向けて

〜監査懇話会における御手洗会長講演〜

2007年10月11日(木) 10時〜11時
於:銀座 紙パルプ会館3階

はじめに

ただいまご紹介を賜りました、経団連の御手洗でございます。お招きに預かり、大変光栄に存じております。
本日は、日本経済が現在、いかなる課題に直面しているか、その中で、経団連が、どのように活動していこうとしているか、という点につきまして、折角の機会でございますので、私が日頃思うところも含めまして、率直にお話しさせていただきたいと思います。

経団連では、今年の初めに「希望の国、日本」と題する将来ビジョンを、発表いたしました。
このビジョンは、これからの10年間を見通しまして、わが国を希望の国としていくために、われわれが必要と考える、政策課題を取りまとめたものであります。
その中で取り上げた項目は、経済の構造改革からはじめまして、通商政策、社会保障制度や財政を中心とする政府部門の改革、雇用問題、地域政策、さらには教育問題など、幅広い分野の課題を、かなり網羅的に取り上げております。
経団連は、現在、ビジョンで掲げた政策課題の実現に向けまして、組織を挙げて、取り組んでいるところであります。

ビジョンを公表いたしましてから、もうすぐ1年になろうとしております。
分野によりまして、成果が出始めた課題もあれば、まだまだこれからの課題もあり、いろいろであります。
まあ、10年ビジョンの最初の1年ですので、総じて言えば、これから具体化に向けて、さらに取り組みを強化していく、という課題が大半を占めているといって良いかと思います。
また、どの分野に、どういう優先順位で取り組んでいくかという強弱の付け方も、その時々の情勢などを踏まえまして、変わってくるのは、当然だと考えております。
ただし、ビジョンの基本理念につきましては、決して揺るがせることなく、経済界としての信念を持って、今後とも取り組みを強化してまいりたいと考えております。

ビジョンの基本理念

そこで、はじめにまず、ビジョンの基本理念、すなわち、われわれ経団連の活動のベースとなる思想は何か、という点につきまして、お話しをさせていただきたいと思います。
これを一言で表しますと、経済全体の成長力を強化しながら、財政の建て直しや、地方の活力強化をはじめ、様々な問題の解決を図り、豊かな暮らしの実現と、国民生活の安心・安全の確保につなげていく、ということであります。
これは一見当たり前に見えて、世の中の議論は、必ずしもそうした方向で行われているわけではありません。
むしろ、マスコミでありますとか、あるいは、政治の世界では、成長重視か格差是正か、あるいは、上げ潮派か財政再建派かといったように、問題を対立させて、とらえる議論が多いように見受けられます。
問題を対立構造でとらえる考え方は、物事の白黒をはっきりさせる必要があるときには便利かもしれませんが、往々にして、問題の本質をつかみ損ねることもございます。

本日、ご出席の皆様は、企業経営に携わっておられる方々が大半だと思いますが、企業の経営ひとつとって見ましても、ただ単に売り上げだけを伸ばせば良いとか、あるいは、やみくもにコストを減らせば良いとか、そうした単純なものではないことは、重々ご承知のことと思います。
やはり、研究開発でありますとか、人材の育成など、必要なところには、それ相応のコストをかけながら、企業自体の成長を図り、かつその中で、適切に利益を確保していけるように、全体のバランスをとっていくということでなければ、きちんとした経営とは言えません。
私は、日頃からこのことにつきまして、「全体最適」を図ると言っております。

この点は、経済運営を考える上でも同じではないかと思います。
もちろん、企業の経営は、まずは利益を確保することが至上命題であるのに対して、経済運営にあたっては、国民生活の水準向上、安心・安全の確保が究極的な目的であろうかと思います。
このように、企業の経営と、経済運営とは、目指す目標こそ異なりますけれども、全体最適を図っていく必要があるという点につきましては、共通するものがあるのではないでしょうか。
そればかりか、指揮命令系統がはっきりしている企業よりも、意思決定プロセスが非常に複雑で、政策の結果がすべての国民の生活に跳ね返ってくる経済運営こそ、政策の全体最適を図る必要性が、より一層、求められるのではないかと、考えております。

日本経済の三つの課題

さて、ただいま、国家運営の目標は、国民生活の向上と安心・安全の確保だと申し上げました。
この観点から、わが国経済がいかなる問題に直面しているか、という点につきまして、本日は、三つの課題に焦点をあてまして、経済界としての考え方をお話しさせていただきたいと思います。

まず、第一は、経済の成長力の強化であります。
経済全体が着実に拡大していかないことには、国民生活に豊かさをもたらす雇用や所得を十分に確保していくことも、ままなりません。
第二は、生活を支える社会保障制度など、セーフティネットの持続性を確保し、国民の将来不安を解消していくという問題であります。
これには、現在危機的な状況に陥っているわが国の財政をいかに立て直していくか、という問題も密接に関連してまいります。
第三は、地域経済の活性化であります。
わが国において、中央と地方の間、あるいは、それぞれの地方の間に、経済的な格差が存在することは否定できません。
これを解消し、地域の自立を図っていくことは、並大抵の課題ではありませんが、日本全体を豊かな社会としていくためには、何としてもやり遂げていかなければなりません。

