構造改革元年、経済界自ら改革に全力で取り組む

―経団連会長新年メッセージ―

1997年1月3日
(社)経済団体連合会
会長 豊田章一郎


破局に向かう日本

 わが国は今や重大な岐路にある。超高齢化社会が目前に迫る中で、産業の空洞化、財政赤字の拡大が進行している。現状を放置すれば、日本経済は破局へと向かい、21世紀において世界の繁栄から取り残されてしまう。
 経済界はもとより、全ての国民が、わが国が当面している危機を直視するとともに、今年こそ、あらゆる面において制度疲労を起こしている既存の制度を抜本的に改革してゆく決意を新たにすることが、何よりも重要である。

改革が急務

 先の総選挙において、各政党はいずれも行政改革の実現を公約に掲げ、第二次橋本内閣は、行政、財政、金融をはじめとする五大改革の実現に最優先で取り組みはじめた。欧米をはじめとする諸外国においても、政治の強いリーダーシップの下で財政改革を断行し、成果をあげつつある。
 経済界も一丸となって、行政改革会議をはじめとする諸改革を全面的に支援してゆくとともに、各論反対を慎み、自ら改革の中に身を投ずる覚悟で取り組んでゆく。

成果の活用

 目下の急務である規制の撤廃・緩和は時間との戦いであり、本年がまさに「脱規制社会」実現の正念場である。経済界としても、規制緩和の実効をあげるために、規制緩和措置を大いに活用するとともに、新産業・新事業を積極的に興してゆく。こうした企業の活動が、景気の本格的回復、経済の活性化を実現し、ひいては、わが国の国際的信頼確保につながるのである。

企業倫理の徹底

 規制撤廃・緩和が進むにつれて、企業は従来にも増して、強い倫理観と自己責任原則に基づいて行動することが求められる。その意味において、企業の不祥事に対しては、経済界としても率直に反省する必要がある。経団連は、5年前に「企業行動憲章」を制定したが、今般企業をとりまく環境変化も踏まえて、憲章を全面的に改定した。今後は、新しい「企業行動憲章」の周知徹底を図り、その遵守を会員企業に強く求めてゆく。

政策立案への参画

 今後、経済社会が大きく変化してゆく中で、政策立案の中心的役割は、「行政府」主導から「立法府」主導へと転換してゆく方向にある。経済界自らも積極的に政策立案に参画してゆく。そこで、新たに「21世紀政策研究所」(仮称)を設立して経団連のシンクタンク機能を強化するとともに、日本の知的センターとして、内外の研究機関との連携強化を図る。この研究所においては、会員企業の協力も得て、現実の経済に軸足を置き、グローバルな視点に立った未来指向の調査・研究を行なう。

改革元年

 経団連は戦後半世紀にわたり、日本経済の進むべき道を切り開くための先導役たらんと、全力をあげて活動してきた。これまで築いてきた歴史と伝統の上に立って、今年こそが「構造改革元年」であるという決意のもとに、力強く新たな一歩を踏み出したい。

以 上


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