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月刊 経団連 巻頭言 きれいな海を未来に残したい

小堀秀毅 (こぼり ひでき) 経団連審議員会副議長/旭化成社長

毎年1月に北陸でお取引先をお招きしてごあいさつ会を行っている。皆様とお会いできることに加えて、新鮮な魚を食べるのも大きな楽しみである。冬の北陸の魚はことさらにおいしい。これはきれいな海がもたらす宝物である。

昨今、海洋プラスチックごみの問題が深刻になってきている。昨年タイで打ち上げられた鯨の胃のなかから80枚以上の大小のポリ袋が、また、インドネシアで打ち上げられた鯨からカップやポリ袋など1000点以上のプラスチックごみが見つかった映像を覚えておられるだろうか。2050年には海中の魚介類とプラスチックごみの重量が同じになるともいわれる。

経団連では政府の「プラスチック資源循環戦略」策定に関してさまざまな議論を行い、意見を提出した。本誌先月号でも紹介している。海洋プラスチックごみ問題の解決は、そのなかの重要な課題の1つでもある。

政府は今年6月に大阪で開催されるG20にあわせ、プラスチック資源循環に関する長期戦略を示す計画であるが、われわれ化学メーカーにとっては極めて野心的な挑戦目標となりそうである。そもそも海洋プラスチックごみ問題と国内のプラスチック資源循環は同一課題ではなく、それぞれに適切な施策が必要となる。安全・安心・利便性などで現代の生活に欠かせないプラスチックをこれからも上手に使っていくためには、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の徹底と廃棄物の適正処理、新素材の開発等さまざまな対応が必要となる。

2020年には東京オリンピック・パラリンピック、2025年には大阪・関西万博と世界が注目するイベントを迎える日本は、世界有数の海洋国である。プラスチックの分野でも世界をリードする技術やシステムを開発し、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)目標12の「つくる責任つかう責任」や、目標14の「海の豊かさを守ろう」への貢献を念頭に、世界の人々の期待に応えていきたいと思う。何より、きれいな海で育ったおいしい魚をいつの時代でも味わいたいと願う。

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