成長力の強化

そこで、まず、第一の柱である、経済の成長力強化に向けた課題につきまして、申し上げたいと思います。
はじめに、現下のわが国経済の状況でございますが、幸いにして2002年度以来、5年連続でプラス成長を続けております。
これは、民間部門、政府部門それぞれにおきまして、構造的な改革に取り組んだ成果であります。

民間部門におきましては、かつて、企業の足を引っ張っていた過剰設備や過剰債務、過剰雇用などの、いわゆる三つの過剰は完全に解消されまして、筋肉質の企業体質が形成されております。
こうした中で、企業収益は、最高水準を維持しております。
一方、政府部門におきましても、企業活動を支える税制や法制度の見直し、様々な分野における規制改革などが、かなりのスピード感をもって、行われてまいりました。
息の長い景気回復が続いていることで、経済の様々な面にも、プラスの効果が出てきております。

たとえば、失業率は、一時期は5%台半ばまで達しておりましたが、このところはずっと、4%を下回っております。
労働市場の逼迫度合いを示す有効求人倍率も、全国平均では1倍をこえており、基本的には、誰でも職に就くことが出来るという状況になってまいりました。
ただし、直近の景気指標を見てみますと、景気のスローダウンを示す兆候も出てきております。
高度成長の時代とは異なり、わが国も相当に成熟した経済となっております。景気の回復軌道も、一本調子ではなく、踊り場的な状況を差し挟むことも、十分考えられるわけであります。

しかし、5年間も景気回復が続いたのだから、この辺でそろそろ限界だという見方をとるべきではないと考えます。
また、そうならないように、民間と政府が力を合わせて、努力していくべきであります。
それと言いますのも、たとえば、米国経済の景気回復は、基本的には、10年以上も続いており、世界経済の成長を支える原動力となってまいりました。
さすがにこのところ、米国経済も減速気味になっておりますが、来年以降、再び、着実な成長軌道に復帰することが期待されます。

あるいは、英国経済も、サッチャー政権、さらにはブレア政権による改革の継続の成果によりまして、15年以上の長きにわたって、経済成長を続けております。
このように、成熟した経済といえども、手綱を緩めず、必要な改革を進めることによりまして、長期にわたる成長を実現することは、十分可能なのであります。
また、この点はわが国固有の問題でございますが、わが国の場合は、デフレが続く中の回復であります。

このため、今回の景気回復期間の平均成長率は、実質でみれば確かに2%程度の成長率を達成しておりますが、より生活実感に近い名目の値で見ますと、平均0.9%と、1%も伸びていないのであります。
経済成長が続いていると申しましても、それはあくまで計算上のもの、バーチャルなものに過ぎないとまでいうと言い過ぎかもしれませんが、やはり経済が名目でも拡大していかないことには、生活の豊かさの実感にも、つながってまいりません。

たとえば、先ほど、労働市場が非常に逼迫していると申し上げましたが、その割には、賃金の伸び率は芳しくなく、したがいまして、個人消費の動きもいま一つ、盛り上がりに欠けるわけであります。
この点は、比較的高い給与をもらっている団塊の世代が、引退の時期に入ったことなどの影響もあると、言われております。
しかし、基本的には、物価が安定的に上がっていかない中では、賃金水準もおいそれとは上がってまいりません。
物価が下がっているから、実質賃金は上がっているではないかと言われても、ピンとくる人は少ないと思います。
やはり、手取りの金額が、少しずつでも上がっていくことが、豊かさを実感できるという観点からも、あるいは、勤労意欲という面からも、重要なことではないでしょうか。
また、経済が名目でも着実に成長していくということは、国民の生活実感への影響ばかりでなく、わが国経済の国際的な地位という面からも、極めて重要な問題であります。
それと申しますのも、いま世界を見渡しますと、生活水準を向上させるために、各国が経済成長の実現に向けて、競い合っております。

一人当たりの名目国民総所得の伸び率を見てみますと、この10年間の平均で、たとえばアイルランドは年平均10%、韓国は6.6%、英国は5.4%、米国は4.3%と、大国か小国か、あるいは成熟国か新興国かを問わず、多くの国々が持続的な成長を遂げております。
アイルランドの経済成長率は、10年間で一人当たり所得が2.5倍になるスピードであり、米国の場合も10年間で50%伸びることとなります。
これに対しまして、わが国の場合、10年間で一人当たり所得は、年平均わずか0.2%の伸びと、ほとんど伸びていないのであります。
その結果、わが国の一人当たり所得は、以前は世界の1位、2位を争う水準であったものが、どんどん順位を落としまして、現在はOECDに加盟する29カ国の中で、13位にまで落ち込んでしまいました。
もはやわが国は、世界で最も豊かな国とは到底言えず、先進国中で並みの水準でしかないわけであります。

