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月刊 経団連 座談会・対談 持続可能な社会保障制度の確立に向けて ~社会保険料と税の一体的見直し

久保田政一
司会:経団連専務理事

印南一路
慶應義塾大学総合政策学部教授

田中秀明
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授

鈴木茂晴
経団連社会保障委員会共同委員長
大和証券グループ本社会長

斎藤勝利
経団連副会長、社会保障委員長
第一生命保険会長

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斎藤勝利 (経団連副会長、社会保障委員長/第一生命保険会長)
現下の危機的状況を打開するためには、経済成長と両立する社会保障の確立が焦眉の急である。改革の要は、医療・介護・年金・少子化の各分野における給付の効率化・重点化および自助・共助・公助の役割分担を明確にした、社会保険料と税の一体的見直しであり、政府は、早期に検討に着手すべきである。あわせて、国民の予防への意識を高めることが重要である。

鈴木茂晴 (経団連社会保障委員会共同委員長/大和証券グループ本社会長)
消費税率引き上げを決めたことは年々増え続ける社会保障給付の財源に充てるための措置であり、財政再建の第一歩を踏み出したことを評価する。一方、社会保障制度改革は未完の改革となっている。活力ある経済社会の構築に向けて、成長の源泉たる現役世代の活力を奪わない改革が必要である。また、高齢化のピークは2040年代と推測される。若い段階から自助努力によって準備できるよう、税制上の優遇措置を講じることも必要である。

田中秀明 (明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授)
「ねじれ国会」のなかで消費税率の引き上げを決めたことは評価できるが、社会保障制度の見直しは不十分である。改革のためには、現行制度の何が問題か、データに基づく分析と、時間をかけたオープンな議論を行うことが必要である。財源のあり方を論じるためには、まず、どういう制度を目指すかを決めなければならない。日本の基礎年金は、税と保険料が混合した曖昧な仕組みである。真の国民皆年金を実現する必要があり、公・私の役割分担が明確な、カナダの年金制度が参考になろう。

印南一路 (慶應義塾大学総合政策学部教授)
日本は、少子高齢化のなかでGDPが減少し、経済の急回復も難しい状況にある。これ以上、社会保障制度改革を先送りすることはできない。医療・介護分野では、民間を含むサービス事業者が介在するため利害対立が生じやすく、調整が難しいが、救命医療を優先し、自立医療については聖域をつくらず、給付率の見直しなどを行うべきである。

久保田政一 (司会:経団連専務理事)

  • ●日本の経済・財政の現状を踏まえた改革の方向性
  • 経済成長と両立する社会保障制度の再構築を
  • 社会保険料負担の増加は企業の雇用創出を阻害する
  • データに基づく分析で現行制度の問題を明らかにすべき
  • 先送りにはできない社会保障制度改革
  • ●社会保障給付の効率化・重点化策について
  • 社会保険にするのか、国民皆年金にするのか
  • 救命医療と自立医療に分けて重点化・効率化の議論をすべき
  • 国民皆保険制度を維持するための医療費の重点化・効率化
  • 必要な介護給付費への税投入
  • 年金・子育て分野における給付の効率化・重点化
  • ●自助・共助・公助の役割分担の見直しと社会保障財源のあり方
  • 公・私の役割分担が明確なカナダの年金制度
  • 2025年度に向けた展望が必要
  • 成長の源泉たる現役世代の活力を奪わない改革を
  • インセンティブを与えることで医療費・介護費は抑制できる

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