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月刊 経団連 座談会・対談 社員の多様性を活かしイノベーションを起こす

秋田 進
日本通運副社長

柳 圭一郎
NTTデータ副社長人事本部長

矢島洋子
三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員

冨田哲郎
経団連副会長、労働法規委員長
東日本旅客鉄道会長

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冨田哲郎(経団連副会長、労働法規委員長/東日本旅客鉄道会長)
若い社員の意識を見ると、仕事はもちろん自分の生き方そのものを大事にしたいと考えているように感じる。経営は、こうした働き手の意識の変化や社会の変化に適応し、多様な価値観からイノベーションを起こすための方向性を示す必要がある。当然、社員一人ひとりが自分の生き方に責任を持ち、そして経営する側も、相当な覚悟をしなければならない。雇う側も、働く側も非常に厳しい選択を求められる時代が来るだろう。

矢島洋子(三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員)
日本企業におけるダイバーシティ推進は、女性や高齢者など組織のなかでマイノリティーだった層への支援といった取り組みから、多様な人材を積極的に活かすために組織環境そのものを変える取り組みへと重点が移りつつある。従業員規模を維持・拡大したり、新たなビジネスに挑戦しようとする企業だけでなく、すべての企業が、すでに時代に合わなくなっているビジネスモデルや人事制度のあり方を見直す好機ととらえる必要がある。ダイバーシティ推進にあたってはトップのコミットメントが重要だが、経営計画に明記するだけではなく、現場に浸透するよう、役員や部門長に責任を負わせるところまでいってこそ意味がある。

柳 圭一郎(NTTデータ副社長人事本部長)
価値観が多様化し、グローバル化やIT化が進むなかで、経営者が自らの価値観だけで経営判断していくのは難しい。ダイバーシティやイノベーションのためだけでなく、性別や年齢、国籍が異なる多様な人たちとの対話が、経営にとっては重要である。当社にはグローバル志向の社員も多く、必ずしも1つの会社に一生勤めると考える社員ばかりではなくなってきており、外資系の制度も用意した。日本の労働慣行、労働市場の考え方自体が合わなくなってきているサービスや仕事も増えている。それに見合った働き方を模索し、制度の見直しをしていく必要性があるだろう。

秋田 進(日本通運副社長)
運送業界はいまだに男性中心であり、加えてドライバーの高齢化という問題にも直面している。女性や高齢者に快適かつ安全に働いてもらえる職場づくりが、喫緊の課題である。また、当社では同一労働同一賃金について、1年前倒しで今年の4月から実施し、正社員と有期雇用社員を同じ体系のもとで処遇している。この法改正は一定のインパクトがあり、成長する分野に人材を移動させる労働市場の構築など、日本型雇用慣行の見直しにつながるだろう。

椋田哲史(司会:経団連専務理事)

  • ■ 多様な人材が新たな価値を生み出す
  • 多様性に価値を認めて積極的に活用
  • さまざまな社員が一緒になって新しい会社の姿を
  • 経営者の価値観だけで判断していくのは困難
  • 女性や若者に魅力ある快適な職場づくりが不可欠
  • ■ 人事・処遇制度に裁量の幅を持たせることで働きがいを向上
  • グローバルな志向を持つ社員を処遇
  • 高齢者にはアドバイザー的な役割と若い社員への技術継承を期待
  • 正社員と有期雇用社員を同じ賃金体系に位置付け
  • 評価制度、配置、キャリアパスに多様な選択肢を
  • マスタープランをつくりダイバーシティを推進
  • 自分で自分の将来を選択
  • トップダウンで大きな変化に対応
  • 管理職が現場で適切な運用を
  • ■ 時代に即した新たな労働法制と大切にしたい日本の雇用慣行
  • 社会自体の変化を企業も一緒に考えるべき
  • 成長分野への人材のシフトは成長のエンジン
  • 労働時間管理に柔軟性を
  • 優れた日本の雇用慣行も活かしイノベーションを

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