以上、いくつか例を申し上げましたが、経済を着実に拡大させていくことが、国民生活の豊かさという点からも、また、わが国経済の国力という面からも、欠かすことのできない要件であることが、ご理解いただけるのではないかと思います。
そこで、わが国経済の成長力を、いかにして高めていくかが問われることとなります。
とくにわが国では、今後、少子高齢化が進行する中で、人口が次第に減っていく人口減少社会に突入することが、確実となっております。
他方で、経済のグローバル化がますます進み、先進諸国ばかりでなく、中国、インド、ロシアをはじめ、世界各国との経済的競争も、激化の一途をたどっております。
そうした中で、わが国が、持続的な成長を実現していくためには、経済の供給面、需要面、双方からの、総合的な手を打っていく必要がございます。
このため、経団連の新しいビジョンでは、新しい日本型成長モデルを確立するということで、総合的な政策パッケージを掲げまして、実現に向けて取り組んでいるところであります。

イノベーションの推進

さて、日本型成長モデルの確立に向けた、一番目のポイントは、科学技術を中心とするイノベーションの加速であります。
人口の減少が今後も続いていくとしても、労働生産性が向上すれば、経済全体の成長を実現していくことは、十分可能と考えられます。
実際に、わが国の生産年齢人口は、すでに10年以上前から、減り始めており、現下の経済成長は、それに打ち勝って、実現してきているのであります。
イノベーションが、経済にいかにプラスの影響をもたらすかという点につきましては、現在、経団連でも検討を進めており、近々、報告書をまとめる予定としております。
今のところ、イノベーション活動を強化することにより、企業の競争力が強化され、また、設備投資などの需要面にも波及効果が及ぶことから、全体として、経済成長率を引き上げる効果があるという、分析結果が得られております。

経済の成長力を高めていく上で、イノベーションの強化が欠かせない一方で、イノベーションのための投資は、当然のことながら失敗の可能性も大きく、かなりのリスクをはらんでおります。
このため、イノベーションの加速に向けては、これを政策的に後押ししていくことが欠かせません。
諸外国におきましても、いかにして、イノベーションを継続的に生み出していくかが、重要な政策課題と認識されております。

たとえば、米国では、大統領の競争力イニシアチブにおきまして、米国の競争力の基盤は科学技術にあるとの認識のもとに、連邦政府の研究開発投資の拡大、民間研究開発投資の促進、教育・人材育成政策の強化などが、進められております。
また、EUでは、2010年までの包括的政策として、リスボン戦略が策定されるとともに、EU各国におきましても、それぞれ、イノベーション政策が強化されております。
こうした先進諸国だけでなく、中国や韓国なども、長期的な国家計画を作って強力な取り組みを進めております。

この点、わが国におきましても、1995年に科学技術基本法が制定され、これに基づく科学技術基本計画が策定されております。
現在、第3期目の基本計画が推進されており、ライフサイエンスやIT、環境やナノテクノロジーなどの重点分野を中心に、政府の研究開発施策の充実が図られていることは、経済界と致しましても、大いに評価しているところであります。
こうした中で、とりわけ、宇宙開発や海洋開発などの分野は、新素材やライフサイエンスなどへの波及も大きく、政府の研究開発プロジェクトとして、今後、より一層、力を入れていくことが重要と考えられます。
米国におきましては、宇宙開発はNASA、ライフサイエンスはNIHというように、分野の中核をなす世界的な研究機関が、重要な役割を果たしております。
わが国では、第3期科学技術基本計画におきまして、5年間で25兆円の政府研究開発投資を確保することを目指しております。
厳しい財政状況の中ではありますが、この目標を着実に達成することが期待されます。
それと同時に重要なことは、予算を細切れに配分するのではなく、米国の例を見習いつつ、中核となる拠点を作って資金を重点的に投入し、成果につなげていくことが、予算確保にも増して重要と考えられます。

