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月刊 経団連 巻頭言 「出口」から引っ張る科学技術イノベーション

内山田竹志 (うちやまだ たけし) 経団連副会長/トヨタ自動車会長

今月から、消費税率が17年ぶりに引き上げられたが、前回消費税率が引き上げられた1997年は、私にとって忘れることができない年だ。この年、地球温暖化防止京都会議COP3の開催にあわせて、私自身が開発責任者を務めた世界初の量産ハイブリッド車プリウスが、「21世紀に間に合いました」とのキャッチコピーのもと発売された。

プリウスの開発プロジェクトが社内で正式に始まったのは、今からちょうど20年前の1994年のことであるが、ハイブリッド技術そのものは、さらに20年以上前の1960年代に研究が始まっていた。しかし、実用化はまだまだ遠い話と思われていた。

さまざまな苦労はあったが、プロジェクト発足後、わずか3年で発売にこぎ着けることができたのは、当時の経営トップから「燃費を二倍にした車を1997年中に発売する」という明確な「出口」が示されたことで、開発に携わる全員が一体となれたのが大きかったと記憶している。

「達成可能な目標」ではなく、「あるべき目標」を掲げ、期限を決めて開発を進める。こういった「出口から引っ張る」という考え方が、これからのイノベーションを推進するにあたっては極めて重要だと思う。

天然資源の乏しい日本は、今後も「産業立国」として成長していかなければならない。その鍵を握っているのは科学技術イノベーションであり、産学官の連携を深め、研究開発を実用化という「出口」にしっかりと結び付けることで、オールジャパンとしての国際競争力を強化していきたい。

2020年オリンピック・パラリンピック東京大会まで、あと6年。震災から見事に復活した日本を世界に示すと同時に、日本の科学技術イノベーションのショーケースとして世界に広く発信できるように、私たち産業界が中心となって、しっかりとした準備を進めたい。

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