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月刊 経団連 巻頭言 豊かで活力ある日本を支えるエネルギー

宮本洋一 (みやもと よういち) 経団連審議員会副議長/清水建設社長

東日本大震災から4年、わが国のエネルギーを取り巻く環境は依然として厳しい状況にある。豊かで活力ある日本を目指すうえで、エネルギーのコスト上昇による産業への影響はもとより、地球温暖化防止への国際的な取り組みや国民生活の負担などを考慮すれば、今こそエネルギー政策に関する議論を尽くさなければならない。

今後のエネルギーミックスは、エネルギーの安定供給、経済性、環境適合性のバランスに基づき方向性を示すことが求められる。現時点では、安全面で最大限の努力をしながら、総発電量の25%程度を担う重要なベースロード電源の一つとして、原子力を活用していくことが必要であると考えている。そのためには、国民に対して国の責任でリスク評価等十分な情報を開示し、丁寧な説明と対話をしながら結論を導き出していくというプロセスが大切である。

中長期的には、わが国の新たな成長に結び付けていく視点が重要となる。多様な科学技術の発展とイノベーションによって、国産エネルギーとしての再生可能エネルギーの開発・事業化推進を図らなければならない。加えて効率的なエネルギー使用を実現するための省エネ・創エネ・蓄エネ等の研究開発を推進するとともに、それらを日常生活のなかで着実に普及させていく需要者側の環境整備にも取り組む姿勢が求められる。

さらに、東アジアを含めた国際的な電力系統網の整備、周波数の統一も検討課題の一つであろう。

原子力関連の技術について言えば、技術立国日本の責任として、事故への対応と廃炉、核燃料サイクルの確立と放射性廃棄物の最終処分、そしてより安全性の高い次世代炉の開発等に向かって、国際的な連携のもと、国を挙げて研究開発と人材育成に取り組む必要がある。

豊かで活力ある日本をつくるために、エネルギーに関する議論を深め、国、企業、大学そして国民一人ひとりが何をすべきかを考えていかねばならない。そのなかで、納得できる具体的な道筋を国として内外に示すことが、わが国の持続的な経済成長を導き、また、国際社会における日本の地位を高める道と考える。

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