さて、わが国のイノベーションの特徴は、研究開発費全体におきまして、民間研究開発が約80%と、高い割合を占めていることであります。
逆に、政府が負担する割合は20%に過ぎません。
米国や欧州主要国では、政府負担が30%から40%と高い水準であります。
こうしたこともあり、先ほど申し上げましたように、わが国では、政府研究開発投資のさらなる充実が求められるわけですが、同時に、全体の80%を占める民間研究開発投資を、いかに促進していくかということが、わが国にとってとりわけ、重要な課題であります。
そこで重要となってまいりますのが、民間の研究開発を促進する税制の強化であります。
科学技術創造立国を国是とするわが国では、研究開発税制の分野でも、世界的にみた場合、パイオニアであります。
以前のわが国は、研究開発費が過去の額を上回った分の一定割合を、税額から差し引くという仕組みを持っておりました。
その後、研究開発費に対して、安定的に税制上の優遇措置を与えるよう、2003年度の見直しで、研究開発費の総額の一定割合、現在の制度では最大10%を控除して、企業の研究開発活動を全体的に下支えする制度を作りました。
これにならうように、米国や欧州諸国、中国などでも、相次いで研究開発促進税制の見直しや拡充が行われまして、いまや多くの国が、わが国と同様に、研究開発費の総額を対象とする税制を持つに至っているのであります。
それどころか、わが国の研究開発税制が、各国と比べ劣る部分も出てまいりました。
例えば、わが国の場合、その年に支払う税額の20%までしか、税額の控除を行うことができません。
これに対し、英国や中国、韓国などの研究開発税制には、その上限がなく、青天井で税額の控除を行うことができるのであります。
この点は、研究開発が企業の死命を制するようなハイテク型の産業にとりましては、競争力を維持する上で、大きな差となります。
そこで、研究開発税制の先達であるわが国としましては、競争優位を維持する観点から、現行の研究開発税制の仕組みは維持した上で、税額控除の上限を撤廃ないし引き上げる必要があります。中小企業や地方の活性化を図る観点からも、本年末の税制改正の議論において、最も重要な課題であると考えております。

EPA・FTAの締結促進

日本型成長モデルの確立に向けまして、イノベーションの推進と並ぶ、二番目の柱が、世界各国との経済連携協定や自由貿易協定、すなわち、EPA、FTAの締結促進であります。
経済のグローバル化が進む中で、世界的な市場統合の動きが、加速しております。
地域的な市場の統合は、加盟国が27カ国まで拡大するに至ったEUや、北米全域を包含するNAFTAが代表例であります。
これに対し、アジア地域におきましては、そうした地域統合よりも、二国間あるいは多国間で、EPAを締結し、それを網の目のように充実させていく動きが、近年とみに顕著となっております。
各国とEPAやFTAを結ぶことにより、製品やサービスを自由にやりとりできるようになれば、国内の市場が拡大するのと同様の効果を持つこととなります。
これはとりわけ、国内の人口が減少していくわが国にとりましては、重要な成長強化策であります。
また、EPA・FTAの締結は、韓国や中国も、わが国以上に熱心に取り組んでおり、とくに韓国は、EUや米国とのFTA締結に向けて、着実にコマを進めております。
こうした流れの中で、万が一、わが国が遅れをとるようなことがあれば、わが国企業の競争力の確保という点からも、甚大な影響を受けることになりかねません。

経団連では、この1年間、東アジアに重点を置き、とくにASEAN諸国との2国間のEPAの推進に協力してまいりました。
その結果、二国間のEPAはおおむね形が整いつつあり、今後は、既存のEPAを、線から面的なものに広げ、東アジアを中心に、インド、オーストラリア、ニュージーランドを含む形で、できるだけ拡大していく必要があると考えております。
また、EUや米国、あるいは、オーストラリアや湾岸諸国など、わが国にとって重要な経済関係を有する国々とのEPAの締結も、加速すべきであります。
経済界と致しましても、政府に要請するだけではなく、各国経済界との連携・対話を強化し、交渉が着実に前進するよう、努力してまいります。

企業活動を支える法制・税制の見直し

成長戦略の三つ目のポイントは、企業活動を支える法制度や税制の改革であります。
この点につきましては、政府・与党の努力もあり、この10年程度で、相当の改革が行われてまいりました。
例えば、独占禁止法の改正により、戦後長らく認められなかった、純粋持株会社の設置が認められました。
また、企業再編に関する法制や税制の整備により、企業組織の再編や統合が、かなり自由に行えるようになりました。
これにより、多くの業界におきまして、選択と集中の観点から、企業の合従連衡の動きが加速し、今なお続いていることは、皆様もよくご承知のことと思います。
さらに、商法の抜本的見直しにより、新たに会社法が制定・施行され、企業の形態や組織設計の自由度も、相当に広がりました。
この流れの中で、日本におきましても、これまで通り監査役会を有する株式会社とならんで、米国流に社外取締役の役割を重視する委員会設置会社も、認められるようになりました。
私自身は、23年間におよぶアメリカ駐在経験から、社外取締役制度というものが必ずしも理屈どおりに日本で機能するとは思っておりませんが、いずれにしましても、企業経営における選択肢が広がることは重要であり、それぞれの企業ごとに、適した経営スタイルを採用すれば良いと、考えております。
話が若干、横道にそれましたが、このように、企業活動を支える法制度や税制の改革は、相当程度、進んでおります。
ただし、わが国が諸外国に比べ遅れをとっているところを、一点挙げるとすれば、それは、法人税率が依然として高止まりしている、ということであります。

