創立50周年を機に、さらなる変革と創造に挑戦する

−経団連会長新年メッセージ−

1996年1月3日

社団法人 経済団体連合会
会長 豊田章一郎


経団連は、今年、創立50周年を迎える。私は、この記念すべき年を、21世紀を切り拓く大きなステップとなり、かつ明るさを実感できる年にしたい。
経団連が最重要課題として位置づけている規制の撤廃・緩和は、ようやく具体的な成果に結びつきつつあり、新産業・新事業や創造的な人材育成のための環境も徐々に整い始めている。経団連と海外との対話も、2国間ベースから多国間ベースへ、相互理解から政策対話へと広がりを見せている。さらに、民間の市民団体やボランティアの役割も高まりつつある。まさに、時代は、民間部門が自らの判断と責任で行動する経済社会へと確実に動きだしている。
経団連は、こうした新しい流れを定着させつつ、経済の活性化を早期に実現させるため、新たな決意をもって活動を強化していきたい。具体的には、21世紀の経済社会ビジョンを「魅力ある日本−創造への責任」として公表し、その実現に向けて、経済の構造改革に自ら取り組むとともに、政治、行政、外交等の分野においても、民間経済界の立場から積極的に発言し、行動していきたい。
このような認識のもとで、本年は、特に以下に掲げた事項を重点課題として取り組み、その実現を期す。

  1. 規制の撤廃・緩和を強力に推進する
  2. 各界・各層と連携して、規制の撤廃・緩和の一層の推進に努める。その一環として、関係業界・企業に規制の総点検、規制緩和措置の活用を要請する。さらに、地方分権とあわせて、国・地方を通じた抜本的な行政改革を働きかける。

  3. 首都機能移転の早期実現と重点的な社会資本整備に取り組む
  4. 新しい国づくりのシンボル・プロジェクトとなる「首都機能移転」の早期実現を求める。当面、移転時期、移転場所を含め、具体的な計画作りを促進 する。また、活力ある経済社会を築くためには、思い切った社会資本整備が不可欠であり、この観点から、国際ハブ空港の建設を推進するとともに、情報インフラの整備や研究開発の充実に努める。

  5. 経済活性化を促すとともに、長寿社会に対応した税・財政改革に取り組む
  6. 今後、活力ある経済社会、豊かで明るい長寿社会を構築するためには、真に必要な施策を大胆に講じる必要がある。財政が果たすべき役割を根本から問い直し、社会保障・公共投資を含め、硬直化した予算配分の打破に努める。あわせて、財政投融資の見直しなど、広く財政全般の改革を求めていく。
    また、必要な財源の確保にあたっては、行政改革を前提としつつ、所得課税・消費課税・資産課税のバランスのとれた税体系を構築する必要があり、法人税・所得税減税を含めた直間比率の是正を柱とする税制改革を推進する。

  7. 海外諸国との民間レベルでの交流・連携を強化する
  8. 中国への大型ミッションをはじめとして、引き続き、海外諸国との交流・連携を進める。特に、WTO、OECD等の多国間の枠組みに係わる活動を支援するために、欧米経済団体をはじめ海外との政策対話を強化していく。 また、APECのマニラ会議に向けてビジネス環境改善のための具体的な提言を行い、その実現を目指す。さらに、経済協力、地球環境などの分野において、世界銀行等の国際機関との人材交流を進める。

  9. 政治の活性化を促す
  10. 政治に対する内外の信頼を回復し、政治を活性化することが、緊急の課題である。経団連としても、政治の活性化に資するため、企業人をメンバーとする組織をつくり、政党や政治家の政策・活動についての情報提供や、政治家とのコミュニケーションを促進する。
    また、激動する世界情勢に対応するために、強力な首脳外交が展開されるよう求めていく。


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