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月刊 経団連 巻頭言 未来を創る人材育成

渡邉光一郎 (わたなべ こういちろう) 経団連審議員会副議長/第一生命保険社長

一段と加速する企業活動のグローバル化やIoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能などの技術革新を通じた「Society 5.0」(超スマート社会)の実現により、社会や産業構造が劇的に変化すると予想されている。来春、小学校に入学する児童が成人を迎える2030年ごろには、今ある仕事の半分がなくなるといった衝撃的な試算もあるほどだ。

経団連は、こうした変化の激しい時代のなかで、次世代を担う人材に求められる素質・能力として、自らの問題意識で課題を設定し主体的に解決する能力、幅広い教養(リベラル・アーツ)、外国語によるコミュニケーション能力、文系・理系にまたがる知識、多様性の尊重、情報を課題解決のために使う「情報活用能力」などを指摘した。

しかし、現実にはこれらの素質や能力をすべて身に付けることは容易ではない。重要なのは、「自立」した一人ひとりが、個性や得意分野の能力を見極め、他者との違いを受け入れ「協働」しながら、新たな価値を「創造」できる社会にすることだ。この「自立」「協働」「創造」の3つは、時代がいかに変わろうとも大切にすべき人材育成の理念である。ならば、新たな経済社会を予見したとき、「創造」の先に求められる視点は何だろうか。私は、2030年の目指すべき姿を描いた「経団連ビジョン」が未来を拓くキーワードとする「イノベーション」(技術および社会・制度の革新)と「グローバリゼーション」こそが、その鍵になると思う。

無論、変化や課題への対応に注力するあまり、ハイレベルの人材を求めるがゆえに生じさせてしまう反作用にもしかと目配りするなど、「学びのセーフティネット」を整えておくことも重要と考える。

先行する企業では、多様性(ダイバーシティ)を尊重し、これを互いに包摂(インクルージョン)することが持続的成長を支える源であると考え、「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進を人財育成の柱として打ち出している。産学連携・協働も含め、さまざまな個性や能力を持つ人材の活躍を促し、未来を創る最良の集団へとマネジメントすることが企業経営者、さらには経済界の使命でもある。

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