企業の活動が、国境を越えてグローバルに展開する中で、国民の所得や雇用を確保するためには、国内において優れた企業を育むとともに、海外からも質の高い投資を呼び込むことが重要となります。
こうした観点から、各国においては、企業活動を行いやすくするための環境整備が進められておりますが、その流れの中で、法人実効税率の引き下げが進んでおります。
たとえば、OECD加盟国の平均税率は、1990年代半ばには40%近くと、現在のわが国と、ほぼ同等の水準にありましたが、現在は平均で28%まで低下しております。
わが国の実効税率は依然として40%のままであり、国際的な平均とは10%程度の差があるわけであります。
いくら企業活動が自由に行えるインフラが整ったといいましても、基本となる税率が国際平均からあまりに乖離していては、企業活動に対するペナルティを課しているのと同じであります。また、海外からの投資インセンティブも損なわれることとなります。
法人実効税率の見直しは、厳しい財政事情もあり、直ちに実現することは、難しい面もございます。しかし、経済界といたしましては、税制の抜本的改革が行われる際には、継続的に主張してまいりたいと考えております。

セーフティネットの持続性確保

ここまで、わが国経済の成長戦略についてお話ししてまいりました。
次に、二番目の課題として、社会保障制度を中心とするセーフティネットの問題につきまして、申し上げたいと思います。
年金や医療、介護制度を中心とする社会保障制度は、まさに、国民生活の安心・安全の基盤となるものであります。
ここの所がしっかりしないことには、国民は安心して日々の生活をおくることも出来ません。
また、老後の暮らしが見通せないようでは、生活態度が防衛的になり、個人消費をはじめ、経済にもマイナスの影響が出てまいります。
さらに、将来の生活に対して、大きな不安を持たざるを得ないような状況では、人々が積極的に子どもを産み、育てていこうという気持ちにも、なかなかならないのではないでしょうか。
しかし、非常に残念なことに、いま、わが国においては、社会保障制度に対する国民の信頼が、大きく揺らいでおります。
とりわけ、年金制度に対する信頼は、落ちるところまで落ちたと言っても、言い過ぎではないほどの状況になってしまいました。
これは大変に由々しき事態であります。
社会保障制度は、基本的には、国民がお互いに支えあうというところに、制度の基礎を置いております。
したがいまして、社会保障制度そのもの、また、制度の運営主体への信頼が欠如していては、制度全体が崩壊することになりかねません。
ここは、多少は時間がかかったとしても、社会保障制度の全体を抜本的に見直し、誰が見ても大丈夫だ、安心できる、そういうところまで持っていかないことには、国民の信頼を回復することは基本的に不可能だと考えます。

社会保障番号・個人勘定の導入

まず必要なことは、年金、医療、介護という社会保障制度全体の給付と負担の関係を、国民の一人ひとりが、明確に認識できるような仕組みを作ることであります。
先の参議院選挙で問題となりました、いわゆる消えた年金の問題は、現在、政府におきまして、急ピッチで、名寄せなどの作業が進められております。
これはこれで、早急に作業を完了させることが重要であります。
しかし、問題はこれだけにとどまりません。
そもそも、民間金融機関の場合であれば、預かったお金が誰のものかわからない、などということはありえませんし、そうしたことは、絶対あってはならないわけであります。
顧客の側でも、預金通帳を見れば、お金の出し入れは直ちに確認できますし、最近は、インターネットを通じて口座を管理することも、簡単にできるようになっております。
あるいは、保険会社の個人年金などの場合は、少なくとも年1回は、累積の支払額が幾らで、運用利回りがどうかといった通知が届きます。
ところが、公的年金をはじめ、国の社会保障制度の場合は、顧客、すなわち国民の側で、幾ら保険料を支払い、それが受け取った側の帳簿にしっかり計上されているかどうかといったことが、わかる仕組みになっておりません。

この点につきまして、経団連はかねてより、年金や医療、介護を通じた、社会保障制度全体に共通する基礎的なインフラとして、社会保障個人番号および社会保障個人勘定を導入すべきことを、主張し続けてまいりました。
こうしたシステムが導入されれば、国民一人ひとりが、社会保障に関する負担や給付の状況を明確に認識できるようになり、制度に対する信頼性の向上にもつながると考えられます。
また、米国では、ご案内のように、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーが、納税申告や銀行口座の開設、車の免許をとる時など、社会の様々な分野で、幅広く活用されております。
わが国におきましても、このような番号制度が導入されれば、納税者番号としての活用も、視野に入るものと考えられます。
この社会保障番号に関しては、政府におきましても、議論が進められており、2011年度を目途に、社会保障カードを導入するとの方針が示されております。
われわれと致しましては、導入時期を前倒ししても良いくらいに考えておりますが、いずれに致しましても、このような仕組みが早期に導入されるよう、政府の取り組みを支持してまいりたいと考えております。

