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月刊 経団連 巻頭言 持続可能な社会の実現に向けて

中村邦晴 (なかむら くにはる) 経団連審議員会副議長/住友商事社長

経団連は、持続可能な社会の実現に向け、Society 5.0の推進を通じたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成を目指し、「企業行動憲章」を改定した。

1990年代に加速したグローバリゼーションは世界経済の発展に大きく貢献したが、その一方で、多くの地球規模の課題も生み出してきた。これらの克服に向けた長年の議論は、2015年に国連において、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその行動計画目標であるSDGsの採択に結実している。

このSDGsは、企業に対しては、従来の利益追求だけでは解決されない社会課題や事業を通じた社会貢献に向き合うことを提唱している。こうした動きは、企業経営の側から見ても、レピュテーション・リスクの回避という守りではなく、経営者・従業員が自らの事業の社会的意義を理解し日々のビジネスに取り組むことで、既存事業の改善やイノベーションの創出を促し、働く者のモチベーション向上にもつながっていくものではないだろうか。

歴史を振り返れば、日本企業の多くは、株主だけではなく幅広いステークホルダーに配慮し、社会とともに持続的に成長することを強く意識した経営を実践してきた。また、日本は、環境汚染の改善技術や、少子高齢化社会への対応として、多様な人材の活躍推進や働き方改革等の有効な課題解決の手掛かりも有している。

今年、住友商事では、SDGsと社会課題の解決に向けた世界の動きを踏まえ、住友の長い歴史のなかで大切にしてきた「自利利他公私一如」(自身を利するとともに国家・社会を利するべき)の事業精神や経営理念に基づき、自らの強みを生かし優先的に取り組む重要な課題として6つの「マテリアリティ(重要課題)」を定め、公表した。

持続可能な社会を実現するために、企業が果たすべき役割は大きい。昨今の国際機関・各国政府・企業が一丸となって取り組むSDGsの大きな潮流のなか、課題解決へのコミットメントや具体的な成果を積極的に発信し、日本企業がその存在感を示す好機にしていければと考えている。

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