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月刊 経団連 巻頭言 Society 5.0の実現と異種の知の融合

山西健一郎 (やまにし けんいちろう) 経団連副会長/三菱電機特別顧問

人生100年時代を迎えるなか、個人のライフデザインを支えるヘルスケアのあり方も変わる。Society 5.0が目指す社会は、人々がさまざまなニーズに合った質の高いサービスを受けられ、活き活きと快適に暮らすことができる「人中心の社会」である。サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合し社会全体の最適化を図るSociety 5.0を全力を挙げて実現することは急務であり、そのためには革新的イノベーションを起こすことが必要不可欠である。

しかしながら、イノベーションを生む土壌づくりは一足飛びにいくものではない。一企業、一研究者ではなく、多様なプレーヤーが得意とする知見や技術、ノウハウを融合、結集させるイノベーションエコシステムの構築がそのカギを握る。多くのプレーヤーの「異種の知」が対話を重ね、有機的な結合・統合を繰り返すことで、革新的なイノベーションが創出される。企業、ベンチャー、大学、国立研究開発法人、テーマによっては医学会等が連携し、研究・開発・実証から、その成果を市場に展開して社会に普及させ、そこで得た収益を新たな研究開発に活用するイノベーションのサイクルを確立することが必要である。特に、革新的な技術シーズを事業化につなげるための橋渡し機能に注力している国立研究開発法人もあり、さらなる活動の強化を期待している。加えて、国立研究開発法人、大学、企業等の研究開発能力を結集したオープンイノベーション拠点がエコシステムの形成に大きな役割を担う。

一方で、「異種の知」が融合するエコシステムが形成され、機能するためには、プレーヤー間の調整を担う中核となるコーディネーターが重要だと考える。それぞれのプレーヤーがどのような技術、ノウハウ、アイデアを持っているか把握し、それらを有機的に結び付けることのできるフィジカル、サイバーの一方のみに偏重しない高度なゼネラリストの存在が、Society 5.0の実現には欠かせない。

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