制度の持続性確保に向けての視点

こうしたインフラを導入するとともに、次に問題となりますのは、社会保障制度を、将来に向けて持続可能なものとしていくことであります。
これは、社会保障に関する給付と負担のバランスを、今後どうとっていくかという、より本質的な問題であります。
まず、基本的な認識といたしまして、皆様も重々ご承知の通り、わが国はこれから先、本格的な少子高齢社会に入ってまいります。
高齢者人口は年3%という早いペースで拡大し、社会保障給付を受け取る側の人数が増えていきます。
他方、先ほど生産年齢人口の数が減少しはじめていると申し上げましたが、社会保障制度を支える現役世代の人数は減ってまいります。
したがいまして、簡単な算術の問題になるわけですけれども、高齢者に対する給付を減らさずに負担を増やすか、給付を減らして負担を変えないか、あるいはその両方ということで、給付を減らして負担も増やすか、いずれかの選択を行わなければ、制度を将来的に維持していくことはできません。

その際に、考慮すべき視点を、五点、申し上げます。
第一に、社会保障制度は国民生活を支える基本となるセーフティネットですので、その果たすべき役割は、しっかりと維持していかなければなりません。
この点、わが国の社会保障制度は、今のところは、所得の再分配という面で、重要な役割を発揮しております。
高齢化が進むにしたがいまして、所得面の格差はどうしても拡大してまいります。
これは、若者に比べて、高齢者の方が所得の多い人、少ない人の差が大きいからであります。
しかし、わが国の場合は、社会保障制度による所得の再分配が、かなり強力に行われているために、再分配後の所得格差は、ほとんど上昇せず、安定的に推移しております。
そのような中で、社会保障制度があまりにも弱体化いたしますと、社会の中における経済的な格差が、是正されない、ということが問題となります。

二番目の視点は、経済活力への影響であります。
社会保障の給付は、税と社会保険料の負担によって支えられております。
税と社会保険料負担の合計が国民所得に占める割合を、国民負担率と言っておりますが、この割合があまり大きくなりますと、経済の活力を維持することが出来なくなってしまいます。
経団連で行った実証分析におきましても、国民負担率が高まってまいりますと、貯蓄率の低下や、設備投資の停滞によりまして、経済成長率にマイナスの影響が生じるという検証結果が出ております。
高齢化の進展によりまして、社会保障給付がある程度増大していくことは避けられません。しかし、国民負担率が過度に上昇すれば、経済の活力が低下し、その結果、肝心の社会保障制度を安定的に維持することも不可能となってしまいます。
したがいまして、社会保障制度の抜本的見直しを通じて、国民負担率の上昇を、可能な限り抑制していくことが、大変に重要であります。

三番目は、負担の公平性の視点であります。
社会保障を支える、税と社会保険料負担のうち、所得税などといった直接税と保険料は、基本的には現役世代にかかってくる負担であります。
しかし、先ほど申し上げましたように、現役世代の数は減ってまいりますので、こうした直接的な負担が増えていきますと、世代間の公平性が大いに損なわれることとなります。
さらに、働く人々の勤労意欲が減退し、経済活力にも悪影響を及ぼすこととなります。
したがいまして、社会保障に要する負担は、国民全体が広く薄く支えていくことが、望ましいと考えられます。

四番目の視点は、制度のわかりやすさであります。
わが国の現在の社会保障制度は、年金に致しましても、医療制度に致しましても、税と社会保険料がそれぞれ、どのような役割分担に基づいて制度が設計されているのかが曖昧であります。
また、厚生年金と国民年金、あるいは現役世代の医療保険と高齢者医療制度などとの間での資金のやり繰りも、非常に複雑になっており、全体として、極めてわかりにくい制度となっております。
したがいまして、税でカバーすべき範囲、保険料で賄うべき範囲はそれぞれどうあるべきか、また、それぞれの保険制度における給付と負担の関係も含め、制度全体を通して抜本的に見直すことを通じまして、国民が明確に理解できるものとしていくことが望まれます。

最後は、財政健全化との関係であります。
わが国の財政状況が、危機的な状態にあることは、改めて申し上げるまでもございません。
財政再建が待ったなしの状況となっております。
現在、国の予算は、総額で約83兆円であります。
このうち、21兆円は国債の元利払いであり、減らすことはできません。
また、地方への交付税交付金が約15兆円あり、これも、地方の置かれた状況などを考えますと、簡単に減らすわけにまいりません。
残りの約47兆円のうち、約45%の21兆円を、社会保障関係費が占めております。
この社会保障関係費が、現在の社会保障制度を前提に致しますと、年間1兆円というオーダーで増えると見込まれております。
その他は、公共事業費、教育費、防衛費などでございますが、これらはいずれも、近年着々と減らされております。
今後とも無駄を省いていくことは必要ですが、公共事業費は一時に比べ、大きく減らされておりますし、教育や防衛などは、国家の存立にとって重要な予算であります。
他方で、この予算を賄うために、依然として、25兆円という巨額の公債発行が行われております。
しかし、多額の赤字公債が発行されているということは、現在の受益に対する負担を、まだ生まれていない人たちも含めて、将来世代に付け回しているということであります。
しかし、これまでも申し上げておりますように、これから人口が減っていく中で、こうした付け回しが行われれば、われわれの子どもの世代、孫の世代が、大変な負担に苦しむこととなります。
したがいまして、社会保障制度を安定的に維持していく必要があるとしても、そのことによって、将来世代に過度に負担のしわ寄せが行くことのないよう、財政の健全化との兼ね合いを、しっかりと考えていくことが重要であります。

経済界の基本的考え方

以上、セーフティネットの持続性確保を考える上での五つの視点を申し上げました。
これらの間には、たとえば、財政の健全化が大切だからといって、社会保障給付を減らし過ぎれば、セーフティネットとしての役割が十分に果たせなくなる、といったように、矛盾する要素もございます。
しかし、冒頭で、物事の全体最適化を図る考え方が重要だと申し上げましたが、セーフティネットのあり方を議論していく上でも、どれか一つの視点だけということではなく、全体のバランスをとっていくことが重要であります。

われわれの基本的な考え方と致しましては、まず、高齢化が進行する中で、社会保障給付の増大は避けられないとしても、経済成長に悪影響を与えない範囲に抑えていくことが重要だと考えられます。
そこで、経団連のビジョンでは、中長期的な社会保障給付の伸び率を、経済成長率を基礎として、人口全体に占める高齢者数の増加分を加味した範囲に抑えることを提案しております。
ただ、それでもなお、社会保障関係費は次第に増えてまいります。
それを赤字公債の発行で賄うというわけにはまいりません。
そこで今後、社会保障関係費が増えていく分につきましては、消費税の引き上げによって、きちんと賄っていくことが、社会保障制度への信頼性、安定性を高めるという点からも、また、セーフティネットにかかる費用を国民全体が広く負担する点からも、望ましいと考えられます。
もともと、現在でも消費税の税収は、地方にまわる分を除いて、基本的にはすべて、年金、医療、介護からなる社会保障関係費に充当することが、定められております。
われわれの考え方は、こうした現在の仕組みも考慮し、社会保障関係費が増える分について、消費税を社会保障目的税のような形で、割り当てていくという考え方であります。
さらに、目前に迫っております課題は、基礎年金の国庫負担割合を、現在のおよそ1/3から1/2に引き上げる、という問題であります。
このためには、消費税率1%分に相当する2.5兆円の財源が、必要とされております。
この財源を、歳出削減と税収の自然増によって捻出しようという考え方もあり、それが出来るのであれば、それにこしたことはございません。

しかし、先ほど申し上げました、われわれの基本的な考え方からいたしますと、この分はやはり、消費税によって対応せざるをえないのではないかと、考えております。
また、この点に関連いたしまして、基礎年金のあり方、その役割をどう考えるか、現在1/3を税金で負担しているところを、1/2まで引き上げる意味合いは何なのかということも、今後、しっかりと議論していく必要があろうかと思います。
基礎年金という名前の通り、これがセーフティネットの基礎を成すものであるとするならば、全額を税金で賄うということも、一つ考え方としてあろうかと思います。
ただし、そのためには、財源をどう調達するか、高額所得者も含めて一律に給付する必要があるのか否か、生活保護との関係はどうなるのか、さらに新しい制度への移行期間の取り扱いをどう考えるのか等々、現行の枠内にとどまらず、より抜本的に、セーフティネットのあり方全体に関わる議論が要請されます。
こうした点も含めて、今後、政府ならびに与野党間も含め、国民的な議論を行なっていく必要があると感じております。

地域経済の活性化

最後に、成長力の強化、セーフティネットへの信頼回復と並んで、三つ目の重要課題として、地域経済の活力向上を取り上げたいと思います。
先ほど、日本経済が回復を続けていると申し上げた中で、有効求人倍率が1倍を超えていることをご紹介いたしましたが、これはあくまで、全国平均で見ればの話であります。
地域ごと、あるいは県ごとに見てみますと、求人倍率が1.5倍以上と、活況を呈している地域がある一方で、依然として1倍以下、県によっては0.5以下と、二人に1件しか求人がないような地域もございます。
このように、中央と地方の間、あるいはそれぞれの地方の間に、経済的な格差が存在することは事実であります。
地域経済も含めまして、わが国の経済社会全体を豊かにしていくことが、重要な課題であります。

地域経営の確立と産業立地の促進

それでは、いかにして地域経済を元気にしていくかと言えば、それぞれの地域が主体的に考えて、地域に相応しい産業を興し、自立を図っていくということにつきます。
いずれ中央が何とかしてくれるに違いない、などという受け身の姿勢では、最終的には、その地方は成長から取り残されてしまうでしょう。
企業経営に当てはめて考えれば当たり前のことですが、業績が左前になったからといって、補助金に頼るようなことでは、いずれその会社は、足腰が立たなくなってしまいます。
このような観点から、私は、これからの時代において、豊かな地方を作るための、地域経営という観点が極めて重要だと考えております。
これはすなわち、地域の発展を、地域自らが主体的に考えるということであります。
自らが知恵を出し、汗をかいて築いた発展は、他に依存してのものではありませんので、持続性を持つと言うことができます。
わが国全体を見渡せば、すでにこうした地域経営の観点に立って、着実な発展を遂げている地域も少なくありません。
その例を一つだけ挙げますと、大分県は、現在2期目を務めている広瀬知事が、自ら先頭に立ちまして、道路などのインフラの整備や、企業の投資に対するインセンティブの強化など、産業誘致政策を強力に展開しております。
こうした中で、当社も複数の工場を、県内に立ち上げました。
また、大分県を含む九州北部地域では、自動車産業の集積も急速に進みつつあります。
その結果、大分県の一人当たりの県民所得は、九州地域でトップになりました。
地域経済の成長を実現していくためには、様々な方向性、方策が考えられますが、やはり最も効果が大きいのは、企業の生産拠点や研究開発拠点などの立地を促すことであります。
企業立地が進めば、地域の雇用や所得が創出され、自治体の税収の増加にもつながることとなります。

道州制の導入

さて、この地域経営といった場合に、どの程度のスケールで行うことが最適かを、考えることが重要であります。
企業経営におきましても、規模が小さいと効率も悪く、研究開発などに十分なお金もかけることも出来ません。
そうしたことから、近年、非常に幅広い業界におきまして、企業グループを越えた再編が進み、国際競争力の向上が図られていることは、ご承知の通りであります。
そこで、今の地方の仕組みを見てみますと、市町村レベルにおきましては、近年、市町村合併が強力に進められ、5年前にはおよそ3,200あった市町村は、現在、1,800団体まで集約されております。
これに対し、現在47ある都道府県の仕組みは、100年以上前の廃藩置県以来、基本的に変更されておらず、いまや時代にそぐわなくなっております。
例えば、産業振興のためのインフラ整備に致しましても、各県に一つずつ空港を作る必要はなく、むしろ、地域ブロックで国際空港を作って、それを高速道路で結んだ方がはるかに効率的であります。
あるいは、人材の育成や研究といった観点からも、県ごとに総合大学を作っていたのでは、予算や人員の配分も細切れになり、国際水準に匹敵する研究を行うことも不可能であります。
さらには、政治・行政面におきましても、議会も含めて、行政機構の無駄や重複は相当に大きいと思います。
こうした点などを考えますと、地域経営を、一定のスケールメリットを持って行うためには、現行の都道府県体制の抜本的見直しが不可避であります。

そこで、経団連のビジョンでは、10年後を目途に、道州制を導入することを提案しております。
道州制ということになりますと、スケールメリットという点からは、たとえば、九州全体の経済規模はオランダやベルギー一国分に相当し、北海道もデンマークやポルトガル並みと、相当な規模を持つことになりますので、経済的に自立して地域経営を展開していくことも、十分可能と考えられます。
経団連では、先月、道州制推進に向けたシンポジウムを開催いたしましたが、知事の代表をはじめ、多くの方々から、賛同をいただきました。
われわれとしては、道州制は、究極の構造改革であり、かつ、地域活性化の切り札であると考えており、引き続き、各地でのシンポジウムの開催をはじめ、早期導入に向けた機運を、盛り上げていきたいと考えております。

おわりに

以上、わが国経済の当面の重要課題につきまして、お話しさせていただきました。
ご案内の通り、目下の政治情勢は、衆議院と参議院で第一党が異なるという、わが国としては、戦後あまり経験したことのない状況となっております。
ただし、海外の民主主義国におきましては、こうしたねじれ現象は、必ずしも珍しいことでもないようであります。
たとえば、先ほども申し上げましたように、私は米国で20年以上を過ごしましたが、その間に、大統領と議会とで基盤とする政党が違っていたり、また、上院と下院で多数を占める政党が異なるといったことも、珍しくはございませんでした。
あるいは、フランスでも、「コアビタシオン(保革共存)」と言うそうですが、大統領と首相の出身政党が異なるということも、往々にしてあると聞いております。
いずれに致しましても、本日、私からお話し申し上げましたような、成長力の強化、セーフティネットの確立、地域経済の活性化などの課題に取り組んでいく上では、政治のリーダーシップが欠かせません。
したがいまして、政治上の混乱により、政策遂行に遅滞が生じるようなことは、絶対に避けなければならないと考えております。
一方で、たとえば、社会保障制度などは、政治情勢がいかなるものとなろうとも、この先何十年と、安定的に維持していかなければならないものであります。こうした問題については、与野党がしっかり話し合って、優れた改革が行われることを期待しております。
新しい福田内閣は、希望と安心の国づくりを掲げておりますが、経団連としても、この国を希望の国としていくために、引き続き、全力を挙げて取り組んでまいります。
本日はご清聴いただき、誠に有難うございました。

以上

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